Nicotto Town


小説日記。


くじ引き勇者さま。【不真面目小説】




# - 0 / 1 当たりを引きました。



 古い伝説がある。
 世界には魔王を討ち滅ぼすための4つの宝があり、その宝を守る村がどこかにあり、その村で生まれた、選ばれし者の紋章を持つ17歳の少年少女が勇者として旅立ちの日を待っている。
 どんな村だかわからない。どこにあるのかもわからない。そもそもあるのかもわからない、という——聞きようによっては根も葉もない噂話。
 だが、どの村も我が村こそは勇者の以下略と名乗りを上げ、近隣の城から庇護を受けようと躍起になっている。
 伝説もクソも無い。
 勇者も現れない。
 魔王も仕事をさぼって何もしない。

 そんな、夢も希望も無い世界の片隅。

 北にあるとある山奥の村で、勇者が選ばれた。


 ——くじ引きで。






「頑張れよ勇者」
 親友だと思っていた友は馬鹿にしたように言った。

「たくさん儲けてきてね」
 片想いの幼馴染みは満面の笑みで言った。

「死ぬんじゃねーぞー」
 父はたばこをふかしながら興味なさそうに言った。

「絶対に戻って来るんじゃないよ」
 母はいつになく真剣な顔と声で言った。


 こんな世界のために、僕は剣をとるのか。
 魔物に立ち向かうのか。
 何も悪さなどしていない魔王を倒しに行くのか。
 
 何のために?
 ……決まっている。
 全ては村のため、村長のため。
 村長の言うことには絶対に逆らえない。父と母の言うことにも。

 まあ、少しくらいは感謝したほうが良いのかもしれない。
 友と幼馴染みの本性を知れたし、何より、この外界から閉ざされた山奥の小さな村から脱出できる。
 将来は農夫になるしかなかった運命から解き放たれるのだ。
 たとえ村から出てすぐに死のうと決められた定めを覆せたことに変わりはない。
 まず何をしに行けばいいだろう。
 あと3人の勇者も探そうか。
 でもどこに?
 どうやって?
 こちとら所詮レベル1程度の雑魚キャラだ。
 ストーリーに何の影響ももたらさないただのNPCキャラだ。
 剣なんて握ったことさえない。
 持ったことがあるのは雑草を刈る鎌くらい。
 盾なんて無い。
 鎧も無い。
 着ているのは麻で作られたチュニックくらいのもの。
 所持金、10円。

「……うん。行ってきます、父さん。母さん」

 僕は旅に出た。
 とりあえず南に行ってみよう。




*****


ノリがゆるいですよね。
一応最後までシナリオは考えましたがちゃんと形になるかどうか。

ではまた。





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