カイちゃん、大事な事は自分で伝えないと駄目だ。

その……セイジ先輩って人だって、全然関係ない男から君のメッ
セージを聞かされても、嬉しくなんてないだろう？

でも……どうやって？

じぃっ～と四葉を見つめて考え込んでいたオレに、瑞希が「まだ終
わりじゃない」と囁いた。
顔を上げたオレに、瑞希は力強く頷いた。

「終わりじゃない？」

「ああ。最後の仕上げは、ロクにも手伝ってもらうから」

「最後の仕上げ？」

「彼女の願いを叶えて浄化する」

「あっ」

そうか、カイちゃんの最後の伝言を、セイジ先輩とやらに伝えなく
ては浄化も完了しないのだ。
やっぱり行き着くのは、その問題か。

って、オレ、瑞希にひどい事、言ったような気がする。
冷血とか、不人情とか。

「瑞希、あのさ……ごめんな？」

「まあ、六郎太兄さま。姉さまに謝るような事をなさったのですね。
　これは “交通量の多い道に向かって、取って来い” の刑ですわ」

いや、それは危ないから、止めておけ。

「晶、ボクも悪かったんだ。きちんとロクに説明すればよかったの
　に、言葉が足りなかったと思う。ロクは、海藤に感情移入したん
　だろう？」

「姉さまと言う者がありながら、何と言う惚れっぽさ！　しかも、退
　魔除霊師が対象に劣情を抱くなど以ての外ですわ！　“自分の
　尻尾を追いかけて永久に、お回り” の刑しかありませんわね」

それは気持ち悪くなりそうだ。
って言うか、小学生が劣情とか使うなよ。意味分かってるのか？

「オレは、カイちゃんに劣情なんて抱いてないって」

「ロク……」

「マジで、変な事なんて考えてないぞ。信じてくれ、瑞希」

「分かってる」

クスリと笑った瑞希が、急に真面目な顔になった。

「退魔除霊師は、対象に何の感情も持ってはいけない。もしも……」

「もしも、対象に心を奪われたら、オレ達が妖魔として消されるって、
　言うんだろう？　分かってるよ」

「六郎太兄さまが、全然分かっていらっしゃらないから、姉さまがお
　心を痛めておられるのではありませんか！ もっと反省して下さい」

晶め、上から目線か。生意気な口を……。

「ん？　そう言えば、アッキー、体調不良なんだよな。元気そうに見
　えるけど、体は大丈夫なのか？」

「！　何故、六郎太兄さまが、そのような事を……」

晶が頬を赤く染めた。妙に慌てている。

「晶は、病気と言う訳ではないんだ。ただ……」

「姉さま！」

「ふぅ～ん。もしかして、生理とか？」

んな訳ないか、晶はまだ小学生だし。
が、晶は、お前は茹でダコかよ！ ってくらい真っ赤な顔でオレを
睨みつけた。え、まさか、図星？

「広道さまもご存知ない事を……こうなったら “大型車両の車輪の
　下でヨシと言うまで、伏せ” の刑で止めを刺すしかございません」

……晶の本気の殺意を感じた。瑞希がなだめてくれなかったら、
オレは今頃どうなっていただろう。恐ろしい。




小五月蝿い晶が怒っていなくなったので、オレは、改めて瑞希と
話し合った。勿論、カイちゃんの浄化の件だ。

「で、オレは何をすればいい？」

「張りきっている所、悪いが、今日の所は休んでいいよ。夢を渡る
　のは、疲れるからね」

「眠っていたのに疲れたなんて変な感じだけどな」

「詳細は明日。人数が揃ってから説明する事にする」

「頭数そろえないと駄目な事なのか？」

瑞希は黙り込んで、頭の中で考える素振りをした。
が、何を思ったのか、すぐに、オレに頷いてみせた。

「そうだ。シズやケイにも少し手伝ってもらう。後、亘理にも。だから、
　ロク。今日は何も考えず、ゆっくり体を休めて」

「あ！」

そっか。普段なら、多くを語らない瑞希が、オレを不安にしないよう
に気を配ってくれているんだ。

「ロク？」

「え、いや、あははは……よぉ～し。明日から浄化作戦開始だな！」

　・・・☆・・・☆・・・☆・・・

突然ですが、三月は終わりを迎えるモノが多いですねぇ～。

でも、四月は始まりの月 ＾＾

何が起こるか楽しみにして行きたいですｗｗ