Nicotto Town


藍姫の本棚♪


退魔除霊師~ユメワタリ~ (48)

退魔除霊師になるには “妖魔や悪霊が見える” とか、“声が聞こ
える” とか、“触れられる” とか言ったような細かい条件がいくつも
あって、それをクリアする必要あったんだけど……。
幸か不幸か、オレは全ての条件を満たしてしまったらしい。

ん? 來夢はどうなんだ? 瑞希は夢の中で「來夢が退魔除霊師
になったら」と言っていたような気がするけど。

「ライムちゃんは……あっ!」

……寝てるよ。
夢渡りしている訳じゃないようだし、マジ寝だな。疲れたんだろう。

正直、ホッとした。
初めて会った時とは別人みたいに、しっかり者になってたから、力
の所為で、性格が変わってしまったのかと心配してたんだ。

これなら大丈夫だな。
退魔除霊師になっても上手くやっていけるだろう。

オレは……なかなか一人立ち出来なくて、最初は瑞希の補佐ばっ
かだったけど、來夢の初陣を見る限りでは、あと一週間もあれば完
璧に一人で……ん? 今、何か引っかかったような気が……。

これは何だ?
ふいに幼い瑞希の泣き顔が、浮かんできたのだ。多分、瑞希と一
緒に仕事に出ていた頃だと思う。

何で急に……ああ、昔の事を思い出したからか。
でも、瑞希の泣き顔なんて……。
あっ、そう言えば、オレ、仕事で大怪我した事あったよな。目が覚
めた時、三日間、意識が戻らなかったと聞かされたんだっけ。

その時の記憶は曖昧で、無理に思い出そうとすると頭が締め付け
られるように痛くなってきた。
怪我のショックによる記憶の健忘……とも違うような気がする。

でも、その時、瑞希に大泣きされて、オレは密かに彼女を守りたい
と思ったんだ。

それに約束。その時、瑞希と何か約束しなかったか?

……ダメだ。全然思い出せない。
と、來夢が小さく身じろぎしたので、オレは彼女を抱え直した。考え
ても分からないものは考えても仕方がない。

オレは、來夢が使っている客間の襖を足で開けた。
教育上、晶には絶対に見せられない光景だが、両手が塞がってい
るのだから仕方がない。
布団が敷かれていたので、今度は掛け布団を(足で)脇に寄せた。
お日様の匂いがする布団に來夢を静かに下ろす。

メガネを外して……や、夜着に着替えさせる必要はないんだよな?
袴くらいは脱がせた方がいいのか?
いや、流石にそこまでする勇気(?)は……。

オレは、手に持ったメガネを文机の上に置いて、掛け布団を直して
から、小さく溜め息をついた。
そう、これでいい。男として……これでいいんだよな?

「お休み、ライムちゃん。よい夢を……」

幸せそうな眠りを邪魔しないように、オレは静かに部屋を出た。





只今、草木も眠る丑三つ時。
本当なら、オレが昔、使っていた離れに直行したい所だが……。

オレは、本堂を覘いた。
瑞希がまだ、そこにいるような気がしたからだ。
案の定、瑞希は本堂の床に座ったまま、窓から見える月に見入っ
ていた。

オレは邪魔をしないように、でも、驚かせないように近づいた。
どうして分かったのか、瑞希はオレが視界に入る前に「ロク」と呼び
かけた。

「な、何?」

「憶えている?」

ドキッ! それは約束の事だよな?

「な、何の事?」

「昔、ロクが、ボクに言った事」

「オ、オレ……」

うわっ、今更、思い出せないなんて言えないよ。

「ねえ、ロク。話したい事って……何?」

「え?」

急に話題が変わったので、オレは何の事か思い当たらなかった。

「海藤の話と……もう一つ」

と、瑞希がヒントを出した。
ああ、夢を渡る前に二人で話していた事か。

つまり、カイちゃんの埋まっている体と犯人に関する事。
それと、イチロー達に頼まれた静花の好きな人の事。

「明日にしよう。瑞希だって疲れてるんだろう。無理するなよ。オレ
 の前では無理……しないでくれ」

「そうだったね。じゃあ……」

瑞希が、オレの方に両手を差し出した。

 ・・・☆・・・☆・・・☆・・・

タイミングやテンションが合わないと、恋愛は上手くいきません ^^;

今は、まだ、ちょっと難しいですねぇ~w





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