翌日。大学の空き教室に、カイちゃん浄化計画の為のメンバーが
集められた。
オレ、瑞希、静花、螢都、來夢の五名だ。

「えっと、まず、何が必要なんだ？」

「まずは、海藤の彼氏を特定する」

「あ、セージ先輩って人だね」

「亘理さん、どんな人か分かる？」

「ええ、一度、夢に出てきたのですが……」

來夢が言葉を濁した。來夢の夢に出てきていたら、ヒントくらいは
つかめるかと思ったけど、そんなに上手くはいかないか。

「だよな。流石に一度見ただけじゃ分からないよな」

「いいえ、違うんです。ワタシ、その人と知り合いなんです」

「えぇ？！　マジで？」

「その人に会った時は驚きました。夢で見た人が目の前に現れた
　んですから。あ、ちなみに夢の中に出てきた異性は、理想の異
　性や自分の異性的な部分を表すそうですよ」

「うわぁ、そうなんだ。夢占いって面白いんだね、ライちゃん」

「はい、今度、シズさんもどうですか？」

「それより、亘理さん。それって誰なの？」

「あ、実は……古番さん、なんです」

ん？　コツガイ？　聞き覚えのある名前だな。

「え、あの古番先輩が“セイジ先輩”？！」

螢都が声を大きくした。いや、こいつは元からデカイ声なのだが、
興奮したのか声が裏返っている。

「ケイの知り合いか？」

「何言ってるのよ、ロクロー。夢意識研究会の副会長でしょう？」

夢意識研究会…………駄目だ。美人の星先輩しか思い出せん。

「ロクちゃんは、男の人、覚えるの苦手なんだよねぇ」

「その通り！　シズは、よく分かってるな」

「えへへ」

頭を撫でると、静花は得意げに微笑んだ。う～ん、和むなぁ～。

「このエロクぅ～、そんなくだらない事で……えばるなぁっ！」

螢都の右フックが飛んでくる。が、今日は食らわずに済んだ。
ってか、エロクって何だよ。
何をカリカリしてるんだか。あ、さてはカルシウム不足だな。

「ケイ、毎日牛乳、飲め。もしかすると副特典でアチコチ大きくな
　るかもしれないぞ」

「何で唐突に牛乳なのよ！　それに……ア、アチコチって？」

「そりゃあ、身長とか……」

ちらりと來夢を……８８ｃｍの山を見る。オレの視線の意味を分かっ
ていない來夢が、ボンヤリした顔からヘニャっと笑い返してきた。

「どこ、見てるのよ、ド変態ぃ～！」

螢都の体から靄のような物が立ち上り、背後に歪みが生じる。
螢都の周りだけ真夏の気温だ。
これ以上、つつくと大惨事か？　ん～、もう少しだけいけるかな？

「……兎に角、それが分かったなら話は早いな。役割を分担する」

瑞希の一声で、螢都の怒りの炎が消える。
瑞希は“危険”と判断したようだ。それとも“時間の無駄”かな？

「まず、亘理には、予定通り夢渡りの力を完全に使いこなせるよう
　になってもらう。あまり、海藤を放ってはおけないから一週間以
　内で仕上げる事になるけどね」

「え、あ、はい……」

「心配しなくても、ボクが付きっきりで教えるから」

「はい、よろしくお願いします！」

「ケイ」

緊張の面持ちで螢都が頷いた。

「ケイには、術の仕込みをしてもらう」

「術の仕込みって……」

「セイジ先輩とやらは、術が利き難い体質のようだから、初心者の
　亘理が入りやすいように、ね」

そっか。瑞希は、カイちゃんから直接メッセージを伝えられるよう
に、來夢の“夢渡り”を使う気なんだ。

なるほど、これなら亘理の家からの依頼も果たせるし、カイちゃん
も救える。瑞希らしい無駄のなさだ。

「了解」

「後は……」

瑞希が静花を見た。
子犬のように期待の眼差しを向ける静花に、瑞希が苦笑する。

「ニローとサンローを貸して欲しい」

「え、お兄ちゃん達だけ？　あたしは？」

「シズは、サークル活動で忙しいだろう？　ボクも、こっちの事を
　シズにさせて、花子伯母さんに叱られたくないからね」

怒ると怖い花子さんを思い浮かべたのか、静花が「はぁ～い」と、
力なく答えた。

「ロク」

「待ってました！　何でも言ってくれよ」

瑞希が黙り込む。まさか、ここまで来て“オレの役割はなし”って
言うんじゃないよな。

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作戦会議その１です。

ロクが何を受け持つかは次回で。