Nicotto Town


藍姫の本棚♪


退魔除霊師 ~ハナ~ (7)

「おかしいな」

「だろ! なんで、夏香は、ちぃ兄の墓なんて……」

「いや、そうじゃない」

「は?」

春彦は「そうじゃないんだ」と、苛立たしげに もう一度言うと、
自分の首の後ろに手の平を当てた。

手が冷たい春彦は、何か考える時、頭を冷やすように自分の
首の後ろを摩る癖がある。

おそらく、俺とは別の所に引っかかったのだろう。

少しの間、上を向いて目を閉じた春彦は、そのままの姿勢で
盛大に息を吐き出すと「ありえない」と独り言のように呟いた。

「何? 何がありえないんだよ」

春彦は、まだ ピンと来ない俺の顔を覗き込み「だって妙だろ
う?」と、疑問系で返してくる。

それが分からないから聞いているのにと、もどかしく思いなが
らも、いつもの事なので、俺は根気強く質問を重ねた。

「妙って?」

「瑞希が、と言うか、あの神社が、夏香が建てた墓の位置を
 把握していないはずはない」

「あ?」

「瑞希が電話で何て言ったか、正確に思い出せるか?」

「ごめん。正確には無理」

「じゃあ、大体でいい。出来るだけ詳しくな」

「えっと……夏香が、ちぃ兄の為に建てた墓がある。そこに参
 りたいけど、辻堂の墓とは違うので、場所を知っているか。
 みたいな感じだったけど」

「瑞希が、そこに御参りする意味がないだろう。辻堂の墓も
 そうだが、夏香が建てたって言う墓にも千秋はいないんだ。
 ある意味、あの神社のある山自体が千秋の墓みたいなもん
 だろう」

「それは……」

そうかもしれない。千秋は、あの山に眠る妖かしの犠牲になっ
たのだから。

それに、瑞希が関係者の動向を知らないのは、やはり不自
然だ。

月子率いる あの神社なら、職員のプライバシーまで事細か
に押さえていても おかしくはない。

「じゃあ、墓の話は嘘?」

「いや、多分、それは本当だろうな」

「……え?」

「話はそれだけだったか?」

「え~と……あ、瑞希が出る前に、電話口にいたボインボイ
 ンの巫女さんが、夏香に仕事の事で確認があるって」

「ぼ?」

「あ、いや、それは……」

やばっ、思わず余計な事を。

「も、元々、晶ちゃんの補佐役の子が電話してきてさ、夏香
 の居場所を知らないかって。で、何でか聞いたら、仕事関
 係で確認事項があるけど、休みで連絡が取れないって」

「それで?」

「その子が話している途中で、瑞希に代わって、ちぃ兄の墓
 の話が出たんだ。俺が知らないって言ったら、諦めるって」

「ふ~ん。それは、瑞希に はぐらかされたな」

あれ、そう言えば、いつの間にか、千秋の墓の話になってい
たような?

亘理と言う巫女さんは、仕事関係で連絡したいと言っていた
のに……。

腕組みした夏彦は、カウンターに寄りかかったまま、カレンダー
をじっと睨んだ。

黙りこんだ夏彦が何を考えているのか分からず、まあ、分か
るヤツなんていないと思うけど、俺は自分で勝手に考える事
にした。

疑問点はいくつかあるが、一番は、夏香がこそこそ何をして
いるのかと言う事だ。

休みを仕事と偽って、俺達まで欺く理由は何だ?

瑞希の電話から考えると、夏香は現在行方不明。しかも、あ
の神社絡みで何かしているのだ。

化け物退治の神社からマークされるなんて、尋常ではない。
あそこは、問題行動する人間ではなく、ヤバイ妖かし専門な
のだから。

もしかして、夏香のやつ、妖かしを使って何かする気か?

だが、何を?
妖かしは、そう簡単に人間には従わないはずだ。

月子や、その娘の瑞希と晶は別格だとして、夏香は只の末
端だ。

退魔除霊師の選別に漏れた夏香に従う妖かしなんているは
ずがない。

「……そうですか。はい、はい、よろしく」

「って、えっ、何? なんで、いきなり電話してんだよ」

俺が考えに没頭している内に、夏彦は、どこかに電話したみ
たいだ。

受話器を置いた夏彦が「ああ、ちょっと」と、にっこり微笑んだ。

「あ、冬馬、ガム食う?」

「いらないよ」

何、その緊張感のなさ。身内ながら、むかつく。

何か言ってやろうと口を開いた瞬間、電話のベルが けたた
ましく鳴り響き、俺は、思わず後ろに仰け反った。

夏彦は澄ました顔で、電話に出ると二言三言 交わして「あ、
ちょっと待って」と言いながら、俺に口パクで「メモ、メモ」と訴
えた。

俺が、カウンターの裏に隠してあったメモ帳とペンを渡すと、
夏彦は、一瞬、怪訝そうな顔をしてから「どうぞ」と電話の相
手に話しかける。

そのまま、しばし意味不明なやり取りをした後、夏彦は溜息
と共に、電話を切った。

「冬馬、分かったぞ」
 
 ・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・

久々UPしたら、文字数がギリギリ……^^;

12時まで時間があるので、今日は少し回れそうです ^^

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2011/10/19 23:51
>Beliver さん
 お墓の場所は、当然、瑞希も月子も知っていて黙認していたと
 思います。(春彦 大正解w)
 冬馬は 瑞希に「千秋の墓」と言われて、來夢の話を忘れたよう
 ですが、春彦は簡単には動じませんから ^^;
 父方の親戚である冬馬達に、神社の事に関わって欲しくないのは、
 瑞希も同じなのかもしれません ^^
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2011/10/19 23:47
>カトリーヌさん
 夏香は、間違いなく蛇神に何か仕掛けるつもりなので、
 一般人な兄二人は関わらない方がいいですねぇ^^;
 でも、夏香は妹なので、何かせずにはいられないのかと
 思います。大変ですね、お兄ちゃんは ^^;
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2011/10/19 23:45
>スイーツマンさん
 ロボ物っぽくて、いいですねぇ^^
 最後は巨大化した敵を、合体とか変形とかで迎え撃つみたいな ^^
 そうなると被害が大きくなり、密かに倒す事は不可能ですね。
 でも、戦隊物を いつか書いてみたいです。
 なんだか、楽しそうなので ^^
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2011/10/19 18:22
あぁ! そういえば来夢ちゃんの言っている事と、瑞希の言っていることは違ったなぁ
たしかに、瑞希にはぐらされましたね~
お兄さんは、ちゃんと聞いているんですね~。
一番ゆっくりなのに(^▽^;)
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2011/10/19 17:44
トーマ氏も夏彦も、あまり、この件に関わらないほうがいいかも。。
お山の退魔除霊師のような力が無い以上、
蛇さんの話に深く入れば、八重さんのような目にあうかもよ~。
おとなしく、2人で店番を・・(笑)。
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2011/10/18 05:58
千秋氏は山となって、蛇神が妻や娘たちに襲い掛かろうというとき、大魔神のように、
頭と手足が生えてきて、蛇神をやっける。そのとき、ロクはコクピットのような岩屋で、
巨神を操る。

スイーツ版退魔除霊師

(あ、原作と違い過ぎましたね。失礼しました)




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