苺と桃と。~猫の恩返し?~ ⑨
- カテゴリ:自作小説
- 2009/02/26 22:04:17
姉ちゃんは「あぁ~、咽喉、渇いたぁ~」と大声で
独り言を言いながら、勝手に冷蔵庫を開け、パッ
ク牛乳をあおった。
「ぷっはぁ~、うんまぁ~」
おっさんだ。間違いなくおっさんだよ。
「ちゃんとコップに注げよ」
「男の子は細かい事、言わないの。それよりどう?
何か変わった事、あった?」
変わった事なんて大有りだ。
でも、今、モモの事を知られると、何を言われるか
分かったもんじゃない。
「ないよ。ないから、もう安心して帰ってくれ」
「冷たいわねぇ~。お姉様は、イチゴをそんな子に
育てた憶えは……」
「なくて結構!」
「んまぁ~、可愛くなぁ~い」
姉ちゃんは、ベッドをイス代わりにしてドッカリ座ると、
タイトなミニスカートから伸びた長い足を組んだ。
パンツ丸見え。恥じらいも何もあったもんじゃない。
枕元にあった読みかけの文庫を手に取ると「へぇ~、
あんた、まぁだ こんなの読んでるんだぁ?」と、ニヤ
ニヤ笑っている。
これは……長居する気だ!
まさか、ベンのヤツ、もう姉ちゃんにモモの事を話し
たんじゃないよな。
僕は、ケータイを掴むと、トイレでベンに電話した。
『イチ? どうしたんだ。時間の変更か?』
「お前、話したのか」
『は? 何を??』
「姉ちゃんにモモの事、話したのかって聞いてるんだ」
『いや、今日、会ってからにしようと思ってるんだが』
「来てるんだ」
『誰が?』
「姉ちゃん」
『……え?』
電話の向こうでベンが息を飲む気配が伝わってくる。
「くっそー、今、姉ちゃんとモモを会わせたら、何をどう
誤解されるか……はっ! ロクか? ロクが話したの
か?!」
『落ち着けって。ロクはそんな事でスミ姉に連絡しないよ』
「だよな」
じゃあ、なぜ、姉ちゃんが……。
と、玄関のドアを叩く音が微かに聞こえてくる。
この引っかくような独特の叩き方は……モモだ!
「はい、はぁ~い、今、あけるから、待っててねぇ~」
「姉ちゃん。待って……」
僕がトイレから飛び出すのと、姉ちゃんがドアを開ける
のとは、ほぼ同時だった。
玄関の敷居をはさんで、モモと姉ちゃんが見つめ合う。
小さな美少女と、大きな美女。
おとなしめな装いと、派手な装い。
草食系の小動物と、肉食系の大型獣。
普通に生活していたら、絶対に人生が交わる事のなさ
そうな二人の初対面だった。
当然、モモは、驚きで固まったように動かない。
「いやぁ~ん、可愛いぃ~~!!」
いきなり姉ちゃんがモモに抱きついた。
いや、待てや。あんたは初対面の相手にいきなり抱き
ついてもいいと思っているのか?!
それは女同士だって許されないだろう。
当然、モモは固まったままだ。
「姉ちゃん、止めろって。モモが驚いてるだろう!」
「モモ? モモちゃんって言うの? イチゴの彼女にして
は、可愛いじゃなぁい!」
「違う。モモは、僕の彼女じゃなくて……」
「さ、入って入って。こんなに冷たくなって、寒かったで
しょうぉ」
……全然、聞いてないし。
姉ちゃんはモモの手を引くと、部屋に引っ張り上げた。
可哀想に、モモは、怯えたように僕と姉ちゃんを見比べ
ている。
「姉ちゃん、モモは……」
「そうか、そうか。これから二人でいい事するのね。あた
しはお邪魔だったのか。そう言う事は早く言いなさいよ、
バカ」
「あの……ネエチャンさんは、サトルのお友達ですか?」
「え、違うわよ。あたしは、金田一 悟瑠の姉。“お姉さま”と
お呼びぃ~♪」
モモが深々と頭を下げた。
「始めまして、オネエサマ。私はモモと言います。先日、
サトルに助けてもらい、恩返しをする為に来ています」
「……あんた、この子に何をして上げたか知らないけど、
恩着せがましく、体を要求してるなんて鬼畜よ」
何だよ。その“僕の全人格を完全無視した”思い込みは。
・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・
ま、澄鈴はそう言う人です。
モモは人なつっこいので、大丈夫だと思いますけど。
本来、受身な人間のイチゴは、ちょっと鈍い所があり、
多少の事では、ヘコタレません。
なので、スミ姉しかり、ロクしかり。
押しの強い人間には振り回されてしまうようです。
これも星の廻り合わせでしょうか?
イチゴはどうやら、まわりに振り回される
タイプの主人公のようですね。
姉ちゃんには誰も逆らえません。
弄られるイチゴはともかく、ベンもロクも。
あまり彼女に暴れられると、話が進まないので、
適当な所で話を本筋に戻したいですね。
モモは、ノンビリした所があるので、流れに逆ら
わず、ですvv
なにかとやってくれますね…w
なんかもうどこまでも突っ走っていきそうですね~w
モモが人見知りじゃなくてよかった…w