新月の空 2
- カテゴリ:自作小説
- 2012/03/10 22:53:02
「貴様っ……よくも部下を!」
「あぁん? 汚ねぇ手段で金稼いでたんだ、文句はねぇだろう?」
全員殺されたってな。と、女は部下達を殺したと宣言する。女は右手で柄を持ち剣を地面に立てていて、その刃からは紅い雫が垂れていた。
部下達は死んだ。つまりもう逃げても大丈夫なのだと理解すると、子供達は出口へ向かい駆け出す。溜めていた感情を吐き出すかのように言葉にならぬただの声を発しながら。
「待て、ガキ共!」
子供の逃亡を許すはずもなく、ボスは近くにいた子供に手を伸ばす。人質がいればある程度は身の安全を確保できる。
しかし救い手側も人質を取られる気などない。襲撃者は二人いた。女ではないもう一人が阻止するために動いた。
「……!」
ボスは反射的に飛来した物を短剣で弾き飛ばす。魔法か矢か、と考えたが弾けたのだから矢なのであろう。
――ガキに当てずに俺を狙うとは、かなりの腕の持ち主か。
だがもう一人の方は未だに姿が見えない。姿を隠す魔法と矢の軌道を変える魔法を同時に使用しているのであろう。
姿を隠すとなると、それなりに高位の魔法だ。動きながらは使用できまい。よって、不可視の敵が直接首をナイフで掻っ切ることはないと思っていい。
だが見えないというのは、かなりのアドバンテージだ。どの位置から撃つのか、どのタイミングで撃つのか、それが分からないのは痛い。。
下手に背を向ける事すらできない。少しずつ後退りしてできるだけ距離を取り、タイミングを見計らって全力で身体強化をして逃げる。背を向けた時に何発か喰らうかもしれないが、それでも逃げ切れるだろう。
「おい、俺と一緒にこの仕事をしないか? 今回はなかなかの稼ぎになるぜ? なんてったって"時空魔術師"がいるんだからな」
「はぁ? 何言ってんだよテメェ。ギルドの名を売るためにここを潰しに来てんだ。ハナから金なんざ興味ないね」
これに乗ってくれれば僥倖といった程度ではあったが、金に興味ないというのは気になる。ギルドとは、簡単に言ってしまえば会社のことだ。ならばその目的の一つに金稼ぎはあるはずだ。
「金に興味がないのなら何がしたい? 有名になった後、どう行動するつもりだ?」
「どうするか、だって?」
女は呆れたかのように言う。なぜ当たり前のことすら理解できないのだと、暗にそう言っている。
ボスは神経を逆撫でされた気分になるが、憤りはしない。下手に行動すれば切りかかられる可能性がある。二対一と分が悪いのだ。戦闘は避けるべきだろう。
女は空いている右腕を胸の高さまで上げ、握っていた五指の中から人指し指だけを立てて言う。
「有名になれば多くの情報を仕入れることができる。
多くの情報が集まれば、悪いやつらのことも耳に入る。
アタシ達の目的は――悪の組織を根こそぎ壊滅させることだ!」
劣化版潤さんにならないように気をつけなければいけないですね……。
だけど最後の台詞はちょっとクサい感じがしますねー。
上手い人なら最後の台詞すら格好良く書けるでしょうし、自分の能力の低さを感じます……orz
姐さんったら凄い!