Nicotto Town


藍姫の本棚♪


退魔除霊師 ~ヘビガミ~ (26)

数分後、オレ達の足元に、何かが横たわっていた。

視界が ボンヤリとしていて判別できないが、あの障壁なのだ
ろう。

『さあ、再起動する前に行きましょう』

來夢が急かすので、オケが覚束ない足取りで歩き出した。

足元の人型の塊を ぼんやりと眺めていたオレは、何気なく
自分の顔に手を……。

『ロクさん、駄目です、まだ外さないで!』

來夢の声で我に返ったオレは、慌ててオケの後を追った。

確かに、あの人の形をした塊が、瑞希の顔をしていたら、オレ
は立ち止まってしまうかもしれない。
そうすれば、また最初から やり直しだ。

少し行くと景色が森に切り替わり、そこでオケが待っていた。

『ロク、大丈夫ですか?』

「うん。オッケーは?」

『目が可笑しくなりそうです』

「オレも。でもさ、オッケー、眼鏡、似合うな。ずっと、掛けてれ
 ば? 女の子にモテるかもよ」

『結構です。これ以上、私の女性ファンが増えたら困りますか
 ら。それに、こんな瓶底眼鏡、今時、誰も掛けていませんよ』

「確かに。……あのさ!」

『何ですか?』

「オッケーもライムちゃんも、ありがとな。二人がいなかったら、
 オレ……」

『お礼を言うのは、蝶子さんに会ってからにしてください』

「……うん」

『お二人とも、お疲れ様でした。もう眼鏡を外しても よろしい
 ですよ』

來夢の秘策。

それは度のキツイ瓶底眼鏡だった。しかも、端の方が歪んで
見える。

オレもオケも目がいいので、掛け続けると頭の痛くなるアイテ
ムだ。

犬手になっているオレが 何とか眼鏡を外すと、人型のオケは
こめかみを押さえながら、眉間に皺を寄せている所だった。

「オッケー、大丈夫か?」

『猫に戻ります』

「は? え?」

言うが早いか、オケは二股尻尾の妖かし、猫又へと姿を変え
た。

『やはり四足の方が安定しますね』

そう言うと、オケは目を細めた。妖かしにとって、人に化けるの
は、そう楽なものではないらしい。

子犬神になっているオレは……それほど苦ではなかったのだ
が、元に戻る事にした。

御守を口に咥え、頭の中で犬神が扉を通って、向こう側へ帰
るイメージを思い描く。

「主が命ず。犬神、屋下より外へ」

犬神に変わった時と同じように、体が小さな光になった後、オ
レは人の姿に戻った。

戻ったと言っても、子供のオレだったし、本来、犬神になると
服はないのだが、それも夢の中なので素っ裸と言う事はない。

なぜか、初めて神社に来た時の洋服ではなく、動きにくい袴
姿だったのだが、この際、そんな事はどうでもいい。

『ロクさん、この先に……っ!』

言いかけた來夢が口を噤む。
茂みが揺れ、そこから幼い瑞希が現れたのだ。

まさか、ここにも障壁が?!

もう戦う気力はない。
オケは目を見開いたまま毛を逆立て、オレは口を開けたまま
体を硬直させた。

が、予想に反して、瑞希は、にっこりと微笑んだ。

「やっぱり、ここだった。こんな所で、また化け茸と遊んでいた
 のですか? 訓練をサボると、後で辛くなるのは自分なの
 ですよ」

……あれ? 何かが変だ。

「瑞希? えっと……えっ?!」

瑞希は、オレの手を取ると、引きずるようにして歩き出した。

「ま、待って」

「駄目! 待ったなし! ねぇねも待っているんだから」

って、オレの言葉が通じているのか?

呆然としていたオケが、オレに追いついてきて、『ロク』と声を
掛けた。

『これは、一体、どう言う事ですか?』

「オレが知りたいよ」

「ロク? 今、何を知りたいと言ったのですか?」

手を つないだまま、立ち止まって振り返った瑞希が、小首を
傾げる。

オケが、わざとらしく尾を立てて、瑞希の前で深々とお辞儀し
て見せたが、瑞希の視線は、オレの顔から動かない。

瑞希には、オケの声も姿も、認識できないようだ。

『その榊さんは、障壁でもご本人でもなく、ロクさんの夢の住
 人ですね』

「どうしたのです、ロク。ワタクシの顔に何か付いていますか?」

「い、いや、そんな事はないよ」

やはり、來夢の声にも反応はない。

ただ……瑞希の手は温かく、不思議そうにオレを見つめる目
は どこか懐かしい。

『ロクさん、彼女に付いていきましょう』

「ロク?」

「うん、行こう」

二人への答えになるように言うと、來夢とオケが話す声が聞こ
えてきた。

『どうやら、ワタシとオケさんは お邪魔のようですね』

『自分だけ瑞希さんと……ロクはずるいです』
 
 ・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・

字数も時間もギリギリ ^^;

今日は、暑かったので(でも、30度は越えていない)、その所為かも?

