Nicotto Town


藍姫の本棚♪


退魔除霊師 ~ヒミコモリ~ (6)

「何だかなぁ~」

と、口に出してしまったようだ。
隣にいた柄佐が「何が?」と尋ねてくる。

「何でもない……」

「そっか……」

ぼく達は、長い長い神社の石段の一番下に並んで座って
いた。
ぼくも柄佐も、かれこれ30分近く、ただ空を見上げて時間を
潰していた。それと言うのも……。

例の紙について、六郎太さんと話し合っていた姉さんが、完
璧にサジを投げたからだ。

曰く「これは人の仕業ね。神社に行きなさい」と。

真ん中に一文字、赤い色で “返” と書かれた紙は、どうやら
何かの術らしい。
が、妖怪には、こんな面倒な手続きを必要とするモノはいな
いのだとか。

つまり、犯人は人間と言う事になってしまう。
姉さん達――退魔除霊師――は、生きた人間には退魔も
除霊も施さない。
勿論、人間は、妖魔や幽霊ではないから、当たり前なのだ
が、そうすると、相手がどんなに凶悪犯でも、人間であれば
スルーすると言う事になる。

ぼくは、姉さん達の術とやらが、人間には効かないのだとは
思えない。

以前、姉さんを起しに行って、寝ぼけ眼で術を打ち込まれそ
うになった ぼくとしては、力があるのに使わないのは納得い
かない話なのだが……。

「おれの感じてた変な気配って、やっぱり妖怪じゃなかった
 んだよな?」

「まあね。姉さんが言うには、人間の仕業らしいよ。でも、大
 丈夫。ここの神社の人は話の分かる人だから、姉さんより
 頼りになるよ」

まあ、月黄泉神社の偉い人は、姉さんや六郎太さんよりも、
退魔除霊師としての格が上なのだから間違ってはいないけ
ど、ね。

でも、姉さんに「わたしは予定通り、画材を買いに街に行くか
ら」と冷たく言い切られてしまった時には驚いたよ。

呆気の取られた ぼくに「ツカっちには、オレが付いているか
ら大丈夫」と、六郎太さんは言ってくれたけど……。

流石に、無関係な六郎太さん一人に押し付ける訳にはいか
ないだろう?
これって、結局、姉さんの筋書き通りになってしまったんだろ
うな。複雑な心境だ。

六郎太さんが、神社で紙の事について聞くと言うので、ぼく
達は、ここで待機している。

二人に付いてきたのはいいけど、やはり、ぼくに出来る事な
んてないんだよな。
いや、でも、柄佐の話し相手になることくらいは……。

「柄佐は誰かに恨まれたり、妬まれたりする憶えってある?」

「そんなの分かんないよ」

「まあ、そうだよね」

柄佐が ムッとしてる。ちょっと失礼な質問だったかな。
怨みや妬みなんて、知らず知らずの内に買っている物だし。

「なあ、小鉄。ロクって助手の人が持っていた紙って、魔法の
 道具だったのか?」

「そんな大層な物じゃ……え、あの紙、見た事あるの?」

「いいや、ないけど。気持ち悪いよな」

柄佐の顔が、不安で かげってきた。
落ち込ませてどうするよ。

「大丈夫だよ。今までも気配程度だった訳だし、そんなに悪
 意のある感じでもなかったからさ」

「その内、攻撃されるかもしんないだろ?」

「え、いや、まあね」

ああ、柄佐が益々落ち込んでいく。

「でもさ、呪いなんて専門家じゃないと扱えないし、大体、そ
 んな すごいヤツが近くに……」

「なんで?」

「え?」

「なんで、呪いは専門家じゃないと扱えないんだよ」

「それはぁ……あれだよ! 人を呪えば穴二つ!」

柄佐が不思議そうな顔になる。
通じていない。話を端折りすぎたか。

「それはね、ツカっちぃ。呪術に限らず、人の力を超えた事
 をしようと思えば、必ずリスクを負う事になるからだよ?」

「?!」

いつの間にか、直ぐ後ろに、六郎太さんが立っていた。

六郎太さんは、座っている ぼく達の横を通り過ぎると、くるり
と こちらに向き直った。

「特に呪いは、素人が手を出すと必ず痛い目を見る。手順
 を間違えたとか、息が掛かってしまったとか、唾が飛んだ
 とか。本当に些細な事で自分自身に跳ね返って来るんだ
 よ。ねぇ、こてっちゃん?」

ぼくに確認を求めるように、六郎太さんがニヤニヤと笑いな
がらウィンクする。

「そ、そうなんだよ。しかも、呪詛は破られると掛けた相手に
 帰るんだ」

あれ? と言う事は、昨夜、妖狐が紙を捕まえた時点で、仕
掛けた相手に、そのまま術が跳ね返ったんじゃないのか?

「妖怪探偵団の諸君。とりあえず、この紙を仕掛けた張本人
 に会いに行こう」

「ええ?! 相手が分かったんですか?」

六郎太さんは、返事をする代わりに、得意げに胸を反らす。

柄佐は、眉をひそめた青白い顔で、ただ黙りこくっていた。

 ・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・

やっと犯人(?)とご対面です ^^




明日は、友達とミニ同窓会w

早めに来て、ステプは駆け足になると思います ^^

アバター
2009/12/30 22:08
>ゴキブンさん
 やっと対面します ^^;
 彼女と言うか、ロクの本命ですねぇ~。
 まだ付き合っている訳ではないですよぉ ^^;
 アッキーは相変わらずですw
 劇中は まだ6月。実は彼女の誕生月なのですよ ^^
アバター
2009/12/30 09:19
犯人と対面、人間か妖怪か?
次読みます。
ところで月黄泉神社といえば、ロクの恋人が
いたようないないような。
アッキーは、お元気ですか?
アバター
2009/12/29 17:14
>3スカーラさん
 次回で、紙を仕掛けた相手が登場します ^^
 彼が何でこんな事をしたのかは、まだ語られそうにないですけど ^^;;
 字数制限、難しいです。
アバター
2009/12/29 17:11
>スイーツマンさん
 おお、なるほどぉ~ Σ(゜o゜ノ)ノ
 昔から、やられた やり返すと言うのが、一般的だったんでしょうか ^^;

 少しニコ回りをして、これから出発です ^^
アバター
2009/12/29 14:57
さっそく相手がわかってしまったのですか。
次回は対決?
出だしの二人ののんびりした様子から、急に話が展開しましたね。
アバター
2009/12/29 06:01
「式返し」

仕返しってここからくるのかなあ?

仲良しとのミニ同窓会、楽しみですね。




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