Nicotto Town


藍姫の本棚♪


退魔除霊師 ~ハナ~ (8)

「分かったって、何が?」

「ナツの建てた墓のある寺」

「……えっ?!」

さっきの電話で、そんな話を?
無駄に顔の広い夏彦の情報網が役に立ったみたいだ。

「蓮《レン》さんが、ナツから聞いていたんだって。先方に話
 を通してくれたから、これから行ってみよう」

蓮と言うのは、辻堂家の墓のある寺の娘さんだ。
春彦とは同級生で、夏香は、蓮を姉のように慕って……え?

「行くって、どこに?」

うっ、嫌な予感しかしない。

既に悪い予想はしているけど、一応聞いてみると、「お前も
行くだろう、その寺に」と爽やかに返された。

なぜか嬉しそうな夏彦に、出来るだけ嫌そうな顔で「これか
ら?」と尋ねてみる。

「ナツの手がかりが見つかるかもしれないだろう? ほら、深
 く考えず、肝試しだと思えば、少しは 気が楽になるんじゃ
 ないか?」

「逆効果! 俺、行かないから!」

「そんな事 言って、お前だって気になるだろう。夏香が何を
 しているのか」

それは気になるけど……。

どこの世界に、こんな深夜に肝試し……ではなく、墓参りに
行く物好きがいると言うのだ。

否、いるか。
夏になると、心霊スポットと呼ばれる所に行ってしまう連中が。

全く とんでもなく酔狂だ。
既に何かに取り憑かれているとしか思えない。

噂だけで何でもない所もあるが、中には本当に危険な場所
だってあるのに……。

「ほら、お前の分の懐中電灯」

「俺はいいよ。ほら、夏香のやつ、ここに戻るかもしれないか
 ら、店に残って……」

「ナツは、ここには戻らないよ」

春彦が きっぱりと言い切ったので、俺は、思わず、夏彦の顔
をじっと見つめてしまった。

泣き笑いのような顔の春彦に、何を言ったらいいのか、咄嗟
に言葉が出てこない。

俺が、余程 余裕のない顔をしてしまったのか、夏彦は、ふっ
と口元を緩めた。

「ナツは、昔から問題を起こす子じゃなかったからな。辻堂と
 縁を切るつもりでいるんだろう。あの子は、仕事の時でも連
 絡をよこすから」

「あ、兄……」

「まあ、万が一、ナツが戻った時の為に メモを残しておこう。
 寺は、ここからだと少し遠いけど、歩いていけない距離じゃ
 ないから」

俺の手に懐中電灯を押し付けると、夏彦は自分の分を点灯
させて、顔を下から照らした。

「大丈夫。供養されて仏になった人間は祟らないから。悪い
 モノが出たら、お兄ちゃんが追い祓ってやる」

俺は子供か……と、心の中でツッコミを入れて、俺は「期待
してる」と先に店を出た。

今夜は、妙に蒸していて、息苦しい感じがする。

冷房をつけていなかったのに、なぜか店内が涼しかった事に、
今更、背筋が凍った。

あの兄貴の趣味の部屋にある、得体の知れないモノが放つ
冷気が、クーラーの代わりになっていたのだろう。

あぁ?! 便利だって?

冗談ではない。
負の気を浴び続けると、生き物はバランスを崩すのだ。

あの中にいても平気なのは、全く何も感じない春彦くらいだ。
ある意味、尊敬に値する。

夏香の暴走は、その所為だったり……って、それはないか。
夏香には、逆に撥ね返す力があるから。

外にいると、何もしていなくても、じんわりと全身から汗が にじ
み出てくる。

シャツが体に まとわりつくようで鬱陶しいが、不自然な涼し
さの中にいるよりは心地よい。

しばらくして、春彦が出てきた。
捕られても困るものなどないが、店にしっかり鍵をかけて、俺
達は夜の商店街へ歩き出した。
 
 
 



