Nicotto Town


藍姫の本棚♪


苺と桃と。 ~森のクマさん?~ (11)

<Side.桃子>

……いったい何が起こったの?
押し寄せる黒い流れに押されて、木の根元に しゃがみこんだ私
は、気がつくと一人きりになっていた。

何度か、呼んでみたけれど、近くにサトくんはいないようだ。
ここにいないと言う事は、群集に押し流されてしまったのだろうか。

手探りしながら、乗り物の所まで進む。
と、木々の影に幽かな光が見えた。非常用の出口を示す緑色の
光だ。
あそこからなら、出られるかもしれない。

私は慎重に足を進めて……人の呻き声を聞いた。

「誰? 誰かいるんですか?」

「……うぅ」

黒い塊がゆっくりと動く。
どうやら、熊……のように大きな男の人のようだ。

「あのぉ、大丈夫ですか? もしかして、怪我してるんじゃ……」

「オ前ハ、誰ダ。アイツノ仲間カ?」

イントネーションが少しおかしい。
方言……とも違うみたい。もしかして、外国の人だろうか。

「私は、ただの客です。それより怪我をしてますね?」

うずくまっている男の人に手を伸ばす。
が、彼は片手を上げて私の動きを制した。

「タイシタ怪我ジャナイ」

「歩けますか?」

「イヤ、俺ハ、モウ……クッ、来ル!」

その人が緊張する。
何が来るのだろうと、私は訳も分からず、辺りを見回した。

「あの……」

「早ク逃ゲロ」

「え?」

「アノ扉ハ駄目ダ。線路ニ沿ッテ行クンダ」

「貴方を置いてはいけません」

「俺ノ事ハ、イイカラ行ケ!」

切羽詰った声で怒鳴られて、私はビクリと震えた。でも……。

「わっ、分かりました。係員を呼びに行きますから。気をしっかり
 持ってくださいね」

私は、言われた通り、線路を逆走する事にした。

暗くて よく分からなかったが、あの人は、きっとひどい怪我をし
て動けないんだ。一刻も早く誰か呼びに行かないと。

足元の線路と、点在する乗り物を目印に、私は走った。

ふと、場違いな曲が脳裏に過ぎる。

森、熊。もりの……くまさん。

違う。さっきの人は人間だった。
それに、ここは、花咲く森の道ではない。

でも、消しても消しても、その歌が浮かんでくる。
しかも、なぜか、あまり陽気な感じではない。

なぜなら、逃げろと言われて逃げると、くまが後から追いかけて
きて、女の子を食べ……違う!
そんな歌じゃないし、そんなはずないんだから!

「あっ」

私は、根っこに足を取られて転んでしまった。

痛さよりも、背中に感じる視線に、私は混乱した。
私と怪我をして動けない男の人以外、誰もいないはずなのに。

怖い。誰か……サトくん、助けて!

私は鞄を探って、ケータイを取り出した。
ディスプレイは暗い。ここに入る前に電源を切っていたのだ。
震える手でボタンを押す。と、直ぐに電波を着信した。

「サトくん!」

『トーコ?! 大丈夫か? 今、どこだ』

「森、森の中。サトくんは?」

『僕は、最初に乗り物に乗った所だ。怪我、してないか?』

「うん、大丈夫」

サトくんの声を聞いている内に、幻の視線は消え、私は落ち着き
を取り戻していた。

『今、そっちに……頼むよ。行かせてくれ。トーコが中にいるん
 だ。おい、離せって!』

電話口で、サトくんが誰かと言い争っている。多分、ここの係り
の人だろう。

私は立ち上がり、でも、後ろを振り返らずに、歩き出した。

「サトくん」

『トーコ、心配するな。今、そっちに行ってやるから……』

「私なら大丈夫だよ。今、そっちに向かってるの。だから、何か
 話して。声を聞かせて」

『……ん、分かった』

サトくんと他愛のない会話を交しながら、私は、やがて、見覚え
のある場所に辿り着いた。

ここまで来れば、機械を使わなくても声が聞こえるだろうと、私
は、ケータイを通さないで大切な人の名を呼んだ。

「サトくぅん!!」

制止していた係員を振り切って、サトくんが線路に降りてくる。

「トーコぉ!!」

私の視界は涙で霞んで、直ぐに何も見えなくなる。
フラフラ歩きながら手を伸ばした私を、サトくんがしっかり抱きし
めてくれた。

 ・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・

う~ん、あの歌って何なのでしょうねぇ~ ^^;

クマに逃げろと言われて、追いかけられて、最後に歌うんですよ?

童謡には、裏がある物が多いですから、この歌にも何か深い意味

があるのかなぁ~って ^^;

兎にも角にも、サトルとトーコは合流できました。

もどかしい二人なので、結びつきを深める為に、もう一つの世界の

住人を登場させました。

そう言えば、出会いも、あっちの住人が……縁があるのかなぁ ^^;




寒さの為か、風邪の症状がなくなりません。

寒さ対策はしっかりしたいですねぇ (◡‿◡✿)

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2009/10/29 22:04
>蘭花さん
 まさに、森のクマさんです。あれは、奇妙な歌ですねぇ ^^;
 童謡は怖いです。童話も、子供向けとは思えない物が多いですよね。
 警戒心かぁ~。
 確かに、あんな怖い話を聞かされて育てば、危険に対する警戒心は
 育ちそうですね ^^
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2009/10/29 22:00
>ゴキブンさん
 トーコは、見えるし聞こえる人です。
 ロク達と同じ人種ですから、こう言ったトラブルに巻き込まれやすいの
 です ^^(だから、私が悪い訳ではないですよw
 流石に、我を忘れて人前でって事はないですねぇ~。
 抱擁が精一杯です ^^
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2009/10/29 10:31
トーコが無事合流できてよかったです。
童謡は恐いものが多いですね、特にグリム童話とか・・・(汗)
あれは子供に警戒心を植え付けるものなのでしょうかねぇ。
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2009/10/29 01:37
おお、クマにトーコを逢わせるために
二人の手を引き裂いた藍姫さんは
罪なお人どす。
でも、トーコとサトくんが抱き合った
ので、藍姫さんはイキなおひと、ですわ
そのまま、あついブチューだともっとええのに。
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2009/10/28 22:52
>スイーツマンさん
 怖いですよぉ。何がしたいんだクマァ~!
 とおりゃんせも不気味ですよね。あと、かごめかごめとか ^^;

 クマは、実物も怖いです。
 クマは臆病だと言いますが、戦力で考えたら圧倒的に向こうが上ですしねぇ ^^;
 それに、北海道の小学生は、屯田兵が人食い熊に食い殺される話を歴史として
 習います。だから、今でもクマは猛獣だとインプットされているのですよぉ。
 もう、トラウマです。クマですが、トラウマになります。

 遺跡調査は命がけですね ^^;
 近づき過ぎないようにご注意ください。
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2009/10/28 22:01
 前に漫画で目にしたネタ。
「森の熊さんの唄」
やっぱり「とおりゃんせ」と同じくらい怖い唄ですよね。
あなたもいっしょに「とおりゃんせ」
 昔、群馬県の遺跡調査で県境の村に行ったとき、プレハブ事務所をつくってもらっていたとき、窓をのぞき込むような格好で熊の足跡がついていました。びびりましたねえ。それからそこで2ヶ月調査しました。一人で事務処理するときは、熊よけにラジオはつねにつけてました。




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