Nicotto Town


藍姫の本棚♪


退魔除霊師~ユメワタリ~ (80)

「瑞希のオススメは?」

「どれも美味しいよ。何を頼んでも、外れはないと思う」

傍目には普通に話しているが、瑞希は少しご立腹のようだ。
先程までの会話で、何が気に障ったのか、オレにはさっぱり分か
らない。

でも、まずは誤解を解かない事には、先に進めないだろうな。
その為には……気合を入れて腹ごしらえだ!(現実逃避?)

「オレ、そこからここまで、一個ずつね」

「ロク、仕事前だよ?」

「大丈夫、大丈夫。腹が減っては仕事は出来ぬって言うだろう?」

瑞希が、ふっと表情を和らげる。
よく分からないが、笑ってくれてよかったぁ~。

「あぁ~! ロクロー?! 瑞希も!!」

突然、エリカ店内の喫茶スペースから、赤い影が飛び出してきた。
注目を浴びまくっているが、全然気にした様子もない。
猪突猛進。猪娘は、あくまで、目の前しか見えていないのだ。

「何で、二人がここにいるのよぉっ?!」

「ケイ……お前、声、デカいよ」

やっと状況を把握したのか、螢都が真っ赤になって、小さな体を
益々小さくする。

「ケイも来てたんだね」

「うん、亘理さんと一緒に……」

奥に目を向けると、窓際の席に座った來夢がヒラヒラと手を振っ
てくる。
なんだ。螢都と來夢は、ここに寄り道してたのか。

瑞希と二人きりになれないのは残念だが、助かったって気もする
のは、何故だろうな。
誤解を解くなら早い方がいいのに……。

「オレ達も混ぜてもらっていいか?」

って、わざわざ同席するほど店内は混んでないのに、口が勝手
に……。

螢都は眉根を寄せて、一瞬、瑞希の方を窺うと、小さく頷いた。
いつもなら、食って掛かってくる螢都が、妙におとなしい。

來夢と何かあったのかな?

「おい、ケイ。お前、何か変だぞ。熱でもあるのか?」

「! ないわよ。野獣の魔の手から、瑞希をどうやって守ろうかっ
 て考えてたの!」

何だよ。やっぱり、いつも通りか。





來夢の横の席に腰を下ろしたオレは、向かいに座った瑞希ばか
り見ていた。

瑞希が注文したのは、イチゴタルトと紅茶のセットだ。
銀色のフォークで小さく切り分けられたケーキが、ゆっくりと瑞希
の口に運ばれていく。
新鮮だ。洋菓子を食べる瑞希……。

「ロク? どうしたの?」

「え、いや、あははは、何でもない」

慌てて視線を横にずらすと、瑞希の隣で番犬が……螢都が睨ん
でいた。

「何だよ」

「別に」

螢都は、ご機嫌斜めだ。

「一個、喰うか?」

「なっ、何で」

「物欲しそうに見てたから」

「そんな訳ないでしょうっ!」

隣で來夢がクスクスと笑い、螢都は真っ赤になって窓の外へ視
線を移す。
二人の皿は、既に綺麗になっていて、冷めた飲み物だけが僅か
に残っているだけだ。
もしかして、帰る所だったのに引き止めてしまったのだろうか?

「ライムちゃんは? いる?」

「ワタシも、もうお腹いっぱいです。ロクさんは、お夕食前に、そん
 なに食べて平気なんですか?」

皿には乗せ切れず、トレーに直置きしてもらったケーキは、残り
二個。瑞希が “ハズレがない” と言う通り、どれも美味かった。
まだまだ行けそうだ。

「全然、平気。オレ、育ち盛りだから」

「それ以上、どこが育つって言うのよ」

「そりゃあ、育つ所はイロイロあるだろう。こことか、そことか、あそ
 ことか」

「うわっ、最低……」

「あ、変なモーソーひたらろぉ~」と言いながら、一つ頬ばる。

「してませんっ! 食べながら喋るな、ド変態っ!」

声を荒げた螢都が、來夢と目を合わせた途端、萎れた花のよう
に黙り込む。やっぱり、何かあったとしか思えない。
オレは、小声で「何か変な物でも食ったのかな」と、來夢に聞い
てみた。

「違いますよ。火沢さんは……」

「そこぉっ! 余計な事は言わないっ!!」

「はいはい、了解です」

人見知りの猫みたいな螢都が、來夢とは自然に馴れ合っている。
そう言えば、來夢は、静花とも気が合ってたよな。
まあ、女同士だって言うのもあるとは思うが、いつの間に、螢都と
こんなに仲良くなったんだ?

「ロクさんと榊さんは、どうしてここに?」

 ・・・☆・・・☆・・・☆・・・

店内では、螢都と來夢が決闘中(?)でしたw

そろそろ、終わらせて、新しい話を始めたいと思う 今日この頃。。。

どうやって〆ようかと考えたら、熱が上がりそうです ^^;

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2009/06/01 21:47
>らんくるさん
 生みの親としても、ロクには幸せになって欲しいです ^^
 でも、女の子達の方が心配ですねぇ~。
 長い話は大変なので、次からは、連作短編のような形でいきたいです。
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2009/06/01 21:42
>ゴキブンさん
 確かに ^^
 まともに退魔除霊しているのは、冒頭くらいですねぇ~。
 あとは、來夢に絡んで カイちゃんの浄化、工事現場の地霊の地鎮など、
 ロクがしている仕事の話がチラホラ。
 今回の副題『ユメワタリ』が、内向きの退魔除霊師なので、一旦ENDを
 入れないと……。
 元々、戦闘シーンが出てくるような話を書かないので、研究中です ^^;
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2009/05/31 22:29
やっぱ、ロクちゃんが幸せになってほしいなぁ
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2009/05/31 22:19
退魔除霊師の日常を描いた作品なんですね。
除霊はいつするのかなと考えていました。
途中から読み出したのでいつも質問してすみません。
まだまだ続きそうですね。




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