Nicotto Town


藍姫の本棚♪


退魔除霊師 ~イヌガミ~ (7)

突然、電子音が鳴った。月神子のケェタイだ。
二人は動きを止める。が、外の世界は、相変わらず大きく揺ら
いだままだ。

「ぅあっ……」

「瑞希、危なぃ……」

体勢を崩した月神子を、犬神がさっと手を伸ばして抱きしめた。

鳴り止まない呼び出し音と、治まっていく揺れの中、犬神も月神
子も抱き合ったまま動かない。

否、月神子は幽かに震え、犬神の腕に力が入っていくのが見て
取れる。

「ロク、ボクに何かあったら……どうするって?」

「瑞希こそ、オレに何かあったら……何?」

二人の呼吸が徐々に乱れていくのが分かる。
そこで煩い電子音が止まり……。

見つめ合い、何か言いかけた二人の間を、今度は軽快で緊張
感のない音楽が遮った。
今度は犬神のケェタイが鳴ったようだ。

一瞬、犬神が恥じるような顔でケェタイに気を逸らした。

『犬神、鳴っているぞ。出ないのか?』

「うわぁっ!!」

「イチロー、そこにいたのか」

『犬神……神子殿も。我は、ずっとここにおりましたが……』

我がいる事を忘れるとは、どう言う心理状態なのか。
人とは、つくづく妙な生き物だ。

「えっとぉ……瑞希、大丈夫?」

「うん。とりあえず、座ろうか」

犬神も月神子も視線を床に落としたまま、数分前まで座ってい
た席に戻った。

向かい合わせだと言うのに、目を合わせないように反対側を向
いて、それぞれケェタイを操作している。

仲直り……したのか、していないのか。
これでは我には分からない。

「いっちゃん? 何? 何かあったのかよ。は? こっちは何で
 もない。すごい揺れ? 気のせいじゃない?」

犬神がケェタイに話しかける。相手はイッチャンのようだ。

「いや、だから、期待されるような展開は何もないから!」

はて? 犬神は、どんな期待をされていたのか……。

月神子の方は、ケェタイの文字情報を素早く目で追い、窓の外
を見た。妹君が妖かしの居場所を割り出したのだろう。

再び目を落として、少し操作した後、月神子はケェタイをしまっ
た。メェルで、妹君に帰館を指示したのかもしれない。

いつの間にか、イッチャンとの話を終えた犬神が、真っ直ぐに
月神子を見つめていた。

「瑞希、オレは、やっぱり……」

「妖かしは、あの建物の中にいるそうだ」

「!」

「晶が、建物に結界を張ってくれたから、妖かしは外に出られ
 ない」

ぱっと犬神の顔が明るくなる。
尻尾があれば、振っている所だろう。

「よっしゃぁ~、頑張ろうな。面倒な事は さっさと片付けて、デー
 トの続きしよう!」

月神子は瞬きするのも忘れて、一瞬、硬直したが、直ぐに拗ね
たように「ばか」と呟いてそっぽを向いた。
耳まで赤くなっている。

なぜか、怒られているはずなのに、犬神は前以上に嬉しそうに
笑っている。

いかん。静花にどう報告すればいいのか、分からなくなってきた。

観覧車の中で口喧嘩になって、すぐに仲直りしたかと思ったら、
犬神がまた月神子に「馬鹿」と怒られるような発言をして、だが、
犬神は怒られても嬉しそうだった、と?

我には、何が何だか さっぱり……。
まあ、いい。静花には、これでも通じる……かもしれない。




 


観覧車の籠が下まで降りると、外から掛けられた鍵が開かれ、
解放された。

先に降りて待っていたイッチャンが犬神の、妹君が月神子の許
に駆け寄って、内緒話をしている。

イッチャンは “先程、何をしていたのか?” で、妹君は “二人
で大丈夫なのか?” と確認している。
……別に内緒にするような話でもない気がするが?

月神子の説明が上手いのか、妹君の方が早く納得したようだ。

「それでは、わたくしと広道さまは、ここで失礼いたします」

「え、晶ちゃん、もう帰っちゃうの?」

「はい、悟瑠さま。今日は楽しかったです。桃子 《トウコ》 さまも、
 ありがとうございました」

「晶ちゃん、気をつけて帰ってね」

「はい、それではごきげんよう」

許婚殿が、イッチャンとモモ姫に分からないように小さく頷き、
犬神と月神子も同じように返した。

許婚殿には、妖かしは見えないが、不可視の神剣で妖かしを
切る事が出来る。
感覚が鋭い妹君と一緒なら、問題はないだろう。

「……さてと、ここからが大人の時間だな、ロク?」

「ん? ああ、まあね」

「と言う事で、今度はアレ行ってみよう!」

 ・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・

ロク、甲斐性なしですねぇ~ ^^;

イチローが、気になったようですが、ただの言い訳です。

他の二組が密室で何をしていたかは、ご想像にお任せします ^^



今日は、ちょい復活です (●^ ^●)

時間も……昨日よりは早めに来れたし、いろいろ回れそうw

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2009/09/29 20:54
>ゴキブンさん
 小さい時、友達と塀の上を歩いていて落ちた事がありまして、
(そんな所、歩く方が悪いのですが子供でしたから……^^;;)
 それ以来、鉄棒で前転するのも怖かったですねぇ~。
 高所恐怖と言うより、やや高所恐怖症 ^^;
 超高所の方がかえって大丈夫かもしれません。

 アッキーは、妖かしに憑かれたら困るので退散させますw
 広道さんとのデートも終了ですねぇ~ ^^;
アバター
2009/09/28 23:45
藍姫さんは高所が嫌いですか。
高いとこなんか怖そうですね。
アッーキー帰ちゃうんですか、つまらないです。
この後どうなるのかな楽しみです。




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