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9話 飛び込め! 黒間さん

 ……まさかコイツ、男色!?
 悪魔の答えに対し、大神は思う。
 予想外の答えであった。
 悪魔が人間を捕食するというのは、異能の力を扱う者ならば常識のように知っている。
 だが、性欲の対象として人間を見る悪魔の例は一部例外を除いてほとんど無い。
 ましてや、同姓を対象とした悪魔など、聞いた事が無い。
 そこまで考え、大神は一つの答えに辿り着く。
 ……性欲の対象として人間を攫う例外の悪魔は、サキュバスやインキュバス。
 その解答に辿り着いた大神は、一つの叫びを上げる。
「この淫乱ガチホモインキュバス! お前なんかにクロは渡さない!」
 そこには幼馴染をこんな淫乱変態鬼畜悪魔に渡してなるもんかという決意が込められていた。
「お前……その男の力に気づいていないのか?」
 だが悪魔は言う。淫乱ガチホモインキュバスであることは否定せずに。
 大神はその言葉は此方の集中を逸らすためのものだと判断する。
 だが、悪魔の言葉に一つ引っかかるものがあった。
 ……力と言えば、クロのお父さんとお母さんは魔法使いの血を引いてたはず。
 しかし黒間の両親は魔法の才能は受け継がなかった。
 そして黒間自身も、大神が子供の頃には魔力を一切感じさせなかった。
 だから悪魔の言葉はでまかせだと判断し、行動に移る。
 まずは勢いをつけ、手近なビルの壁に飛び掛る。
 壁への着地は両足からする。
 足を壁につけ、そして前屈に近い姿勢になる。
 そして足をバネのように伸ばし、反対側の壁へ向かい飛び立つ。
 それを繰り返し、高く、更に高く上空へと向かう。
 路地裏と言う両側に壁のある狭い空間であり、なおかつ大神が高い身体能力を持つ人狼だったからこそ可能な行動だ。
 大神は壁を蹴り上昇を続ける。
 ビルの屋上が近づく。
 大神は壁を蹴り反対側のビルの屋上に向かって跳ぶ。
 降り立つのは、屋上にあるフェンスの上だ。
 その僅かな足場に降り立ち、大神は悪魔へ向けて最後の跳躍を開始する。
 やる事は今までとは変わらない。屈み、そして一気に足を伸ばし跳躍するだけだ。
 足場を蹴り、フェンスが震えるのが足に伝わる。
 その感覚を感じながら、大神はまた右腕を振り上げる。
 右の手の爪による斬撃を悪魔へ叩き込むためだ。
 だが悪魔も黙ってそれを見ているわけではない。
 狼の爪が届く直前、悪魔は一度羽ばたき距離を取る。
 大神の腕は直前まで悪魔のいた位置を空振りする。
 隙のできた大神へ向け、悪魔は動作を開始する
 右脚を高く顔面まで上げる。
 狙いは大神の右肩。そこへ踵落しを繰り出し、地面へと叩きつける。
 それが悪魔の考えだ。
 悪魔が、ふ、と息を吸い、その直後、
「――!」
 その一撃は大神の右肩へと直撃する。
 それを受けた大神は、真下への落下を開始する。
 だが落下を開始するとほぼ同時に、左腕を足へ目掛け突き出す。
 そして左手ては悪魔の足を足を掴み、そして
「――っ!」
 足へ爪を食い込ませる。
 硬く厚いそれは、悪魔の内部へ食い込み、肉を突き破る。
 しっかりと足を掴んだ狼は、悪魔の残った左足から蹴りを入れられる。
 蹴りは頭部を、右肩を、掴んだ左腕を痛めつける。
 頭部を蹴られれば意識は消えかけ、右肩を蹴られれば先の一撃の痛みが増し、左腕を蹴られれば掴んだ手の力が弱まる。
 だがそれらを無視し、大神は右手をズボンのポケットに突っ込む。
 中を漁り、数枚の紙を取り出す。
 それをしっかり右手で持ち、肩の痛みに耐え、腕を上へと振り上げる。
 振り上げた腕は、掴んだ右脚へと当たる。当たる直前には手を開き、紙を貼り付けるようにしていた。
 紙を貼り終えた大神は、左腕を離し下へと落ちる。
 落下しながら見えるのは、悪魔の右脚が爆ぜる光景だ。
 落ちながら思うのは
 ……なんとか、勝てたかな。
 相手が空を飛ぶ以上、地上でしか戦えない大神には勝ち目が薄い。
 ならば接近し、なんとか相手を掴みあの紙を貼り付けるしかない。
「護身用にお札を持たせるなんて過保護すぎるって思ったけど、意外と役にたったなぁ」
 あの紙は、魔力を込められた札だ。
 効果は爆発。本来なら足が消し飛ぶほどの威力は無いが、何枚も同時に貼り付けたことであれだけの威力が出た。
 さすがに右脚を失えば、悪魔も一旦退くだろう。
 そう思い、大神は落下に身を任せる。
 ……もう、着地するだけの余力も無い。
 後は打ち所が悪くないようにと祈る事しかできない。
 そして大神の体はどんどん高度を下げて行き。
「んぐっ」
 軟らかい物にぶつかった。

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