Nicotto Town


藍姫の本棚♪


退魔除霊師 ~シニガミノカマ~ (52)

「ロクさん、晶さまの手の空く時間は、午後3時からの30分間
 です。それまでに、榊さんと打ち合わせをしてくださいね」

「うん、三時になったら、アッキーの部屋に行くから」

「お待ちしています」

來夢と言葉を交わした六郎太は、私を伴い、なぜか外に出ま
した。瑞希は、書庫にいると言っていたはずでしたが……。

『ロク、どこへ向かっているのですか?』

「瑞希の所だけど?」

『書庫ですよね』

「ああ、そっか。多分、ちょっと驚くぞ。ここには 書物だけを収
 めた蔵があるんだ」

『蔵ですか? 部屋じゃなく?』

大げさな表現ではありませんでした。

神社の敷地の奥にある榊家のプライベートスペース。
その更に奥へ進むと、鬱蒼とした緑の中に白壁の土蔵が建っ
ていました。

「退魔除霊師の歴史や、絶滅した妖かしの事を書いた物とか、
 何て書いてあるのか 全然 読めない本もあったりしてさ」

苦笑した六郎太は「オレは、ここ、苦手なんだよねぇ」と肩を
竦めました。

『何やら、重苦しい空気の漂う建物ですね。ここにも守宮の
 結界があるのですか?』

「いや、ここには……」

六郎太が黙って指差した先、土蔵の入り口には、木札が掛
けられていました。
札には、薄墨と朱で複雑な文様が書かれています。

『あれは……結界?』

「うん、心理結界って言ってね。公園で使われていたヤツの
 機能限定版かな。ここの資料を私的に使うつもりだったら、
 “人間、止めたくなる”くらいの強烈な精神的ダメージを受
 けるんだ。あ、オッケーなら“妖かし、止めたい”だな」

『それほど嫌ではありませんが』

「オッケーは、この中の物を悪用する気ないだろう?」

『悪用も何も、どんな物があるのか知りませんし』

「まあ、そうだよな。でも、昼飯の後には来ない方がいい場所
 だよ」

『ロクは悪用しようとしたんですか?』

「まさか! でも、昔、大事な物を中に隠されてさ、オレの物
 だったんだけど、中にあるから結界発動。で、しばらくの間、
 トラウマ? みたいな事があってね」

『それは苛めですか?』

「修行だよ。心を無にするとか、心理結界耐性とか、まあ、そ
 んな感じの修行」

『入っても大丈夫なのですか?』

「大丈夫だよ。瑞希はこの中にいる訳だし」

中に瑞希……と、言う事は、彼女を運命の人ではと意識して
いる私には、危険な結界では?

大丈夫と言いつつ、六郎太も緊張しているようです。
そこまで深い心の傷を負ったと言う事でしょうか。

『止めておきます』

「え、何で?」

『見てください。鳥肌が立っています。これは不吉な前兆です』

「猫なのに鳥肌? いや、それ以前に、オッケーは毛深すぎ
 て分からないから」

私は、入り口付近に腰を下ろすと、六郎太を見上げました。

六郎太は「う~ん」と唸った後、溜息をつきました。

「オッケーは邪だから、心理結界には係わらない方がいいか
 もなぁ」

『邪ではありません』

「縦縞でもいいけどさ、食った物、吐かれても困るしなぁ」

六郎太は「ここでじっとしてて」と、私に言いながら真顔になり
ました。

そして、両手で頬を挟むように叩いて、気合いを入れます。
今にも準備体操しそうな勢いです。

『ロク』

「うん」

『蔵の外から瑞希さんに声を掛けると言うのは、どうですか?』

「そっか! そうだよぉ~」

安堵した六郎太が、その場に へたり込みました。

『そんなに嫌なんですか』

「オレにも苦手な物はあるんだよぉ」

『邪ですね』

「うっさい!」

「ロク?」

中から瑞希が出てきました。
手には和綴で製本された古い書物を持っています。

「瑞希ぃ~」

「大丈夫? 何かあった?」

「瑞希に聞きたい事と相談したい事があって。調べ物、まだ
 かかりそう?」

「いや、僕もロクに話さないといけない事があるから」

「?」

「とりあえず離れに。ロクの使っている部屋で話そう」

瑞希は、本を手にしたまま蔵から出てきました。

結界の影響を全く受けていないようです。
流石は私の女神ですね。

『ロクとは違いますね』

「瑞希と比べないでくれよぉ」

 ・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・

ロクは、瑞希が話してくれない事を もどかしく思っていたのですが、

最近は、相談する機会が増えたのではないかなぁと ^^

実は、メインの中では、瑞希と美鶴の一人称話がないのです ^^;

