Nicotto Town


藍姫の本棚♪


夢日記47 『霧の中』(中)

頭がぼんやりする。
起き上がると、体にかけられていた物がするりと床に落ちた。

床? 私はどうして研究室の床で寝ていたのだろう。
研究の疲れ? いいえ、違う。

窓だ。
窓の外に動く陰を見つけて、それで……。

何か薬を嗅がされたのだ。

誰……だったのだろう。
意識を失う前に聞こえた声。「必ず助けるから」と。

ハッキリしない頭で、部屋の外に出ると、廊下には血と死体。
警備員と侵入者のものだ。

夢ではない。これは現実。

「どうして……どうしてなの、兄さん」

私は隅の方で、うずくまって震えていた。

私が研究員として働いていたこの研究所が、見学と称してやっ
てきた人達に占拠されてからどれくらいが経ったのだろう。

その人達のリーダーが、私の兄だった。

最初は研究所の警備も抵抗していたが、やがて、感化されて
いった。

研究員に犠牲が出ないようにと、私は兄達とのパイプ役にな
り、医療班の責任者を任されるようになった。

私の場合、人の死を少しでも先延ばしにしたくて就職した研
究所だ。

幼い頃に失った者を取り戻す事は出来ないと分かってはいた
けれど……。

「隊長?!」

私は、ゆっくりと顔を上げた。

男が一人近づいてくる。

私を “隊長” (テロリスト達の衛生隊のトップと言う意味で)と
呼ぶのだから、テロリスト側の人間だろう。

研究所の人間なら、私を“主任”と呼ぶはずだし、外の人間
なら……。

私は、胸のネームプレートを押さえた。

「ご無事でしたか」

「はい」

見ると、男は腕に怪我をしてたので、止血しながら状況を尋
ねた。

「敵のスパイです。警備が何人もやられました」

敵……ね。
警備の制服を着たこの男は、すっかりテロリストの一員になっ
ていた。

「それで……敵は?」

「現在、検索中です」

「そう、ですか」

元気のない私を気遣って、男が一人で喋りだした。

「あいつらも懲りませんよね。何度 来ても返り討ちですよ」

相手の人数が少なかった事、兄と その主力隊が話し合いの
場に出向いていた事、この時間、ほとんどの研究員が外に
出ていて中に人が少なかった事が、せめてもの救いか。

でも、気が重くなる。
研究所の裏にまた墓穴が増えるのだ。

男を先頭に、私は、半分泣きながら施設を回った。

「隊長さん?」

トイレから出てきた女が、小走りで近づいてきた。

隠れていた訳ではないだろう。
彼女は兄の右腕で、恋人でもある。

「怪我は?」

「私は大丈夫です。貴女は?」

「さっき、向こうで二人仕留めましたが、一人逃がしました」

怪我はないかと聞いたつもりだったが、女の口から語られた
のは戦況報告だった。

トイレの中を覗くようにと促されたが、私は中に入らず、外か
ら見る事にした。

個室のドアには無数の弾の跡。
この中にいたらどんな脱出マジックでも助からないだろう。

唯一の窓が壊れて、キイキイと耳障りな音を立てながら風に
揺られている。

「何でこんな……」

こんな酷い事が、この研究所で起こらなければならないのだ
ろう。

「交渉が決裂したのでしょう。リーダーと連絡を取っている所
 です」

「! 戦いになるのですか?」

「ええ、勿論」

事も無げに、女が口にする。

私を100%信頼している訳ではないだろうけど、兄の血縁だ
と言う事で、彼女達からの待遇は悪くない。

おそらく死人のように青い顔をして、黙り込んだ私を 彼女は
気安い感じで慰めてくれる。

「心配しなくても、あんた達にドンパチしろとは言わないわよ。
 あの部屋で、あたし達の大事な物を守る盾になってもらうか
 もしれないけどね」

「!」

「冗談だって、怖い顔しないでよ。隊長?」

彼らが持ち込んだ秘密兵器。

おそらく、政府もマスコミには発表していない大量殺戮兵器。
核爆弾。

あれがあるから、ここまで長期化したのだ。

「……けて」

「っ?!」

廊下の陰から誰か出てきた。

パッと女が銃を構えて、警戒する。
ワンテンポ遅れて警備の男が銃を構えた。

 ・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・

この“私”こそ、二番目の視点になった男性の言う“真央”です。

研究所の主任だったみたいです。

そして、テロリストのリーダーの妹。

勿論、私は無関係なのですが、テロリストが研究員に乱暴な事

をしないように間に立っています。






今日もここまで。

う~ん、時間がない ^^;

体調の方は、90%回復したのですが、流石、師走。

今日は、30分オーバーです。

明日は、朝から……は無理なので、昼くらいからIN出来るかと ^^;

久々に、ブログを読みに行くのが楽しみです ^^

アバター
2010/12/29 16:53
>カトリーヌさん
 何もしてくれない政府と友好的なテロリスト。
 一年一緒に生活したので、慣れあっているのかもしれませんねぇ。
 ここのリーダーは、テロリスト達の要です。
 彼に感化されたと言うのもあるのでしょうね。

 ま、リーダーの妹なので ^^;
 兄は分かっていて、ここに立て篭もったみたいですよ。
アバター
2010/12/29 12:46
研究所のスタッフは、完全にテロリストの仲間になっているわね。
テロリストのリーダーは、相当なカリスマ性を持った人なのでしょうね。

そのなかで、真央さん、なんとか中立を保っているようだけど、
こういう人は立場が不安定だから、
何かの拍子に危ないことになるかも・・・心配しながら読んでます。




Copyright © 2024 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.