Nicotto Town


藍姫の本棚♪


苺と桃と。~猫の恩返し?~ ⑪

ベンとロクに引き合わせた時、姉ちゃんで免疫が出来た
のか、モモは固まる事はなかった。

モモが、二人に対して、特に何の感情も抱いていないよ
うに見えて、ちょっとホッとする。

普通の女の子なら、ベンやロクを異性として意識するの
だろうけど……。

モモを一番疑っていたベンは、自己紹介以外、ほとんど
喋らなかった。

むしろ、自分よりも、はるかに小柄なモモに興味を示し、
質問攻めにしたのはロクだった。

「趣味は? 好きな食べ物は? 好きなタイプは? スリー
 サイズは?」

おい、おい! どさくさに紛れて、何を聞いているんだ!

人懐っこいロクの場合、モモが猫だとか初対面だとか関係
ないのだ。

食事を終えた今は、すっかりモモと打ち解けて、姉ちゃん
を交えて三人でワイワイ騒いでいる。


「ベンは、どう思った?」

僕は、少し離れた所でその様子を眺めているベンに、問い
かけた。

「どう、とは?」

「モモと会って、嘘を付くような子だと思ったかって」

「俺には……分からないよ。女も猫も、嘘をつく天才だから」

意味深なベンの言葉に、僕はモモを見る。

モモは、今まで時々そうしていたように、頭のお団子の後ろ
を触ったり、あらぬ所を見つめたり、音や動く物に敏感に反
応していた。

ふいにモモと目が合う。

僕達に無邪気に笑いかけたモモが「お二人とも、オネエサマ
がみんなでゲームでもしましょうかって」と、手招きする。

踏み出しかけた僕の肩に、ベンが手を置いて制止した。

ベンの顔は見た事もないほど真剣だった。

「モモさん」

「はい」

「俺は、はっきり言って、君を疑っている」

「私の何を、ですか?」

「全部だ。俺は、都合のいい魔法なんて信じないし、夢は所詮、
 叶わぬ物だと思っている。君がどんな思いでここに通ってい
 るのかは知らないが、もう本当の気持ちをイチに伝えてもい
 いんじゃないか?」

「ちょっと、ツトム。あんた、何、訳分かんない事、言ってるのよ!」

姉ちゃんが抗議の声を上げたので、ベンは一瞬怯んだ。

すかさずモモが立ち上がる。

「私……私は猫のモモです。今は人の姿ですが、それは私の
 意思、魔法の力です」

「そうだよ。急にそんな事、言うなんて可笑しいぞ、イソベン」

可笑しくはない。

ベンも僕の為に憎まれ役を買って出ているのだから。でも……。

「ベン、もういいよ。僕はモモを信じてる。例え、みんながモモを
 信じなくても……」

「よくありません」

「モモ?」

「私は、サトルに優しくされて嬉しかった。ずっと一人だったから、
 仲間に入れてくれて嬉しかったんです。サトルの友達に、私の
 本気を疑われたままなんて嫌です」

モモは、玄関を開けて共同廊下に出ると、ひらりと手すりに飛び
上った。

何をする気だ?

いや、予想は出来る。

猫の身体能力を見せる気なのだろう。

どうやって?

まさか、まさか……。

「モモ、やめ……」

モモは、何の躊躇もなく、手すりの向こう側に飛び降りた。

「っ!!」

ここは二階だし、下はコンクリートだ。

ただで済む訳がない。

僕は声を発する事が出来なかった。

それどころか、誰もが動く事も出来ずにいた。

静寂が、重く圧し掛かってくる。

飛び降りる一瞬、モモは僕を見て、悲しそうに笑ったような気
がした。

 ・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・

恋愛だけでなく、男同士の友情もいれたくて、勝手に行動させ

ていますが……。

う~ん、ベンがモモを挑発しております。

モモは、意外と負けず嫌いなのか、二階からピョン!

どうなるかは、次回です。

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2009/03/09 21:35
>3スカーラさん
 イチゴを除く各登場人物の行動や言葉は、少しだけ
 思わせぶりだったりします。
 ま、モモは、素で突飛な事をしでかすキャラですがw
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2009/03/09 20:42
モモはまさしく猫らしい唐突な行動ですね。
なかなかキャラの行動が読めないお話です。
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2009/03/01 14:38
>十里瑞希さん
 人間はなくさないと大切な人に気付けない事があります。

 でも、なくしてしまうと、この話が終わってしまうので、なくす
 かもしれない恐怖をイチゴには味わってもらおうと思ってい
 ます。
 私って意地悪なのかなぁ~??
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2009/02/28 23:51
遂に核心に迫りそうですね…
負けず嫌い…
猫ってそんな感じしますよねw
次回が楽しみ…w




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