美鶴は、短編で高校の話を書きたいので 予定しているのですが、

瑞希は長編かな、と。

問題は、私が、女の子の視点で長編が書けるのかなぁと言う ^^;

練習あるのみですねぇ~。






今日は、夜更かし予定w

と言うか、これが出来るのは土曜の夜だけなので ^^

気を抜くと、簡単に夜の住人になります ^^;

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2011/06/05 00:05
>スイーツマンさん
 今回はオケのみです。彼女達は、また別のお話で……。

 心の中の声が複数人分あると、読者が混乱するので避けるのは、
 漫画の基本的な書き方と同じですねぇ^^
 私は絵は書きません(美術2 T_T)が、話の組み立て方なんかが
 似ているので、少し勉強しました ^^
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2011/06/04 14:27
一人称は多数あると混乱するので
オケ視点固定のままのほうがありがたいです
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2011/05/29 23:20
>Beliver さん
 旧家のご当主は、いろいろと大変ですねぇ ^^;
 私の方では、跡継ぎは晶ですが、瑞希も教育を受けているので、
 同じ事が出来ます。むしろ、年齢的に瑞希が上ですねぇ。
 書庫に気軽に入る事が出来るのも、瑞希だけかもしれません。
 厳しい修行の成果です ^^

 何となく立ち入りたくない所なんかにも、軽い それが使われている
 と言う解釈です ^^
 でも、書庫の結界は強烈です。
 気をしっかり持っていないと、ヤバ気な幻覚に心を食われてしまう
 事もあるようで ^^;
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2011/05/29 16:12
武家屋敷に書庫はありますよね。わたしの本命物語でも。
ただ、そこにはいるのは当主しか入れない設定で、
主人公の女の子は、時期当主候補としても、入れないんですよね~。
入ったら何が起こるかなんて、考えてもなかったけどw

それにしても、“人間、止めたい”って・・・
心理結界って怖いなぁ
なんか、幻でも見ちゃうのでしょうか?
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2011/05/29 01:51
>カトリーヌさん
 古い家の土蔵……どんなお宝が眠っているのか考えるだけで、
 ワクワクしますよね ^^
 小高い山を 丸々1つ 妖かしの結界で覆い、更に中にも結界。
 心理結界は 主に人間用なので、盗難対策かと思われます。
 ロク……どんな目に遭わされたのか ^^;

 好奇心の旺盛なオケなら、いろいろ勉強してそうです。
 どこで使うんだと言うような事も ^^
 長生きですから、学ぶ時間は山のようにあるのでしょう。
 問題は、ちゃんと記憶を引き出せるかと言う事かも ^^;
 忘れっぽいですから。。。
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2011/05/29 01:43
>咲雪さん
 私も本に囲まれて暮らしたいです ^^
 ここには面白い本があると思いますよ ^^
 日本の物が多いようですが、最近、瑞希が洋書も入れているようです。
 少し前に知り合った西洋の妖かしが原因なのですが……。
 瑞希については書く機会がなくて、レスで小出しです ^^;

 ロクは、昔から修行と称して、結構 無茶苦茶されているようです ^^;
 神社の頭脳とも言える この書庫は、セキュリティーを妖かしに任せず、
 人間がしている分、人間にも容赦のないモノなのでしょうねぇ^^;
 職員室……嫌ですねぇ^^;
 でも、自分のクラスが掃除当番になってしまって、トータルで一ヶ月は
 通ったかな ^^;;
 整理されていない机を見ると、ちょっとホッとしましたけどw
 なぁんだ、先生もダメダメだしw って ^^
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2011/05/29 00:32
古い代々続く家の土蔵に、たくさんの古文書・・。
ムードありますよね・・そういう場所。
ロクも、少したじろぐ心理結界って、だいぶ、
昔の経験がトラウマになっているようね。

オケが入っても、オケは人間の古文書が読めるのかなぁ?
もしかして、ロクの10倍生きているから、
色々な古代の言語に通じているのかしら?
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2011/05/28 23:42
わぁ、いいなぁ。
書庫に行ってみたい入ってみたい本が読みたい。
…はい、すみません。
最後のは完全にわたしの欲です。

苦手な所…。
わたしが思うところの、職員室という感じでしょうか…?
どうにも好きになれません。
ちょうどいい温度で、コーヒーの香りがただよってて、
なのに緊張感が張り詰めた職員室。
…嫌です。
少しロク様のお気持ちが分かった気がします^^




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