夢日記37 『TAMAGO』(後)
- カテゴリ:自作小説
- 2010/11/26 21:28:18
「怪しいわ。こんな所で何してるんだろう」
ツバキの言葉に、フウタが「だよな~」と相槌を打った。
人の来ない夜の倉庫街。
男女は、6号倉庫の前で足を止めた。
倉庫の扉を開けると、そこにはバスが置いてあり、その中か
ら人が降りてきた。
懐中電灯に照らされ、眩しそうに目を細めた顔には見覚え
がある。
どこで見たのか思い出せないが、最近である事は確かだ。
「あいつ、爆破テロの現場にいたヤツだ」
記憶力のいいフウタがぽつりと言った。
「え、本当なの?」
「私も見覚えがある。誘導した民間人の中にいたのかも」
後から来た男女を乗せ、バスが走り出した。
「フウタ、車出して!」
「了解!」
怪しまれないよう適度な距離を保ち、私達も車を走らせる。
「街に向かってるね」
「懲りないヤツラだよな~」
「あのバスに爆発物を? 自爆テロでもするつもりかしら」
「足元の工具入れに小型スキャナーが入ってる」
ツバキが、斜め前方を走る車両をスキャンする。
「爆弾、積んでる。間違いないわ」
「どうしよう。止めさせないと」
「スクランブルかけるわ」
ツバキが緊急連絡用の番号に事情を説明している間も、バ
スは街に近づいていく。
「あまり時間がないぞ。あと15分もあればゲートに着く。突
破されたら大惨事だ」
「あ、そうだ!」
私は、トオルに電話を掛けた。彼なら何とかしてくれる。
「トオル!」
『ユイか。どうした』
「今、フウタ達とブラックバスを追いかけてるの」
『! どこだ?』
「街へ流れる一番大きな川。街から15分の所」
『網は?』
「掛けた。でも、思ったより流れが早くて捕まえられないかも」
『判った。街から5分の所で待ってる』
電話が切れた。
ツバキが「トオル、何だって?」と尋ねてくる。
「5分の所で足止めするって」
「トオル、何をする気かしら」
「分からないけど、後ろの車両に緊急停止信号……」
「あ、そうだったな」
フウタがスイッチを押すと、車の後部ランプが点滅し、私達よ
りも後ろを走っていた車両が一斉に速度を落とす。
幸い、それほど混雑していないので、全車、ツバキが車から
投げた停止装置の手前で止まったようだ。
様子を窺いながら、フウタが前を行く対象との距離を詰める。
「当てるか?」
「駄目ね。相手の方が大きすぎる」
信号が赤に変わり、気づくと前の車と私達以外、周りに車が
なくなる。
この辺りはトオルが避難させたのだろう。
このまま時間を稼ぐ事が出来れば……。
でも、長い赤信号に痺れを切らした連中は、信号無視して
走り出したのだ。
慌てて追いかけた私達は、直ぐに連中のバスに追いついた。
赤いトレーラーが横倒しになっており、道路を塞いでいたか
らだ。
と、私の携帯にトオルから着信。
『今、直ぐに離れろ』
「! 離れて!」
フウタが目一杯アクセルを踏み込んで、バックする。
僅かな間を置いて、大爆発が起きた。
トレーラーが爆発して、連中のバスが誘発したのだろう。
改造して重装備になっているフウタの車が僅かに浮き上がっ
たが、何とか安全圏まで逃げ延びる事が出来た。
「無茶するわね。でも、流石はトオル」
「この短時間で、よく遠隔爆破装置を組み立てたよな~」
私は、トオルに電話を掛けた。
が、つながらない。嫌な予感がする。
私は、集まってきた野次馬からバイクを借りると、ツバキとフウ
タが止めるのも聞かず、爆心地に走らせた。
炎の壁を越えると、燃え上がるバスを横目に、トレーラーの脇
もすり抜けた。
思ったよりも火力が強い。
連中の爆弾も爆発したからだろう。
私は注意深く、動く者を捜した。
と、道路わきの窪みに影が揺れる。
「トオル!」
「……ユイ?」
「よかった……。ねえ、乗っていかない?」
「そうだな」
トオルを後ろに乗せ、私は、街の方へとバイクを走らせる。
後方で爆音が響き、間一髪、トオルが隠れていた窪みに 炎
が広がった。
~ END ~
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2008/11/8 に見た夢です。
夢の中でも火は熱いですから、炎を潜った時、ヘルメットをして
いなかったので「あ、髪の毛が痛む」と ちらっと考えたりして ^^;
無頓着なように見えて、ちゃんと女の子なんだなぁ~とw
トオルとの電話での会話は、決まり文句みたいです。
ふっ、金曜日w
じわじわと嬉しいです。。。(◡‿◡✿)
炎の壁をバイクで潜り抜ける……なんて、スタント使って欲しい場面。
でも、夢なので、全部 自分でやりましたよぉ ^^v
実際の私は、バイクには乗れませんが ^^;アハハ
車がバックする速さ、バイクの速さは、普通では味わえない感覚です。
スタローンの重厚なアクションよりも、確か、MIですねぇ~^^
“私”は、実戦向きのようです。
もっとも、テストの成績も悪くはなかったのですが ^^;(私と大違いw
トオルの事は、常に気にしており、彼の為なら 火の中 水の中です。
追跡と爆破シーンでしたね☆☆。
スピード感でいえば、
ミッション・インポシブル風かしら?
トオル君が助かってよかったですね