Nicotto Town


藍姫の本棚♪


退魔除霊師 ~ヘビガミ~ (48)

「月子さまは、あの方の居場所をご存知ですね?」

「何の事でしょう」

月子が、オレの目を見据えたまま、微笑する。
どこにもブレがなく、とても嘘をついているとは思えない。

もしも、夢で、蝶子と月子の会話を聞いていなければ、そうで
すかと引き下がる所だ。
が、オレは、母が言っていた事を思い出していた。
 
“ロクちゃん、女の子が嘘をつく時は、相手の目をじっと
 見るのよ。相手が男の子で、自分に後ろめたい事があ
 る時ほど、しっかり見つめるの”
 
だから、可愛い嘘なら許してね、と話は続くのだが……。

その心理はイマイチ分からないけど、今の月子は、まさに そ
の話通りだ。

「あの方が、ここを出る手引きをされたのは、月子さまです」

オレが言い切ると、ほんの少し間を置いて「瑞希には……」
と、月子の弱々しい声がした。

「いいえ。ですが、瑞希は……瑞希“さま”は、ここを出て、あ
 の方を追うつもりのようです」

オレは、瑞希と話した事も詳しく伝えた上で、こう付け足した。

「瑞希さまは、今回の事で神社に不信感を持っているようで
 す。ですから、神社の力に頼らないと言う決意で臨まれる
 かと」

月子は、すっかり意気消沈している。

「僭越ですが、瑞希さまには、晶さまの鎌鼬を一体、憑ける事
 を提案しました」

「それは、八重を傷つけた双子の遣いモノ、ですか?」

「はい。あの二人、まだまだ未熟で、今回は問題を起こしまし
 たが、晶さまには逆らいません。特にサクの方は、晶さまか
 ら命令があれば、相手が誰であっても命がけで瑞希さまを
 守るでしょう」

「六郎太、貴方……」

なぜか、月子が怪訝そうに眉を寄せた。

あれ、この話をした時、瑞希も、こんな顔をしていたような?
オレ、変な事を言ったのだろうか。

「サクは、この度の失敗を取り戻す為にも、瑞希さまに誠心誠
 意、仕えると思います。それに……」

夢渡りは失敗だったと瑞希に偽り、オレが一人で蝶子を追う
つもりなので、瑞希がここを出る前には片がつくと言うと、月
子は「そう、ですか」と呟いた。

表情が暗いな。
こんな月子は珍しい。

「月……」

「分かりました。貴方に協力しましょう。ですが、姉が今、何を
 しているのか、私にも知らせはありませんし、今回、八重の
 事がなければ、詮索する気もありませんでした」

「え、月子さまは、居場所を知っているのではないのですか?」

「ここを出た後に、この方を訪ねるようには言いましたが……」

月子は、そう言って懐紙と筆を取り出し、サラサラとある人物の
名前を書いた。

「え、この人は……」

紙に書かれた名は、森 宗一《モリ ソウイチ》

オレは世話になった事はないが、月黄泉神社の掛かりつけの
医者だ。

齢70歳を超える好々爺で、神社とは目と鼻の先にある診療所
と一体になった大きな屋敷に一人暮らしのはずだけど……。

「何か起こった時に頼るようにと先代に、貴方の祖母に言われ
 ていたのです」

「でも、この人なら昨日……」

おそらくは、目を覚ました八重を診る為に今日も、神社に来て
いたのでは?

月子は、オレが問う前に首を横に振った。

「先生は、何もご存じないそうです」

「でも!」

「知っているが、ここでは話せないと言う事かもしれません」

「あっ! 明日、訪ねてみます」

「お願いします」

「……月子さま、もう一つ、いいですか?」

「何でしょう」

「黒い勾玉って、どんな使い道があるか、ご存知ですか?」

月子は、困ったように「妖かしを屠る宝具だと言う事しか」と答
えた。

「あれが人にも有効だとは夢にも思いませんでした。ここを離
 れる姉に、お守りとして持たせたのは私なのです」

黒い勾玉、盗まれた訳じゃなかったんだ。
月子も、八重の事では、自分を責めていたんだろうな。

「必ず、本人に会って何をするつもりか聞き出します。瑞希に
 何かさせるつもりなら、代わりにオレが……」

「六郎太!」

言葉を遮った月子が、這うように近づくと、膝に乗せたオレの
手を取った。

「瑞希の為を思うなら、自分の事も大事にしてください」

「つ、月……」

「約束ですよ」

「はい」

真剣な眼差しに圧倒されて頷くと、月子は小さな両手で握っ
たオレの手に額をつけた。

「約束、忘れないでくださいね?」
 
 ・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・

森先生は、オケ視点の時にも名前だけ出てきました ^^

好々爺は、すきすきじじぃ……では ありません。(分かってるって^^;)

少年とか青年は夢で演じた事がありますが、初老の男性は周りにも

いないので、実は書くの苦手なんです ^^;(大丈夫かなぁ~






動物園に行ってきました ^^(牧場っぽい感じの所ですが

動物と触れ合うと癒しになりますね ^^

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2011/08/31 23:35
>スイーツマンさん
 目は口ほどに……と言うアレかと ^^
 女の子が いつもと違うと感じたら、それは嘘の始まり
 かもしれませんね ^^;
 女性は天性の女優。嘘を見抜く力にも長けています。
 自分が嘘つきな程、相手の嘘にも敏感になる……と言う
 のはあるかも ^^;;
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2011/08/30 20:03
女の子が嘘をつくときは攻撃的になることと
従順を装うことを交互にします
みつめるというのも攻撃ですか
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2011/08/29 23:51
>カトリーヌさん
 ロクが変わったと感じたのは、瑞希も月子も同じようです ^^
 ただ、彼女達にしたら、心配な方に変わっていると感じたのか、
 月子は念押ししてます ^^;
 ロク自身は気づいていないですし、妖かし達にしたら、こっちの
 ロクの方がいいでしょうね。
 ロクが望むので対等なふりをしていますが、妖かし達は、ロクを
 ぬらりひょん(妖怪の王?)にしたいようなので ^^;

 年配の男性が周囲にいないので、どんな感じにするか悩みます。
 やはり……スキスキジジイ?
 数少ない年配キャラが、それでいいのかなぁ~^^;
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2011/08/29 01:27
ロクは遠慮なく追求しますね~(汗)。
あの、ちょっと頼りないかな~と思えるロクも、
ここまで、雄々しく凛々しくなるとは・・。
やっぱり、過去の真相と直面して、それを乗り越えることで、
精神的にタフになってきたのかしら。

スキスキジジイ Dr.森(笑)・・水戸黄門みたいな感じかなぁ?





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