 
この辺りで一番大きな商店街を抜け、十分ほど歩いた所に
問題の寺があった。

周囲は住宅街のはずなのに、あまり民家はなく、空き地が
目立つ。

そこの住職とか言う年配の坊さんが、俺達を出迎えてくれた。

「妹が、夏香が御世話になっています」

「そうですか。夏香さんの……。蓮さんから話は聞いており
 ます」

「それで、夏香の……」

春彦と坊さんが挨拶を交わす姿を横目に、俺は、境内を見
回した。
古びて、こじんまりとはしているが、悪い感じはしない。

「冬馬」

「ん?」

「行くぞ」

住職に伴われ、歩き出した春彦の背中を追いながら、俺は
懐中電灯のスイッチを入れた。

夜は寺門を閉めていると言う この寺には、街灯のような照明
は……。

「ああ?!」

「冬馬、大声 出すなよ。ご近所迷惑だろう」

「兄貴。懐中電灯、点かないんだけど」

「電池切れかな。手、繋ごうか?」

「結構です!」

……夜目、利くから別にいいけど。
 
 ・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・

変な所 押して、この画面が戻ってしまったぁ!

本文は メモに書いていますが、ここは 直に打ち込んでいます

ので、かなり焦ってますぅ><

何とか時間内UPは大丈夫だけど、今夜はブログ以外は お休み

しますね ^^

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2011/10/22 23:08
>ゴキブンさん
 夏香は、この日の為に着々と用意を進めてきました。
 真面目な働きを見せておいて味方を油断させ、春彦や冬馬にも内緒で……。
 お墓は、夏香の決意の表れです。
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2011/10/21 17:13
近くにお寺があってよかったです
夏香は本当にお寺にいるのでしょうか
続き読みます
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2011/10/20 00:07
>Beliver さん
 オケが積極的に人間の言葉を使ってくれないと、意思の疎通も
 はかれないかと ^^;

 ロクの一番上の兄もそうですが、全く霊能力が皆無と思われて
 いる長男達には、実は祓いの力があり、妖かしは近づきたがり
 ません。まあ、夏彦の場合、無自覚で言っただけですけど ^^;
 暗闇は怖くないけど、妖かしが怖い冬馬です。
 私は暗闇の方が怖いです。懐中電灯は標準装備ですw

 女の子は、防犯ベル、持っていた方がいいかもしれませんよぉ。
 それと脚力を鍛えて、逃げ足で勝負です。
 助けを求められる場所を普段からチェックしておくのもいい感じ ^^v
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2011/10/20 00:01
>カトリーヌさん
 オケがいたら、冬馬がフリーズするかと ^^;
 早くオケと冬馬と再会させたい&夏彦兄に会わせたいのですが……。
 今夜の内に どこまで行くか、まだ分かりません。
 やっとお寺には行きましたが ^^;
 危険を感じられないと、人間は呑気なものですねぇ^^;
 無謀にみえますが、要するに この二人、自分達に被害が及ぶ事は
 考えていないようです。
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2011/10/19 23:57
>スイーツマンさん
 夏香は、千秋の妹ですよぉ^^
 でも、夏香の気持ちの上では……ああ、これはネタバレかぁ^^;
 本来であれば、事が露見するのは明日以降でした。
 前のお話の段階で、キャスト達が勝手に動いた事で、未来が変化
 した部分があります。
 全てのキャストが不完全な人間なので、今後もどうなるか予測は
 できません。創造主としては、舞台を作って見守るだけです。
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2011/10/19 18:29
あれ、二人ともオケ達に連絡したっけ? 言ったっけ?
まぁいいや ← よくない

おっぱらってって…そうやぁ、一応あったっけ?
夜目が利くなんて、うらやましいなぁ本当。
この時季になると下校が暗いので、時々危険な目に(´=ω=`)
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2011/10/19 17:53
わざわざ、危険が予想される場所へ、
それも夜行こうとする2人。。
せめて、オケでも誘って・・・(笑)。
お二人とも危機管理が出来てませんわ~。
何かが起きてからでは遅いわよ・・(汗)
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2011/10/19 00:22
夏香の建てた墓。妻が建てたのだから、ふつうに考えれば当たり前。しかし冬馬たちが騒いでいるところをみると、やはり何かありそう。何かを封印しているのか、特殊アイテムを隠しているのか、はたまたどこかに通じる抜け道があるのか。次回を楽しみにしております。




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