Nicotto Town


藍姫の本棚♪


退魔除霊師 ~モクボ~ (5)

ふっと一息付いた時、外界は、濃紺を幾度も塗り重ねたような
ミッドナイトブルーで覆われていた。
大学の敷地内は外灯が少なく、闇も深いのだ。

今は……午後九時二十分?! もう こんな時間なの!

集中していた時は気付かなかったが、体は猛烈な空腹を訴え
ている。教室の時計が故障した訳ではなさそうだ。

もう少しだけ手を加えたかったが、こうなった以上は、体を騙し
きれないだろう。

それに……モデルはもう必要ない。
わたしは、絵の中から わたしを見返す獣を見て、そう判断した。

あまりロクくんを拘束すると、彼の母上に心配をかけてしまうしね。
そう思ったら、笑いが込み上げる。

ロクくんの母上――風子《フウコ》 小母さまは、過保護な事で有
名なのだ。

風子小母さまは、その昔、退魔除霊師をしていたのだが、ロクく
んが生まれたのを期に仕事を辞めたのだとか。

退魔除霊師の元締めである榊《サカキ》 家の人間だった風子小
母さまは、当然の如く、優秀だったと聞いている。

惜しまれつつ、突然の引退。
風子小母さまは、ロクくんと妖かしとの係わりを絶ちたかったの
かもしれない。
妖かしを身に宿したロクくんは、幼い頃から強い力を持っており、
最年少で退魔除霊を行ったらしいから。

今は、その神童振りを発揮する事もなく、このエリアにいる五人
の実行部隊の内では、一番格下になるのだけれど……。

ロクくんは、優しすぎるのでしょうね。妖かしに対しても。

と、感傷に浸っている場合ではないわね。
後、一息で完成なのだから。

とりあえず、ロクくんと一緒に出て、夜食を買って来ないと。

「ねえ、ロクく……あら」

見ると、黒い犬の姿のまま、ロクくんはすっかり寝入っている。
暖を取るように、妖狐の兄弟も一緒に寄り添って。

それは奇妙で、でも、微笑ましい光景だった。

不思議ね。気持ち良さそうに眠る彼らは人外のモノ。
なのに、どうして、こんなに幸せな気持ちになるのかしら。

今まで考えていた事はすっかり頭から消え去り、わたしは、迷わ
ずスケッチブックを手に取っていた。

私が、再び我に返ったのは、十時を回った頃だった。



 


「ごめんなさいね。こんなに遅くまで」

「別にいいって。オレの方こそ、途中で寝ちゃって、ごめん」

「ふふっ。いいモノ、見させてもらったから気にしてないわ」

仲間達にも、幸せのお裾分けメールが出来たしね。

「うぅっ! そ、それより、タチさん、一人で大丈夫か?」

コンビニの前で別れようと思ったのに、ロクくんは「大学まで送る」
と言い張った。

「平気よ。すぐ、そこだから」

「女の子の夜道の一人歩きは危険だよ」

年下の、しかも、昔からよく知っている男の子に “女の子” 扱い
されるのは、妙に照れくさい。

でも、わたしは、真正面からロクくんを見上げた。
ロクくんの “それ” は、風子小母さまの教育の賜物であって、特
別な物では……あら、ロクくんって、わたしよりも背が高いのね。

この子、いつの間にこんなに背が伸びたのかしら?

「タチさん?」

「! わたしは、ロクくんの方が心配よ。風子小母さま譲りの可愛
 い顔してるんだから、絶対に変なのに絡まれるわ」

「かっ、可愛いって……。それに、絶対とか言われても……」

「じゃあ、こうしましょう。わたしが、明日の仕事が始まるまでイチ
 ローを預かる。イチローがいれば、暴漢の一人や二人蹴散ら
 せるわ。ね、問題解決でしょう?」

『わ、我が秘武……兼光殿と?!』

ロクくんの左肩に乗った妖狐が ――誇張ではなく本当に――
飛び上がって、転げ落ちた。
と、同時に、右肩のニローと頭の上のサンローが安堵の溜息を
つく。……失礼ね。

「そうだな。それなら安心か」

『犬神よ。我は不安で一杯なのだが……』

「え、何が?」

無礼者は無視して、わたしは「ロクくん」と話に割り込んだ。

「明日は、夕方六時に待ち合わせましょう」

「? 退魔除霊するには早いんじゃない?」

「今日のお礼。夕食をご馳走するわ」

「え、マジで?!」

「後で連絡するわ」

「うん、分かった。じゃあ、また明日」

角を曲がって見えなくなるまで、何度も何度も振り返っては手を
降るロクくんに、わたしは、笑みを零していた。

 ・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・

小太刀にとっては、ロクは手のかかる弟と同じ ^^

まあ、実弟の小鉄は、中学生なんですけどねぇ ^^;

私の先輩には、年下の方がいいと言う方がおりまして……。

小太刀のような姐御肌の女性ですけど、ふと年下が見せる 男らしさ

みたいな物にキュンとするのだとか ^^

要するに先輩は、小太刀のモデルです。




新青ガチャ、背景が華やかですねぇ~♪

でも、苦戦しそう ^^;

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2009/11/28 23:04
>藤名瑞希さん
 女性の先輩がいると出くわします。
 同級生にはいなかったですねぇ~^^;

 人には優しく、女性には特に優しく……が、風子さんのモットーw
 無意識プレイボーイw
 そうかもしれない(●^ ^●)
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2009/11/28 22:47
姉御肌の女の人にはあんまり会ったことないなぁ…とか思います(´・ω・`)
工業系だし…むしろ女の子がいないし…w

ロクは八方美人なのかなぁ…w
無意識プレイボーイな気がw
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2009/11/27 22:28
>スイーツマンさん
 えぇ、そうなんですか!
 先輩が変わっている訳ではないんですねぇ ^^;
 先輩曰く「男の方が寿命が短いんだから、年下の方がいいの!」って ^^;;
 うぁ~、怖いよぉ~、先輩ぃ~って思っていたのですがアリなのかなぁ~。。。
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2009/11/27 22:19
多いですねえ年下のご亭主というのが。
うまくいくかないは年上年下は関係がなく、お互いがどれだけ合わせられるか(相手の身になるか)のようです。
かくいう私は19歳独身(設定) (←まだいうか)




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