退魔除霊師 ~ヘビガミ~ (50)-1
- カテゴリ:自作小説
- 2011/08/30 23:47:51
「おいおい、それは駄目だろう。花火は人に向けたら危な……」
「問答無用っ!」
螢都の周りを、火の粉と言うには大きな火片が舞う。
ヒラリヒラリと不規則な動きを見せる炎の蝶に、オレは、一瞬、
あの人の顔を思い出し……直ぐに考える余裕をなくした。
ぱちんと鳴らした細い指から、新たな蝶が飛び出し、導火線
に火をつける。
指を弾くだけで、次々とロケット花火に引火させていく螢都の
連続攻撃に休む暇もない。
初弾を叩き落して庭へ飛び出し、五発目までを避けた所で、
ふと周りの被害が気になって視線を流すと、いつの間にか、
人間も妖かしも、來夢が水結界で守る離れに避難していた。
『花火と言うのは、あれ程までに危険な遊戯なのか?』
『遊戯と言うより、むしろ、鍛錬のようですが……』
『あれは悪い見本です。お二人とも真似はしないでください』
「螢都お姉さま、綺麗ですぅ」
「まだまだ責め方が甘いわ。もっと逃げ場を限定して、確実に
死地に追い込まないと」
「あのぉ……お二人を止めなくてもいいのでしょうか?」
呑気な妖かし達の囁きと、主に螢都を応援する女性陣の声
が聞こえてくる。
螢都には悪いけど、オレもスッキリしない事が続いてムシャク
シャしてたんだ。
体を動かすのに少し付き合ってもらおうかな。
まあ、流石に、螢都が打ち上げ花火を持ち出してきた時は焦っ
たが……。
ススキとドラゴンと、なぜかパラシュートまで飛び出す花火の
コンボに、外野から歓声が上がる。
オレは、もう白黒の夢は見ない。
過去の罪を償う為に、前を向いて歩く。
色とりどりの火花の中で、炎姫と舞う火の演舞は、夏の夜を
鮮やかに彩っていた。
~END~
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<登場人物>
☆城野下 六郎太《キノシタ ロクロウタ》
地の退魔除霊師で、妖かし 犬神《イヌガミ》を体に宿す。
瑞希と晶は、母方の従妹。今春、無事、大学生になった。
夢で過去を思い出す事で、罪と秘密を背負い込む事に……。
★榊 瑞希《サカキ ミズキ》
水の退魔除霊師。現在の現役No1。
ロクの中の犬神を、唯一、絶対服従させる事ができる。
妖かし嫌いなのは、ロクを取られるのが嫌だかららしい。
★榊 晶《アキラ》
月神子《ツキミコ》見習い。瑞希の妹で、小学五年生。
実質、退魔除霊師を仕切っているのは、月子と瑞希。
ミニチュア版 瑞希を小悪魔風にした美少女(六郎太 談)。
★亘理 來夢《ワタリ ライム》
水の退魔除霊師。他人の夢に干渉できる 夢渡り。
退魔除霊師の統括を行う晶の補佐役 見習い。
スタイル抜群の眼鏡女子だが、思い込みが激しいのが難点。
★火沢 螢都《カタク ケイト》
火の退魔除霊師。二つ名は炎姫《エンキ》。
高校までは、ずっと女子校通いだったので男性が苦手。
唯一、普通に話せるロクの事は気になるのだが……。
★葛城 美鶴《カツラギ ミツル》
木の退魔除霊師。本社の退魔除霊師の中では一番若い
高校二年生。(春まで螢都と同じ高校)
あまり空気を読まないマイペース人間に見えるが……。
★兼光 小太刀《カネミツ コダチ》
金の退魔除霊師。美大の二年生。
冗談を言うと、周りから「怖い」と言われるのが密かな悩み。
独自の観察眼で、仲間の異変に逸早く気づく事ができる。
★榊 月子《ツキコ》
現在の大月神子。聖域の主。榊四姉妹の四女。瑞希と晶
の母。過去の事件の真相は知っていたらしい。
★城野下 風子《フウコ》
榊四姉妹の三女。ロクの過保護な母。
現在は専業主婦だが、ロクが生まれる前は……。
★朝倉 花子《アサクラ ハナコ》
天狐と人間の子に嫁いだ 榊四姉妹の長女。蝶子の双子
の姉だが、娘の静花同様、神社とはあまり関わっていない。
★榊 結月《ユヅキ》
月子達の母。ロク達の祖母。過去の事件で命を落とす。
☆オケノニミモオ(オケ) …… 猫又《ネコマタ》
仲間(エコ)を探して、離島から出てきた妖かし。
人間の女性が大好きだが、エコ発見後、なぜか、ロクに
憑いている。猫又の長老の予言が関係しているようだが……。
(50)-2へ
そうなんですか。それは何気に凄いご先祖が……^^;
一番 最初の『ユメワタリ』から登場している女性達の名前は、
ラノベっぽく付けています。
夢渡り → ユメワタリ → わたり らいむ と言う感じで ^^
蝶子を追うのは、少しお休みして、短編を二本入れて行こうかと
思っています。
長編は体に悪いです ^^;(しかも、ほぼ毎日UPはキツイ><
亘理の姓は初代のご先祖、伊達家の重鎮。来夢さんは平家系列のようですね。
関係ない話。
ひと心地ついて大きな展開になりますね