Nicotto Town


小説日記。


Am I a bat girl? 【短編?】

【注意】 エロ・グロと思しき表現あり




「 僕が愛してあげる、独りぼっちの君を、僕だけが愛してあげる 」




 自分の両の手を改めて見たとき、ようやく自分の罪を思い出した。
 幾人もの血に濡れた真っ赤な手。切り忘れた長い爪の間に入り込んだ、ぬるっとした感触。
 ここはどこだ?
 どうして平然とパソコンに向かって、冷たい牛乳で溶かせるココアを飲んでる?
 急に甘さが舌を痺れさせ、付け根を締め付ける。

「……、」

 美味しくない。
 静かな部屋。
 扇風機だけが、ぬるい風をひたすら運んだ。

「…………」

 眉間に寄った皺が自然と深くなる。
 面白かったはずの動画は、急につまらなくなった。
 五つ窓をしていたブラウザを強引に閉じた。

「………………、」

 暗い待ち受け画面に反射する自分の顔は酷く歪んでいる。
 片肘で頬杖を突いた。もっと醜く見えた。

 確かに自ら手を下したわけじゃない。
 けれどもそうやって「自分じゃない」と言い訳しているだけだなんて、自分が一番良くわかっている。

「――――私がやりました」

 然るべき場所に立ち、罪を吐いた。

「私をころしてください」

 けれども罰は下されない。
 全てが虚言として泡になる。
 精神鑑定に出されて、精神病院に送られると脅された。
 何度も何度も「私がやった」と言ったのに、みんな信じてくれないから。

 ころした。

 全部、ころした。
 逃げて、ころして、家まで帰った。
 パパとママはもう居ない。

「……誰でも良いから」

 誰でも良いから、私に罰を頂戴よ。

「おかえり」

 立ち尽くした玄関の奥、カーテンの隙間。
 薄暗い廊下から、声がする。
 優しい声。私を甘やかす声。

「だから言ったのに」

 誰も信じてくれないよって。

「だいたい君はさ、それを罪だって言うけど、誰にも理解できないなら、それは罪って言えるの?人を殺すのって、そんなに悪いこと?」



 雨の降る日。
 家の周りは吃驚するほど静まり返って、全てが深い海の底に沈んでしまったようだった。

「君が殺したんだ」

 テラスに腰掛け、冬の冷たい雨が降り注ぐのを黙って見ていた。

「君のせいだ」

 声は私を責め立てる。
 背中にあるのは温もり。耳元で甘く囁き、両腕は私の身体を包み込む。
 光を映さない瞳の中の世界は酷く色あせて見える。
 波紋のように広がる血飛沫だけが、いつまでも視界に残って鮮やかに反射し続ける。

「……なら、私を殺してよ」

 頼りなく揺らぐ。
 発した声はあまりに情けなく、今にも泣き出しそうだった。
 誰かに裁かれないと意味がない、自分で死んだら意味がない、自分で死ぬ勇気もない、クズだから。

「出来ないよ、だって僕は君だから」

 抱きしめる腕が更に私を縛り付ける。

「罪は君を逃がさない。だから、僕も君を逃がさない」

 群青色の髪が柔らかく頬を撫でた。
 顔を向けると超至近距離で交わる黄色い視線。どこまでも深く、呑み込んでしまう優しさに捕われる。

 子供でもない、大人でもない、大人になりたくない、年を取りたくない。

 今のまま、ずっと、永遠に。

 でも叶わないから、いっそ。

「――――ん、っ」

 唇が触れる。
 差し入れられた舌が口の中を、心の中まで掻き回す。
 ぐちゃぐちゃと混ざる唾液は血の味に染まる。
 口の端から溢れた露が喉を伝う。熱くて、冷たい。
 私は拒まない。
 漏れる吐息が白く、宙に消えていっても。

 何もない、一面真っ白な部屋に押し倒される。

 弾ける水音。
 響く嬌声。
 誰もが共感する〝いい歌〟の下に眠る、強迫観念に似た意思の操作。
 私の罪。
 私は悪くない。

 そう、私は。

「っはぁ、あっぁ……、く……」

 感情の奥底に潜む無意識の壁。
 無理やり暴かれた花園を浸す夢の残り香。
 私の罰。
 私が欲しいもの。

 だから、私を。

「――――」

 流れた赤が、床に広がる。
 白は赤に、壁を塗り替える。
 真っ赤な天井から滴る真っ赤な雫が、覆いかぶさる群青色の髪をも染める。
 毛先から垂れ、頬に落ちた生臭い液体は滑りを帯び、どろりと身体を洗った。
 黄色い視線は交わり続け、ただ互いを映し出す。
 瞳の奥、記憶の海に沈んだ目覚めを思い出そうとする。

 ツギハギだらけの死神が笑っていた。
 気づいたときには傍に居て、周りの邪魔なもの、全てを切り刻んだ。
 なのに血に濡れるのは私、私だけ。

 私じゃない。

 私は悪くない。

 でも、邪魔だと思ったのは、わたし。

 意識が溶ける。
 黄色い目だけが焼きついて、真っ赤な部屋は真っ黒な部屋。

「――――独りぼっち」

 わたしは、独りぼっち。

「独りじゃないよ」

 ぼくが、愛してあげるから。


*****


殺人は重罪です。

【作業のお供】
・罰ゲーム / 初音ミク・GUMI
・Alone in this World / 平田志穂子
・Fate in our Hands / Lotus Juice

【あとがき】

ぼくはなにが書きたかったんだろう

あ、そうだ 新しいツイッターのアカウントを紹介します
@kamase_16 です 恐らく一ヶ月に一度今まで使っていたアカウントに戻る程度で、ずっとこのアカウントを使用すると思います
もし私と何らかの繋がりを持ちたいだとか思ってくださったら一言添えてフォロしてください
連絡を取るだけなら別にフォロしなくても良いので見なかったという事で大丈夫です

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2014/08/19 23:14
>糾蝶さん

すみませんでした……美味しかったです……
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2014/08/19 23:13
冷たい牛乳に溶かすココアって完璧にただのお前の好きなものだろ、いい加減にしろ



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