Nicotto Town


藍姫の本棚♪


退魔除霊師 ~ヘビガミ~ (28)

『ロク、この女性が……蝶子さんですか?』

目を まん丸にしたオケが、近づいてくる女性を凝視したまま、
そう聞いた。

当然、オケは、オレに尋ねたんだと思う。
でも、何も答えられなかった。

人好きのする大輪の花のような笑顔。

大人になった瑞希を思わせる意志の強そうな黒い瞳。

双子の姉、花子が病弱で、おっとりした お嬢さま然としている
のに対し、蝶子は健康的で、活発に見える。

ああ、そうだ。覚えがある。
オレは、彼女を知っている。

「ねぇね、化け茸が、なかなかロクを離してくれなかったみた
 いなのです。だから……」

「ふふっ、分かってる」

オレが訓練に遅れた言い訳をする瑞希に、蝶子は悪戯っぽ
くウィンクした。

微笑み合う少女と女性は、まるで仲のいい母子のように見え
る。

嘘だろう?
この人が、オレを殺そうとしたなんて。

嘘だよな?
祖母――自分の母親――を手にかけたなんて。

目の前が真っ暗になった。

横でオケが『女神』とか何とか呟いていたけど、蝶子のした事
が、オレや瑞希に対する酷い裏切りのような気がして、気持
ちが悪い。

瑞希は、ずっと こんな気持ちでいたんだろうか?
それなのに、オレは忘れていたなんて……。

ふわりと、名前の知らない花の香りがした。
俯いたままのオレの頭を、蝶子がクシャクシャと撫でたのだ。

「ろっくん、どうしたの? 今日はご機嫌 斜めだね」

「!」

体をビクッと硬直させたオレの耳に「大丈夫、怒ってないから」
と、蝶子の声が流れ込んでくる。

おずおずと顔を上げたオレの目の前に、蝶子の笑顔があった。

「蝶子さん……」

「ん?」

蝶子の顔に不穏な陰は見られない。が、何か違和感が……?

「蝶子さん、今、誰かと一緒だった?」

自分でも、どうして そんな事を聞いたのかは分からない。

でも、蝶子の瞳が微かに揺れた。
動揺しているようだ。

「と、友達がね。来てたの。さっきまで」

「ねぇねの お友達って男の人? もしかして、恋人?」

瑞希のツッコミに、蝶子は否定も肯定もせず、目を泳がせた。

「たまぁ~に顔を合わせるだけよ? この近くに住んでいるん
 だって。時々、神社まで散歩に来る……」

「妖かし?」

オレの口が、勝手に動いて疑問をぶつける。

オレの言葉を理解するまでの刹那、蝶子と瑞希は、全く同じ
表情でオレを見ていた。

作り笑いで聞き直してきたのは、蝶子だった。

「……え? 今、何て?」

「蝶子さんの髪から妖かしの匂いがするよ」

「そんな匂いなんて……。第一、ねぇねのお友達が妖かしの
 はずないでしょう?」

「でも……」

「妖かしか人間かくらいなら、ワタクシにだって分かるのです
 よ?」

オレの言葉を遮った瑞希は、少し呆れ顔だ。

確かに、オケやエコが人型になっていても、アヤカシだと言う
のは簡単に分かる。

完璧な人型だと種族までは分からないが、人間とは存在感が
違うのだ。

上手く言えないが、妖かしは、この世界に馴染んでいない感
じがするので、退魔除霊師でなくても鋭い人なら分かるはず
だ。

……そう、だよな。瑞希の言う通りだ。
オレ、何を口走っているんだろう。

ましてや、蝶子は、月神子としての行を終え、この時は退魔
除霊師をしながら、瑞希の教育係をしていたんだぞ。

蝶子に分からないはずないじゃないか!

でも、蝶子の様子は、明かに可笑しかった。
顔が青ざめ、今にも大声で喚き出しそうだ。

「ねぇね?」

「っ! ごめん、ごめん。この後の時間は、精神集中の時間
 にするから、瑞希、貴女が六郎太に教えてあげて」

「ねぇねは?」

「調べ物があるから、ちょっと抜ける」

「蝶子さん!」

「本当にごめん。二人とも、ちゃんとやるのよ」

小走りに去って行く蝶子の後姿に、不安が募る。

瑞希が「ね、変でしょう?」とオレの裾を引いた。

確かに変だ。
何かが可笑しい。

この夢、どう言う意味なんだ?
蝶子の変心と関係あるのか??

