Nicotto Town


藍姫の本棚♪


退魔除霊師 ~シニガミノカマ~ (3)

優しい潮風が、六郎太と私の間を通り過ぎて行きます。
波は穏やかで、ほとんど船の揺れを感じません。

「オッケー、お腹 空かない?」

『そう言えば、少し』

「クッキー、食う?」

『クッキー?』

「俺の好きなエリカのクッキー、末兄ちゃんのお土産にって
 思ったんだけど、急いでたから、オッピに渡し忘れちゃっ
 て……あれ、猫又ってお菓子とか食べるの?」

『他の猫又族や、普通の猫がどうかは知りませんが、私は甘
 党です』

「そうなんだ。じゃあ……いっちゃう?」

『頂きます』

ニコニコしながら 六郎太は、背負っていたバックから、ビニー
ル包装されたお菓子を取り出しました。

袋を止めていたリボンを解くと、チョコレートとバターと小麦が
仄かに香りました。

六郎太は、クッキーを適度な大きさに割ると、小さな欠片を私
の顔の前に持ってきます。

私は、袋の中から顔だけ出しているので、食べさせてくれる
つもりなのだと気づき、妙に気恥ずかしくなりました。

が、六郎太は全く気にした様子もありません。
彼とて、私が人型をしていれば、絶対にこんな事はしないで
しょうが……。

私は、もう一度『頂きます』と言ってから、雛鳥のように口を開
けて、クッキーを口に運んでもらいました。

ふんわりとチョコレートの味が広がります。

『これは美味ですね。生地の口どけ具合といい、チョコレート
 の甘みといい、バランスが絶妙です』

「だろう!」

『エリカさんと言うのは、料理上手な女性なのですね』

「え、違う、違う。エリカは店の名前だよ。店長は梨香子《リカコ》
 さんって言う女の人だけどね」

『そうだったんですか。てっきり、ロクの恋人の名前かと』

「まさか! オレ、恋人なんていないよ」

『一人も、ですか?』

「一人もって、普通、恋人がたくさんいる訳ないだろぉ~」

『はぁ、そう言うものなんですか』

ちょっと驚きです。
六郎太なら、十人くらい恋人がいても良さそうなものなのに。

島にいた時、六郎太と少し話しただけのイリアホコワイやオッ
ピシアガンが、簡単に魅了されていた所をみると、若い猫又
には堪らないフェロモンを出していると思うのですが、人間の
好みは分かりませんね。

「それより、まだ食えるよな?」

『ええ、勿論。こんな優雅な時間が持てるなら、私も、イカの
 燻製を持ってくるのでした。島の名物なんです』

「遠足みたいだな」

『遠足……』

島で生まれて数百年。一度も外の世界に出た事がなかった
私にとって、船に乗るのは初めての体験です。
ましてや、オヤツを持って遠出なんて……。

「オッケー?」

『いいえ、素晴らしい響きだと思って』

「何が? 遠足が?」

『はい、何やら未知の世界へ行くんだと言う気持ちが高まって
 きました』

「大げさだなぁ~」

六郎太は笑いながら、私の頭を撫でました。

おそらく無意識なのでしょう。
何気なく、普通の猫にするようにスキンシップを図っただけな
のでしょう。

が、六郎太の手が触れた所から、伝わってくる温もりは、マタ
タビのようです。

「ん? どうした、オッケー」

『いいえ。……あの、ロク』

「何?」

私は生物学的にオスなんですよ?
私が人型でも同じ事をしますか?

咽喉まで出かかった言葉を、私は飲み込みました。

六郎太は、間違いなく、私が何モノなのか、失念しているの
です。思い出させて、今、気まずくなる必要もないでしょう。

『……何でもありません』

「? あ、飲み物が欲しいのか!」

六郎太は、ペットボトル入りの黒い水を取り出しました。

「オッケー、炭酸、大丈夫?」

『ええ。でも、咽喉は渇いていませんので』

「そうか? じゃあ……」

六郎太は、クッキーの欠片を、私の目の前に掲げました。

こうして、船に揺られている間、六郎太は親鳥のように 甲斐
甲斐しく、私の世話を焼き続けたのでした。
 
 ・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・

猫は、黒い炭酸(コーラ)を飲めるんでしょうか? ^^;

ちなみに、人間の私は、炭酸が苦手です ><

猫舌で、熱いのも、冷たすぎるのも ダメ ><

どんなに暑い夏でも、氷水は頂けません。困った体質ですよねぇ。

実は、犬にも 猫舌の子がいるそうで、要するに食べ方の問題だと

言う お話ですが……^^;

私は 咽喉をやられてしまうんですよぉ~ ><

ロクは、犬神の効果で、毒がある物でも 問題なく食べます。

どこででも生きて行ける羨ましい人(?)です。




今日は、ここまで。

ブログ、回れそうにないです。最近、寝不足で ^^;

今宵は 幼稚園児並みに早寝して、明日、ゆっくり回りますね。

お休みなさいませぇ~ m(_ _ )m

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2011/03/31 21:14
>思音さん
 ロク自身にも、ちょっとした秘密がありまして、オケも まだ見た事がありません。
 だから、お互いに驚くでしょうねぇ~^^
 一応、オスだと言う事は分かっていますが、私達 人間にしたら、猫の性別なんて
 気にせず、撫で撫でしてしまうと思うのでw
 でも、猫又であるオケが人型になったら、流石のロクも、撫で撫でも、あ~んしても、
 しないと思います ^^;
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2011/03/31 21:09
>カトリーヌさん
 ああ、やはり飲みませんか ^^;
 人間にだって、刺激が強すぎると思っている者がいるのに、
 猫なら 尚更「何だ、この水は?!」と驚いてしまいますね。
 でも、反応が可愛いなぁ、黒タン (^-^●)
 舌が痛かったんでしょうね ^^;
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2011/03/31 21:05
>スイーツマンさん
 八重の襲撃が起こるまでは、オケに緊張感はありません ^^;
 まだまだ、エコの行方不明も重要視してはいないのかな、と。
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2011/03/31 11:22
1~3まで、一気に読ませていただきました! のどかですね~ネコはいいですよね~
 ロクは、オケがオスだということに気付いてるんでしょうか? 
まぁ、ネコって、見た目だけじゃ分かり難いものですし。仕方ないんでしょうかね
 オケは猫又だから、人型にもなれるっぽいですね! 早く見てみたいものです*^^*
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2011/03/31 01:12
ウチの猫、黒タンは炭酸水は飲めません。
以前、一回あげたことがありましたが、
ペロッと、ひと舐めした後、激しく頭を振り、
舌を何度も出し入れしていました(苦笑)。
それっきり飲みませんでしたよ。猫には刺激が強過ぎるようです。

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2011/03/30 22:07
のどかな船旅。
嵐の前の静けさでしょうか?




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