Nicotto Town


藍姫の本棚♪


退魔除霊師~ユメワタリ~ (46)

世間では、女の子が寝ている横で、ハアハアと息を荒げていたら、
どう思われるか?

うわっ、考えただけでも恐ろしい結果に……。
ここで二人が目を覚ましたら、オレ、かなりヤバイぞ。言い訳に晶
を使えないし。

ひとまず結界の外に出て、深呼吸を繰り返したオレは、そこから
瑞希と來夢を見て、息が止まるほど驚いた。

遠目に見ると、月光を浴びた白い肌が青白く染まり、呼吸が静か
な所為か胸の上下もほとんどない。
それが、ただ眠っていると言うよりは、深く永い眠りを連想させた。

退魔除霊師と言う職業柄、もっと壮絶な状態の死体を見た事は
あるが、そこにいるのが知っている者だった経験はない。
気付くと、寒くもないのに鳥肌が立ち、熱くもないのに汗をかいて
いた。

怖い……いや、本当に怖いのか?

分からない。分からないが、何だろう。
この胸をかきむしって、狂ったように叫びたくなる、この気持ちの
悪さは……。

ああ、そうか。そうだったんだ。
だから、晶は、オレが戻るまで眠れずにいたんだ。この重苦しさと
戦いながら……。

先程とは違った意味で息苦しくなって、オレは、覚束ない足取り
で、二人の方へと近づいた。

「ミ……ズキ、ライ……ムちゃ……」

咽喉がカラカラに渇いて、声が出ない。

大丈夫だよな?
カイちゃんを見送って、螢都達の夢にも行くって言ってたから。
だから、戻るのが遅いだけだよな?

オレは、自分で袴の裾を踏んで、床に叩きつけられた。が、痛み
なんて感じない。
這うように二人の間に入ると、瑞希に手を伸ばした。瑞希を抱え
上げた時よりも手が大きく震えている。

「くそっ、しっかりしろ。ビビッてるんじゃねえよっ!」

オレは、震える手で拳を作って、もう一方の手の平に何度も打ち
込んだ。視界がじんわりと滲んで、鼻が詰まってきた。

信じてる。絶対に大丈夫だって。
でも、オレは何も出来ないんだ。いつだって、ただ見ているだけ。

力が欲しい。瑞希の横に立つ資格が得られるくらい大きな力が。
その為なら、オレは……。

「ロ……ク?」

「!」

瑞希の黒瞳が、オレを映していた。
我ならが、ポカンと口を開けて、何とも締まらない顔だ。オレは、落
ちてきた鼻汁をズズっと、すすり上げた。

オレが緩い涙腺を閉めようと必死になっている間に、瑞希は、苦
痛に顔を歪めながら、何とか体を起していた。

「ロク、終わったよ。海藤は送り届けた」

ダメだ、オレ。もう……。

「……瑞希!」

オレは、力いっぱい瑞希を抱きしめた。
動いてる。喋ってる。生きてる。

「よかった。無事でよかった。オレ、もう瑞希は起き上がらないん
 じゃないかって、不安で不安で」

みっともなく泣かないように、オレは一気に捲くし立てる。
瑞希は、子供をあやすように、オレの背中をポンポンと叩いた。

「ボクは、一人で勝手に逝ったりしない。約束だからね」

約束? その言葉に引っかかって、オレは瑞希を開放した。

「 「  あっ! 」 」

オレは瑞希の肩口を、瑞希はオレの顔を見て、声を上げる。

「瑞希、血が出てる!」

「血が出てるのは、ロクの方だよ!」

はい? オレ、どこも怪我なんかしてないけど……。
その時、來夢が「うぅん?」と小さく唸った。意識が戻り始めている
ようだ。

「ライムちゃん! 大丈夫?」

「あれぇ、ロクさん、鼻血が出て……ああ、海藤さんに殴られた傷
 が開いたんですか? でも、おかしいなぁ。夢の怪我って現実
 に影響するんだったかなぁ?」


「海藤に殴られた?」

「わわわわっ! さっき、そこでコケた時、ぶつけたんだよぉ~!」

寝ぼけた來夢に、カイちゃんの着替えを覗いてしまった事を暴露
される前に、オレは、強引に話を終わらせようと大声を上げた。

「ロク、静かに! もう真夜中だよ?」

「うっ、ごめんなさい」

「ほら、こっち向いて」

懐紙をクシャクシャにして軟らかくしてから、瑞希はオレの顔を優
しく拭いた。

「血は、もう止まっているみたいだね」

はぁ~、何やってるんだろう、オレ。情けねぇ~。

 ・・・☆・・・☆・・・☆・・・

気付くと、もう こんな時間!

急いでUPです ^^

アバター
2009/04/29 21:14
>らんくるさん
 五人兄弟の末っ子と、二人姉妹の長女w
 一般的に 同じ年の場合、女の子の方が精神年齢が高いのも
 原因でしょうかね ^^
アバター
2009/04/29 17:36
ロク~、、きゃわいい~^^




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