Nicotto Town


藍姫の本棚♪


夢日記51 『海族』(後)

進むほどに、生臭さは強烈になる。
辺りに漂う澱みや、異様さを生み出しているモノがいるのだ。

が、逃げる訳にはいかない。それがいる場所を越えなくては、
海族の墓場は抜け出せないのだ。

墓守の気配を逃すまいと、耳をそばだて、誰も声を発しない。
ただ 船が水を分けて進む音だけが、聞こえてくる。

と、船が止まった。
船が右に傾く。何者かが、船に乗り込もうとしている。

「キャプテン、あれ!」

「ちっ!」

海底から船へ上がってくる蛇のようなモノに剣を突き立てる。

一度は下がったが、それは痛みなど感じていないのか、再び、
船に巻き付いてきた。
それどころか数が増えている。

船首につけられた海の女神が、無残に圧し折られた。
俺のお気に入りだったのに……。

「応戦しろ!」

俺は、マストを狙っていたやつの頭を切り落とした。

が、それは頭ではなかったようだ。
頭と言うよりは、トカゲの尾のようなものか。
切り離された後も意味のない動きを繰り返している。

よく見ると、それは見覚えのある形だ。
もっとも、俺が知っている物の百倍の大きさだったが……。

グラリと船が大きく揺れ、何人か海に投げ出される。

「下から何か来ます!」

誰かがそう叫んだ瞬間、海面に顔を出したのは、巨大なイカ
の化け物だった。
船に足を巻きつけ、本体も船に上がろうとしている。

こいつ、無賃乗船する気だ。

「怯むな! ここでイカの餌になりたくはないだろう!」

海に投げ出された連中も、船に残った連中も、必死になって
化け物に挑む。

切った足が生えてくる事はなく、大王イカは、次第に攻撃力
を失っているようだ。

が、被害は甚大だ。
クルーにも死傷者が出ているだろうし、船もボロボロだ。

「船の敵だ。このままイカ刺にしてやる」

俺は、イカに飛びかかって、目を突いた。
水風船を割ったみたいに、中の液体が撒き散らされた。

「ざまぁみやが……」

「キャプテン!」

バンダナが俺を突飛ばす。
イカの足が、俺の代わりにバンダナを捕まえ、締め上げた。
バンダナは、声にならない悲鳴を上げ、気を失った。

「お頭!」

「キャプテンだ! お前達は本体を総攻撃しろ!」

ヒゲ達をイカの本体に向かわせる。

この分なら、あと数分もしない内に勝ち鬨が挙げられるだろう。
それよりも……。

俺は、バンダナを離さない足を捕まえた。

最後の足掻きで、バンダナを叩きつけないようにと床に串刺し
にし、撒きついたイカ足を ナイフで慎重に切り裂いていく。

「おい、しっかりしろ!」

「うっ……」

息はしているようだ。
俺は、バンダナを担ぎ、戦いの場から遠ざけた。

意識のない人間の体は、重く感じられるものだが、バンダナ
は妙に軽い。
それに、言葉では言い表せないような違和感がある。

肋骨が折れているのかもしれない。
生憎、船医も戦いに駆り出されているので、俺は、バンダナの
体を触ってみた。

「ん?」

肋骨は無事のようだが、やはり違和感がある。

ああ、内臓をやられたのか?
俺は、ナイフでバンダナの上着を裂いた。

「こ、これは?!」

違和感の正体が分かった。
バンダナの胸が腫れていたのだ。

「いや、でも。これは……」

「う……ん、キャプテ……ン?」

目を覚ましたバンダナは、俺が何を見ていたのか気づいた。
体を起し、胸を隠すようにして項垂れた。

「キャプテン、すみません。オレは……」

俺は立ち上がると、自分の上着をバンダナに投げつけた。

「怪我はないな。言い分は後で聞く。まずはイカ退治だ」

「はい」

空が明るくなっている。イカが弱っていくほどに、霧が薄くなっ
ているようだ。
この分なら、直に この海域を抜けられるだろう。

俺は、戦いの中に駆け戻った。

「野郎ども! もう一息だ!」

「お頭!」

「キャプテンだっ!!」
 
 ~ END ~
 
 ・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・
 
2008/12/4 に見た夢です。

イカ臭いと言うより、男ばかりで男臭いなぁ~と思っていたら、

クルーの中に女性が混ざっていました。

しかも、気づいていなかったのは“俺”だけと言う お話です ^^;






時間がぁ~^^;

急いでステプに行きます ^^v

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2011/02/28 22:30
>カトリーヌさん
 それに近いですね ^^
 でも、海賊のように商船を略奪もします。
 盗るのは、ほどほどにしているようですけど ^^

 この海域に なぜ大イカがいるのか?
 謎ですねぇ~。
 海溝の底に住んでいたイカ(普通サイズ)が、海面に上がって
 膨張したのかもしれません ^^;
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2011/02/28 22:26
>スイーツマンさん
 やっぱり海賊ですよねぇ~^^;
 古い付き合い(らしい)のヒゲは、俺をお頭と呼んで譲りません ^^
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2011/02/28 00:07
彼ら、海賊というよりも、
現代の東シナ海に出没する、
不法海運業者(蛇頭:じゃとう)という感じかしらね(微笑)。

オオイカとの戦い、
ジュール・ベルヌの「海底2万マイル」を思い出しました。
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2011/02/27 22:33
お頭~
やはり海賊のような




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