Nicotto Town


小説日記。


消えた空唄【短いの何個か】

# - 魂の味


 死ぬのは怖かった。

「……ぁ……、ッ……」

 出そうとした声が掠れ、喉に小石を詰まらせているようだった。
 気が狂いそうなほどの寒気、真っ白に塗り潰されていく感覚、思考、感情、記憶、思い出。
 墨汁が染みるように穴だらけになった視界に、最期に映った彼の顔。
 ただ、暗闇が広がる。
 溢れ出すように視界を覆った漆黒に呑まれて、意識が濁流に押し流されていった。
 泡のように消えた台詞は、台本から逃げ出した。

「――――あ……、」

 彼が、何か言っているのが聴こえる。
 けれど台詞までは聞き取れず、少女は最後の息を吐き出し、目を閉じた。

【落ちた露】

「お前さ、自分の考えとか無いの」
「……」
「ただ従って何でも利いて、それは忠実なんかじゃないだろ」
「……」
「またそうやって、殺すのか」

【ユニコーンの角】

 激しく上がる火の手に照らされて、二つの影が長く揺らめく。
 飛び散る火の粉が、灰と共にふわりと舞い上がった。

「……満足したかい」
「ああ」
「けど、君の復讐は終わらないんだろう」
「……まだ、一つ目だ」

【復讐の復讐】

「どうして!?どうして諦めるの!?貴女が私を呼んだのは、命に換えても復讐したい人が居るからでしょう!?」
「生きてる人全てが妬ましいと思うくらい、世界中の何もかも恨めしいと思うくらい、貴女が復讐に焦がれている姿が何よりも美しいのに!」

「諦めたなら、貴女はイラナイ」

【鳥兜】

「……ごめんなさい、来るのが遅くなってしまって」

 供えた花束が夏の熱風に煽られ、少女の雪のように白い髪を揺らした。
 髪に合わせた真っ白なワンピースが、良く似合っていた。
 外れた首輪と鎖の冷たさが、今は少しだけ恋しい。

「私、19になったんですよ」

 少女は間もなく、女性になるだろう。
 嬉しそうに、どこか哀しそうに、彼女は微笑む。

「私、貴方が居ないと何も出来ない」

 次に発された台詞は、震えていた。

【黒百合の花束】




*****

トカバレ4:言ロン1

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2014/06/21 00:13
人間以外、己を殺める霊長類は
いないからな・・。 うむ。



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