Nicotto Town


藍姫の本棚♪


退魔除霊師 ~ヒミコモリ~ (9)

「意味が全然分からないんだけど……」

ぼくが素直にそう言うと、六郎太さんが「うん。そうだよね」と
苦笑した。

「オレも完全には分からないからさ。とりあえず、日神子守く
 んや。ツカっちの呪縛を解いてくれよ」

「……分かった」

パチンと、少年が指を弾く。と、柄佐の額の紙は、ひらりと地
面に落ちた。
紙には“縛”の字が浮かんでいる。

「ツカっち、話してくれるだろう?」

「……」

柄佐は無言で立ちつくしていた。
また少年に向かっていくんじゃないかと心配したが、どうやら、
そんな元気はないようだ。

「話さないつもりなら……」

少年術士は、紙を放とうと手を上げた。
が、六郎太さんが「大丈夫」と遮り、柄佐の前に回りこんだ。

「自分で話せるよな?」

顔を上げた柄佐が、首を縦に振るのが見える。
溜息でもつくように、柄佐は話し始めた。



 


「二週間ほど前、家で見た事のない本を見つけたんだ。黒い
 絵本だった……」

普段、本など読まない柄佐だったが、その本の異様な雰囲
気には興味を持った。
真っ黒い表紙に、金色の文字でこう書いてあったのだと言う。

『まほうつかいになろう!』

何の変哲もない絵本だと、ページをめくるまでは思っていた。
最初のページを読んで驚いた。まるで自分の事を書いてい
るようだと思ったのだ。

「ごく普通の主人公が、ある日、魔法の本を手に入れるんだ。
 でも、最初は、そんな都合のいい魔法なんてないって思う
 んだ。おれもそうだった」

半信半疑の主人公は、手初めに同級生の何人かに魔法を
使ってみる事にする。

ある時は、紙で作った人形に“名前と呪文”を書いて、そいつ
の鞄の中に忍ばせた。

ある時は、粘土で人形を作り、そこに相手の髪の毛を入れて
写真を貼り、木に釘で打ちつけた。

柄佐も同じように試してみた。
家に一人でいる時間も長いし、ほんの遊びのつもりだったの
だと、柄佐は言った。

効果は……あったのだと言う。
柄佐が魔法をかけた相手は、病で学校を休んだり、怪我をし
たりした。

柄佐は怖くなり、同時に優越感を感じていた。
自分の力で、嫌なヤツを消してしまえる、と。

でも、まだ偶然と言う事もあったので、本の中の主人公と柄佐
は、もう一つ、魔術を試した。

それは、箱の中に生きたまま動物を入れ、土に埋めると言う
モノだった。

「家に適当な箱がなくて、薬の入っていた瓶にしたんだ。小さ
 な瓶に入るような生き物はそんなにいなくて、結局、川で捕
 まえた まだそんなに大きくなっていないカエルを使った」

その対象が、たまたま少年の友人だったと言う訳だ。



 


「この学校で奇妙な事が起こっていると、うちのボスに依頼が
 来てね。ボスは、まず、神社に妖怪絡みか確認した」

「それって、十日ほど前だろう? アッキーが……いや、晶《アキラ》
 さまが“妖かしの影なし”と答えたと言ってたよ」

「だから、ボク達にお鉢が回ってきたんだ」

「なあ、おれ、どうしたらいい? 呪うつもりなんてなかったん
 だ。これが呪いだったなんて思わなかったんだ」

「心配ないよ、ツカっち。そう簡単に素人が呪いなんて掛けら
 れる訳ないじゃんか。でも、カエルは瓶から出してやろう」

柄佐は、目に浮かんだ涙を零す事なく、しっかりと頷いた。

瓶をどこに埋めたのか指し示し、やっと肩の荷が下りたように
大きく息をついた。

六郎太さんが、花壇の隅っこを掘り返し、瓶を見つける。
中には、動かなくなったカエルだった物が入っていた。

「日神子守、これを探してたんだろう?」

「そうだよ。でも、まあ、そっちで何とかしてくれる? そう言う
 のは管轄外だ」

「分かった。あ、そうだ。ツカっち、黒い本はどうした?」

柄佐は「消えたんだ」と言って、小さく震えた。

「カエルを埋めた後、怖くなって、もしかすると、主人公もそう
 じゃないかって思って、どうするつもりか読もうと探したんだ
 けど、どこにも なかったんだ」

「……ツカっちを信じるよ」

「退魔除霊師は お人好しだね。でも、人は専門外か」

少年は止める間もなく、紙を柄佐に飛ばした。
おそらく、話”か、言”か、文字が書かれているのだろう。
が、直ぐに「嘘は言ってないね」と肩を竦めた。

「ま、今回の事は全部、忘れてもらう。それでいいよね、退魔
 除霊師?」

 ・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・☆・・・

あと、数話で終われそう ^^




それ以前に、もうこんな時間に。。。

今日も駆け足で失礼します (◡_◡ ;)

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2010/01/02 21:24
>ゴキブンさん
 柄佐の才能と黒い絵本の力です ^^
 彼は、そんなに深く考えずにしてしまったようです。

 蠱毒《コドク》と言う呪詛に近いですかねぇ。
 ジワジワと死に至らしめる事により、その生き物の怨念を相手に向けます。
 本当の所、恨まれるのは殺した術者本人なので、上手くやらないと自分に
 返ります。穴二つです。
 一般的(?)には カエルではなく、毒のある生き物や、怨念の深い生き物
 (犬や猫)を使うそうです ^^;
 ゴミトは、しない方がいいですよぉ~ ^^;;
 防御する方法がないと、自分もやられちゃいますから。
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2010/01/02 11:13
なるほど。です
柄佐少年にそんな力があったとわ。
「こりゃまた、おどろきだ~」です

ところで、カエルの呪縛は、どんな効果があるのかな
ゴミトも効果によっては、真似するかも。でした
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2010/01/01 19:54
>3スカーラさん
 世の中には、知らなかったでは済まされない事もありますよね ^^;
 大人でも子供でも、自分がした事には責任を取るのが 人としての義務なのかなと
 思います。
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2010/01/01 19:50
>スイーツマンさん
『恐怖新聞』は怖いですよね (◡_◡ ;)
 自分には祟られる理由がないのに、なぜこんなに目に遭うんだろう……
 と言った嫌な感じを与えるのが ホラーの基本です。
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2010/01/01 09:50
人を呪うつもりはなくて、たまたま手に入れた知識を使って見たかっただけ……
ネット社会の負の側面を思わせる展開ですね。
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2010/01/01 02:15
あらら『コ毒』、『恐怖新聞』のようなものもある。『式』までいるからその筋のフルコースですねえ。




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