退魔除霊師~ユメワタリ~ (15)
- カテゴリ:自作小説
- 2009/03/28 20:27:22
オレを押さえつけていた呪縛が、光の洪水と共に収束する。犬神
の体が解け、オレの体に戻っていく。
勿論、夢の中の事なので、全裸ではない。
駄々っ子のように地べたに座ったまま、溢れそうになる涙を堪えて、
オレは毒づいた。
「瑞希のあほぉ~。冷血仮面、不人情人」
「あははは、何、それ。時代劇ぃ?」
聞き馴染みのない、だけど、聞いた事のある声がする。
目を大きく見開いたオレは、前に立っていた一人の少女と目が合っ
て、一瞬、思考が停止した。
見覚えのある女の子がいる。
その子は、ガラスに映ったあの少女の顔をしていた。
「え、カイ……ちゃん?」
少女がニッコリ微笑んで、大きく頷いた。
向こう側が透けて見えるほど澄んだ体は、水で出来ているようだっ
た。
誰がやったか分かる。こんな事が出来るのは瑞希だけだ。
でも、なぜ? オレは混乱して、瑞希とカイちゃんを見比べた。
「海藤 亜貴。なぜ、亘理の娘に憑いた?」
「だって、あの子、そこそこ力があるのに無防備なんだもぉ~ん」
カイちゃんが小さく舌を出した。
悪びれない様子のカイちゃんは、オレが夢で見せられた通りの女
の子だった。
「カイちゃん! 君は自分のした事が分かってるのか? もう少し
で悪霊になって、オレ達に祓われる所だったんだぞ?」
「う~ん、そんなに深くは考えてなかったんだよね。始めはね、セ
イジ先輩の夢枕に立とうと思っただけなの」
ケラケラと大声を出して笑いながら「でも、セイジ先輩、鈍くってぇ」
と、カイちゃんは言った。
……なんて、明るい死者なんだ。
「セイジ先輩と同じ学校に、貴方達が入ってきた時は嬉しかったな。
これで何とかなるかもって。でも、貴方達は、力が強すぎて近寄
れなかったのね。ほら、私ってか弱い霊だからさ。でね、近い感
じがする亘理さんに力を貸してもらおうと思ったんだ。この子、比
較的夢を自由に見られるみたいだし」
「確かに、夢日記は毎日つけてるって言ってたな」
「ねっ、夢に関心がある証拠でしょう。だから、ずぅ~っと夢で私の
事を訴え続けてきたんだけど夢分析されちゃった。あれは、例
え話じゃなくて、私に起こった事実だって言うのにねぇ?」
芝居がかった大げさな溜め息に、オレはズキリと胸が痛んだ。
明るく振舞ってはいるけど、本当は負の感情に飲まれそうで不安
なんだろう。あれを一緒に追体験したオレには、カイちゃんの辛さ
が分かる気がした。
「ところが、神様は私を見捨てなかった。ああ、何と言う偶然! 亘
理さんはとんでもないアイテムを拾ったのでした!」
「オレのお守り?」
「そう! それで亘理さんの秘められた力が引き出されたのね」
腕組みしながら、カイちゃんがうんうんと頷く。結局、この騒ぎが大
きくなったのは、オレの所為なのか?
「でも、なんでライムちゃんに、そんな力が……」
「亘理は……」
ずっと黙っていた瑞希が口を開いた。
「亘理は、大昔に榊と反目し、裏の世界から足を洗ったが、元々
退魔除霊師の家系だよ」
「えっ!」
「先月、その亘理家から連絡があって、娘を一人預かって欲しい
と言われた」
「それって、まさか……」
「亘理 來夢だ。何でも、消えかかっていた亘理家の力が、その娘
に現れてしまったから助けて欲しい、と。頼れるのは、同質同系
の榊だけだったのだろうな」
「その力って?」
「夢渡り。夢からお告げを受けたり、精神に作用する術を得意と
する。ある意味、ロクやケイよりも、榊に近い。熟達すれば、除
霊ではなく、浄化も出来るんだからな」
簡単に言えば、除霊や退魔は“有無を言わさず相手を消し去る”
事で、浄化は“重い負の枷を取り除き、天界に上げてやる”事だ。
要するに、瑞希がカイちゃんにしようとしていた事が浄化になる。
そうだよな。バカだよな、オレ。
瑞希は冷たそうに見えて、本当は優しいやつなのに。
オレは、分かっていたはずなのに。
「海藤、今の望みは何だ。君が成仏できるように出来る限りの事
はしよう」
「ふ~ん、サカキっていいヤツだったんだね。みんなが騒いでた
理由がやっと分かったよ」
「さあ、早く。あまり負担をかけると亘理の娘が持たない」
分かりにくいが、瑞希は照れたようだ。
「じゃあねぇ……」
・・・☆・・・☆・・・☆・・・
今日は早めに掲載♪ 22時前には、OUT予定 ^^;
だって、眠くて眠くて……このまま寝そうぉ~。
ミズキは、いい子ですよw
状況を冷静に判断する力は、誰よりもありますねww
その内、動揺させるような事件を起こしたいですけど♪
ミズキは、妹の晶(今、小学5年生w)が生まれるまで、
退魔除霊師の中でも、ちょっと特殊な立場にいたので、
言葉遣いとか、一般常識とか、普通の女の子と比べる
とズレてます ^^;
一人称がボクなのも、男っぽく振舞うのも、彼女なりに
自分や晶を守る為だったりします。
それって過去話、書かないと出せないけど ^^;;;
カイちゃんの望みは、些細な事です。
なんせ半年以上、彷徨っていたのに考えていたのは、
セイジ先輩の事だけですからww
うん、寝ます ^^
でも、10時は早すぎ?
でも口調がものすごく…w
何と言うか女の子っぽさが…0?w
カイちゃんの望み…
ものすごくいろんな意味で楽しみw
眠い時は早めに寝るのが一番^^