『來夢さん、蝶子さんを追えませんか?』

オケの言葉で、オレは思考の迷路から救出され、來夢が申し
訳なさそうに謝る声を聞いた。

『すみません。この夢は、ロクさんの過去です。過去のロクちゃ
 んは、ここに止まったので追う事は不可能です。あの……』

『どうしましたか?』

『あの女性は、一体 何をしたのですか?』
 
 ・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・

どっと疲れが ^^;

外出から戻って、昼寝もしたのに……^^;

今日は、暑かった(でも、30度は越えてない^^;)からかなぁ~。

今宵もここまでにします。

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2011/08/06 00:13
>Beliver さん
 人間にしたら力が強い方に入る蝶子ですが、妖かしの霊格MAXには
 敵いません ^^;
 この時まで、蝶子は自分が会っていた男性が人間だと思っていました。
 そして、惹かれていたんだと思います。。。
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2011/08/04 08:10
ん、蛇神かな…
にしても、おかしな過去だね…
蝶子さんに、何が起きたのでしょうか
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2011/08/02 00:35
>スイーツマンさん
 この時点では、何の疚しい事もありませんから ^^
 でも、ここで気づいてしまった ある事実が、この蝶子を 現在の蝶子に
 変えてしまった……と言うのはあります。
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2011/08/02 00:32
>カトリーヌ さん
 この後、子ロクと子瑞希は言いつけを守り、修行に励んだようです。
 蝶子が何をしにいったのか知るには、蝶子の夢に潜るしかないです
 が、それは來夢には荷が重いでしょうねぇ^^;
 流血シーンを書くのを躊躇している内に、時間稼ぎ(?)で今回の
 夢が入ってきました ^^;
 お話の冒頭で出てきた夢と、聖域・月神子殺害事件には触れたいと
 思いますので、もう少しだけ夢の中を探索します。

 実は、リアでは、結構、近くで生活していたりして ^^;
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2011/08/02 00:23
>咲雪さん
 こんばんは ^^

 ついに蝶子登場です。
 理解があって、気さくで。この頃の蝶子は普通のお姉さんでした ^^

 落ち着いた所で……^^

 大物の妖かしは、感知に優れた退魔除霊師の面々にも妖かしだと
 分かりません。と、言う大前提があります。
 ロクの場合、犬神の超感覚で、人ではないモノの気配を感じたと
 言うのが正しいかもしれません。
 蝶子が会っていたのは、まさに大物でした。
 そして、妖かしが通れない結界の中にいると言う事は、元々 中に
 いたモノと言う事で、つまり……。
 ロクの力を聞いていた蝶子も、それに気づいてしまったようです。
 この時、蝶子とソレは、恋人同士だった訳ではありません。
 でも、蝶子は「ああ、この人は、もしかすると運命の人なのかも?」
 と思っていたのかもしれません。
 榊の女性は、世界で ただ一人の相手を見つける力があるのですから。
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2011/08/01 04:45
本性をみせるのはまだ先に思えます
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2011/08/01 02:06
う~ん、おしいところで夢は終わりかしら。
でも、蝶子さん何か隠してますね~。やっぱりあの蛇・・。
でもロクの夢で追えるのは、ここまでだとは。
後はリアの世界で、蝶子の痕跡を捜査するのかな?
蝶子の動機が、だんだん明らかになるのかしら・・。

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2011/08/01 00:09
こんばんは^^

蝶子さんが、蝶子さんが…!
わたしの理想のお姉様のイメージに…!←何を口走ってんだこいつは。

…はい。すみません。落ち着きます。

蝶子さん、同様してますねぇ。
本当に妖なのでしょうか…。
お2人(ロク様と瑞希様)の考えを合わせると、
恋人が、妖…?
いやいや。それはないでしょう。さすがに。
だって、幼い子供の考え出し…。

では、蝶子さんの同様の理由は何でしょう…?




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