Nicotto Town


藍姫の本棚♪


苺と桃と。Ⅱ~犬のお巡りさん?~ (2)

「そうだよ。あの神社、瑞希の実家なんだ」

「え、本当に?! 榊さんは、あの神社の人なんですか?」

榊さんが、私の剣幕に少し驚いたように頷いた。

「榊さん。神社で、犬を飼ってませんでしたか?」

「はぁ?」

城野下くんが間の抜けた声を上げ、亘理さんと火沢さんが一瞬、
城野下くんを見てから、不自然に視線を逸らした。

「子供の時です。飼ってましたか?」

榊さんが神妙な顔で「飼ってたよ」と言うと、なぜだか、他の三人
がひどく驚いた。

「まじで?! それって、いつ頃?」

「ロクが家に来る ずっと前だよ。まだ、3才くらいの頃だったかな。
 すぐに事故で……亡くなったんだけどね」

え、そんなに早くに死んじゃったの?

「じゃあ、幼稚園の時には、もう……」

「いなかったよ」

そんな……じゃあ、別の犬なのかな。

「榊さん、その犬、何色でしたか?」

「白だったよ」

「あ……そう、なんですか。ごめんなさい。違う犬でした。私が見
 たのは黒い犬だったから」

今度は、女子全員が城野下くんを見つめたので、城野下くんは
居心地悪そうに咳払いして、みんなを代表するように言った。

「なんで急に犬の話なんだ?」

「犬の……お巡りさん」

私の心は、幼い日まで飛んでいた。





あれは、新しい幼稚園に登園する前日。

昼下りの ちょっとした探検のつもりだったと思う。
親の仕事の都合で引っ越すのは、初めてではなかったし、家か
ら見える範囲をパトロールするような気分で、私は歩いていた。

住み始めたアパートの近くには小高い山があって、上までは階
段が続いている。

引越しのトラックで通った時から気になっていた私は、下から頂
上を見上げ、意気揚々と階段を上り始めた。

と、何かが、私を呼んでいるような気がして、私は振り返る。
が、誰もいない。

少し行くと、また声が聞こえる。
振り返った私は、キョロキョロと辺りを見回した。
まだ暗くなるには早い時間なのに、やはり誰もいない。

「誰かいるの?」と、私は小さな声で言ってみた。

木々を揺らしていた風がピタッと止んで、階段脇の小道から『こっ
ち、こっち』と呼ぶ声がする。
子供のように高い、楽しげにクスクスと笑うような声だった。

「私を呼んだ?」

『こっち、こっち』

私は、恐る恐る声のする方に足を向けた。

小道は、舗装されていなかったけど、踏み固められた土の道だっ
た。横幅は、大人が二人並んで通れるくらいだろうか。

大きな割れ目には木の橋が架けてあり、上り坂には階段と手すり
まである。おそらく、散歩コースなのだろう。

私は、すっかり遠足気分になって、オヤツと水筒を持ってこなかっ
た事を後悔した。

と、再び、あの声が聞こえてくる。
立ち止まって耳を澄ませると、声は山の下の方からしているよう
だ。

「誰? 誰かいるの?」

『こっち、こっち』

多分、地元の子だろう。友達になれるかもしれない。
そんな軽い気持ちで、私は、傾斜の緩い所を探して、道を外れ
た。山は大きくないし、迷うはずはない。

もっとも、声のする方に向かいながらも、私は、偶に振り返って、
小道の木柵を確認していたのだけど……。




ここに来て、どれだけ時間が経ったのか分からないけど、木が茂
る森の中は薄暗い。

ちっとも追いつけない声の主に、私は、不信感を憶えていた。

私を誘う声は、一定の大きさで聞こえてくる。
近くも遠くもならない。

「姿を見せて! でないと、帰るから!」

疲れがピークに達した私は、半ば怒り気味に叫んだ。

『帰る? 帰るってどこに?』

「家に決まってるでしょう!」

小馬鹿にしたような口調に、完全に腹をたてた私は、振り返って
驚いた。
さっきまで見えていたはずの小道の目印がなくなっていたのだ。

 ・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・

ロクやイチゴ達が、まだ幼稚園に通っていた頃のお話です。

トーコとイチゴの初めての出会い話w

……なんですが、ちょっと『退魔除霊師』っぽいですねぇ ^^;


一回、書き込んで見ないと、どんな風になるのか想像も出来な

いです。ブログの新機能……。

習うより慣れろ?

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2009/08/01 21:45
>3スカーラさん
 あ、確かにw
 そう言えば、3スカーラさんの小説にも犬のおまわりさんが ^^

 声の主は……次回で♪
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2009/08/01 21:23
>ゴキブンさん
 こちらこそ、ごめんねぇ~。
 作中で説明するのが、苦手なのです ^^;
 地の文を一人称にしているのも原因なのですが、
 何とか、説明くさくならず、自然に相手に伝えられ
 るように練習中ですw
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2009/08/01 19:54
犬のおまわりさんというと、初心者広場のマロンのことを連想しますね。
声の主は何者なのか……続きを待ちます。
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2009/08/01 01:02
藍姫さんありがとう。
説明がうまいからいつも助かります。
ごめんね作者に説明さして。
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2009/07/31 18:12
>ゴキブンさん
 イチゴは、
  サトくん = いっちゃん = イチゴ = 金田一 悟瑠《キンダイチ サトル》
 で、桃子の彼氏と同一人物です ^^;

 ちなみに、視点になっているのは、
  トーコ = 桃姫 = モモ = 姫野 桃子《ヒメノ トウコ》

“誰々が言った”と、地の文を入れなくてもいいようにと考えたら、呼び方が
 増殖してしまったのです……。
 作者泣かせの怖い現象です ^^;;
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2009/07/31 18:01
イチゴさんが道に迷いかけているのかな。




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