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2011/08/02 00:09
>カトリーヌさん
 はい、何とか ^^;
 ロクが子供の時にかけたモノなので、ある程度の年齢になったら
 突破される事は、蝶子も想定していたでしょうねぇ^^
 実際、ロクは思い出す必要性がなければ、忘れたままでもいいと
 思っていたようなので、今回、側に來夢やオケがいた事は、予期
 せぬ偶然だったと言えるでしょうか ^^
 ロクが夢を忘れてしまうのも、実は、蝶子の仕掛けなのです。
 この子瑞希は、本来の瑞希です。
 ロクが、朝、起しに来る晶を、瑞希と間違える事があるくらい
 そっくりで、穏やかで人懐っこい少女でした ^^
 今の瑞希は、近寄りがたい美少女に成長していますが……^^;
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2011/08/01 01:55
なんとか障壁を通過。。。
でもロク子犬のメガネ姿、何かカワイイ感じ・・。
一回、リアで見ていみたいわ。
でも、この夢の世界はライム嬢が支配しているのだから、
どんな姿でも作り出せるのでしょうね。
さて、さて次なる障壁は・・と思ったら、今度は可愛い瑞希が登場。
次回に期待。
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2011/07/31 23:52
>Beliver さん
 はい、夢ですから ^^
 來夢は、夢に ある程度なら干渉できます。
 目隠ししても良かったのですが、それだと全く見えなくて、
 ロクとオケが同士討ちになってもなぁ~と思いまして ^^;

 子犬神ロク用の眼鏡です。
 來夢の特別製ではないかと推測されます。
 犬の手では外しにくかったでしょうけどねぇ~^^;
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2011/07/31 14:15
おぉ、眼鏡か! 夢の中だから眼鏡も出せれるのかな?
わたしも視力だけはいいので、度が強い眼鏡を掛けると
頭が痛くなりますねぇ

子犬にめがね…人型オケならあってそうだけど、子犬か…
まずそのサイズってあるのか?
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2011/07/31 00:01
>咲雪さん
 こんばんは^^

 眼鏡は、素敵男子の最重要オプションです ^^v
 って、趣味が入りまくっていますが……^^;
 流石に、度のキツイ眼鏡は違う気がしますが、似合っていた
 のでしょうねぇ、眼鏡 ^^

 現実で犬神になると、服だけが取り残される形になります ^^;
 ロクは、変身後、それを回収してバックに入れておきます。
 時々、服をなくして、犬のまま家に帰ったりもしたようで ^^;
 最近では、神社に直接 退魔報告するように(それまではメールで)
 なったので、神社に服を置いているようです。
 夢の中だから大丈夫のはず……と言う認識が、ロクにあるので、
 人に戻っても真っ裸にもならないようです。
 上手く夢を使えば、御守だっていらないのですが……^^;

 現在の瑞希は、退魔除霊師の女子の中で唯一、髪を短くしています。
 でも、この頃は、長かったのですよ。言葉遣いも違います。
 全ての きっかけは、やはりロクが死に掛け、蝶子が出て行った この
 事件になります。
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2011/07/30 18:49
こんばんは^^

人型オケ様が、眼鏡…!
ほおおぉぉぉ?!
想像が楽しいですねぇ。
ロク様も、きっとお似合いだったのでしょうね^^

人に戻るというところで慌てたのですが、
そうでしたね。夢の中でした^^;
そういえば、犬型になる前には服を着ていて、犬型になったら服を着ていなくて、
人に戻ると服を着ていない…着ていた服はどこへ…?
犬神が食べちゃったとか…。←

この頃と今では、瑞希さんの口調が違うのですね…。
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2011/07/30 00:29
>スイーツマンさん
 ロクとオケだけだと障壁は越えられなかったでしょう。
 そう言う意味で、來夢も今回のエピソードの為のワンピースです。
 そして、やっと蝶子と対面です!(長かったぁ~^^;)
 って、あくまで過去(しかも、夢)ですが……。
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2011/07/29 23:54
狡いロク
 心外なお言葉を後ろで訊きつつ幼馴染あるいは許嫁に手をひかれ
 行く手に待ち受けるのは蛇神か蝶子か
 次回に期待します




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