Nicotto Town


藍姫の本棚♪


苺と桃と。 ~森のクマさん?~ (10)

<Side.悟瑠>

それは、悲鳴だった。
でも、今まで聞こえていた物とは明らかに違う。
何とも、大げさな悲鳴だった。

なぜか、森のド真ん中で乗り物が急停止して、なぜか意味の
分からない叫び声。
更に、なぜか少ししてから電気が一斉に消えた。

それが顛末……なのだが、意味が分からない。

「何だ? 新しいイベントか?」

だとしたら、この森の中で、誰かが伯爵の手下にでも襲われた
のか?

「分からないよ。でも、サトくん。何か変じゃない?」

「確かに、これじゃあ何も見えないしな」

と、体を固定していた安全バーが上がり、僕達は乗り物から解
放される。

まさか、ここから歩き?

『機械トラブルの為、運行を一時停止いたします。係員の指示
 に従って、速やかに避難してください』

すぐに、そんなアナウンスが流れ、これは演出ではないと分か
ると、僕は、なぜかホッとした。

「何だ。故障かよ」

とりあえず、乗り物を降りた僕達は、暗闇に目が慣れるまで、そ
の場で、じっとして待つ事にした。

「サトくん……」

トーコの不安そうな声で、僕は手を離してしまった事に気付き、
トーコの方へ手を伸ばす。

「大丈夫だよ、トーコ。係員が迎えに来るんだから」

「そう……だよね」

頼りないトーコの声を頼りに手探りする。

多分、今の僕はヘッピリ腰だ。
この瞬間、灯りがついたら恥ずかしい思いをしただろう。

でも、そうはならなかった。
それどころか、進行方向から、人が大勢 近づいてくる気配がした。
目を凝らしてみたが、はっきり見える訳ではない。
が、かなりの人数だ。

あっと言う間に、悲鳴と言うか、怒号のような声を上げて、人が押
し寄せてくる。
これは避難ではない。人々の様子は、どこか狂気じみている。

僕は、混乱する人に押されて、転ばないようにするので、やっと
だった。

電気が消えたくらいで、こんなに怯えているなんて……。
いったい、何が起こっているんだ?

人の激流に流されるまま、僕は森の入り口――乗車口まで戻さ
れた。

暗がりを滅茶苦茶に走ったものだから、あちこち、ぶつけてしまっ
たようだ。
が、ここには、ちゃんと係員もおり、森の中よりも幾分明るいので、
気も楽になっている。

「痛ぇ~、ひどい目にあった。トーコは、平気だっ……あれ」

見回したが、側に、トーコはいない。

「トーコ?」

疲労と恐怖で座り込んでいる人の間を歩きまわり、トーコを探す。

「トーコ!」

ケータイを取り出して、短縮ボタンでトーコの番号を出す。
が、電源が入っていないのか、トーコにはつながらない。

まさか……まだ中にいるのか?

「トーコ!」

森の戻ろうとした僕を係員が遮る。

「通してくれ。中に、トーコが、連れがいるんだ!」

「係りの者が中を見ております。お客様は、こちらでお待ち下さ
 い」

「でも!」

これ以上、仕事を増やすなと言った顔で、係員が僕を見る。
僕が変に騒いだ所為でスタッフが集まり、もう強行突破も出来そ
うになかった。

僕は、渋々引き下がり、ケータイを掛けた。

トーコ。出てくれ。
祈るような気持ちでボタンを押す。

“どうか、お近くにいる大切な人の手をお離しにならないように……”

そんな事、分かってるよ。

“お近くにいる大切な人の手を……”

五月蝿い。静かにしてくれ!

“大切な人の手……”

どうして……僕は、トーコの手を離してしまったんだろう。

目の前が暗くなる。
いとも簡単に絶望を感じている自分に、僕は怒りを憶えた。

僕は、ケータイを持った手を振り上げて……でも、降り下ろす
事はなかった。

まだだ。諦めるな。
トーコは無事に決まってる。きっと中で迷子になっているんだ。

今、唯一つなげる事が出来る絆に、僕はもう一度向き合った。

他のルートから続々と客が避難してくる。
それを尻目に、何度もトーコのケータイを呼び出し続けた。

森からの避難者の何人かが、半狂乱になって何か叫んでいた
が、僕の耳には、もう届かなかった。

 ・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・

サトルとトーコは、逸れてしまいました。

避難時に、パニックになって、走り出すのは危険です ^^;



新青ガチャが始まりました ^^

前回のとんがり帽子が まだ出ないのですが…… ^^;

新ガチャのアイテムを装備すると、微妙な感じになりますねぇ~ ^^;;

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2009/10/28 21:21
>蘭花さん
 はぐれたトーコが何処にいるのかは……次回で ^^
 彼女はマイペースなのですが、人並みには怖がっていると思います。
 でも、暗い所、高い所、狭い所が嫌いではないので、その点においては
 冷静でいられるんじゃないかと。
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2009/10/28 21:16
>スイーツマンさん
 乗り物に乗った所までは繋いでいました。
 手を離したのは電気が消える前。乗り物が止まって安全用のバーが上がった所です。
 サトルが手を繋ごうと伸ばしかけた所で、パニックに陥った人に押されて、乗車口
 まで戻されてしまいました。
 トーコは、受身なだけの女の子ではないですから、大丈夫だと思いますよ ^^
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2009/10/28 10:46
さて、トーコさんはどこで迷子なんでしょう?気になります。
非難時こそ冷静に対応と・・・と言いたいところですが難しいですよね。
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2009/10/28 02:04
たしかにゴキブンさんがおっしゃるように手を離したら、こういう場合、女の子は阿修羅の形相となり、破局へとむかいます。(断言)

いつもコメントありがとうございます。
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2009/10/27 22:14
>ゴキブンさん
 トーコは意外とノンキなので、彼女が怒るとすれば……う~ん、何だろ??
 今は、迷子の迷子の子猫ちゃん~♪ 状態ですから心細いでしょうねぇ。
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2009/10/27 21:31
ええ、えらいこちゃです。
後で何言われるか心配です。




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