＜宇佐 雅宏＞
　
槙村を担いで部屋に戻る……のは無理なので、適当に脱衣
所に転がしておいた。

浴衣も着せるだけで重労働なので、掛布団のように掛けるだ
けにした。

……まあ、その内、目を覚ますだろう。

さあ、温泉に入るぞ！

遠島の悲鳴騒ぎで、すっかり、体が冷えて（一部分だけ異常
な体温上昇が見られたけど……）しまったので、僕は改めて、
温泉を楽しむ事にした。

浴室を覗き込む。
誰もいない。女性風呂同様に貸し切り状態だ。

持ち手のついた小さな木桶で掛け湯をしながら、つい鼻歌を
歌ってしまう。

会長ほどではないが、僕も やっぱり温泉好きだ。

あっ！　そうそう、会長が来る前に内装だけでも軽くレポートし
ておくか。

ええと、洗い場は ５箇所。内湯は ２つ。
サウナや打たせ湯等のオプションは一切なし。

浴槽は ２つともあまり大きくはないが、一人で入るには広すぎ
る（って当たり前か）くらいだ。

温度は ２つの浴槽の内、１つはやや高め。
お湯は無色透明で、硫黄の匂いもなし。

造りは 女風呂と全く同じ……ポンと、遠島の姿が浮かんだ。

うっ、何 考えてるんだ。
しっかりしろ。僕は自分の頭を叩いた。

勢いよく、浴室の扉が開いた。

ドキン！　思わず目をやる。

入り口にはバスタオル姿の遠島が……立っているはずもなく、
槙村が鼻血を垂らしたまま無表情に立っていた。

「おいおい、槙村。お前、浴衣のまま風呂に入るつもりか？
　まったく、しっかりしろよな」

さっきのお返しに言ってみたが、槙村は一本調子に こう返し
てきた。

「ウサ。ロテンブロニ、イコウ」

「露天風呂？」

ここに露天風呂なんて在ったのか？

気分が高揚していた僕は、槙村に連れられて、露天風呂を
目指した。

＜遠島 愛美＞
　
薄っすら雪化粧した景色を眺めながら、ユウ子さんに連れら
れて、旅館の裏から続く階段を下りていく。

浴衣に丹前を羽織っただけの軽装でも、道中は寒くなかった。

さすがは温泉効果。
手も足もポカポカと暖かい。

川のせせらぎだけが、澄み切った星空に響く。
ロケーションも最高だ。

「ほら、あそこよ」

言われるまでもなく、大量の湯気が、そこにある温泉の存在を
教えてくれる。

素敵！　早く、入りたい。
宝物でも見つけたみたいにワクワクしてくる。

ユウ子さんが忘れ物に気付いて、取りに帰ると言い出したの
で、私は先に入っている事にした。

粗末な造りの脱衣所は一応男女に分かれている。
やっぱり、ここも貸し切りだ。

浴衣を さっさと脱いで、タオルだけ手に持つ。
さあ、準備完了！

「おじゃましま～す」

私の声は夜の闇に吸い込まれた。
扉を開けると、内風呂以上の湯気が、私を出迎えてくれる。

「うわぁ！」

そこは岩風呂だった。
目隠し用か、観賞用か、或いは、その両方だろうか。
お風呂を囲むように大きな岩が積まれている。
湯気で奥の方が見えないが、予想以上の広さがありそうだ。

ゆっくりと足を浸してみる。
一瞬、熱いと感じたが、すぐに適温になった。外気にさらされ
冷たくなった皮膚が、お湯に溶けてしまいそうだ。

段差に注意しながら、更に足を踏み出す。

わっ、結構、深いかも……。
お湯は腰の辺りまで来た。肩まで浸かるなら中腰になるしか
ないだろう。

よし、早速、探検……じゃあなくて、レポートよ！

幻想的な雰囲気の中、私は露天風呂の奥行きを確かめべく、
お湯を分けて進んだ。

お湯の抵抗に負けないように、少しだけ前のめりになる。
うん。日頃の運動不足も解消できて、ダイエットにもいいかも
ね。でも……。

どれくらい進んだだろう。
なかなか奥に行き着かない。

おかしい。何だか気味が悪くなってきた。
もう、戻ろうかな。急いで元来た方へ目を向ける。

あれ？　どうなってるの？

どこから来たのかまるで解らない。
脱衣所の小屋も、積み上げられた岩も消えている。

いやだ。何で？

　・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・

普通、露天風呂で、ここまで深いものってあるのかなぁ～＾＾；

内風呂には あったのですが……。





街に お出かけしてたら疲れました ＾＾；

昨日は サッカーも観ないで寝たのに ＞＜

今日は ここまでにいたします。お休みなさい。