Nicotto Town


小説日記。


αシリーズのメモ【キメラ】

αシリーズ開発責任者 薬師神鏡子の手記の一部

・αシリーズ

 個体別にギリシャ文字の記号を当てはめたキメラである
 αから順に製作予定だったが変更
 2種の有蹄類+1種の肉食獣、または新たな動物の配合
 愛玩用、観賞用に開発予定?←肉食獣を配合する必要性?

 2種の有蹄類と1部の少女の遺伝子は高い親和性を見せた
 ただし、限られた少女のみである
 その特徴は未だ分かっていない


×月×日 雨天
 雨だ。色盲になってから数日だが、雨が降ると視界が悪い。
 そろそろ眼鏡の替え時かもしれない。

×月×日 雷雨
 雨が止まない。南国特有の荒れた気候には慣れたつもりだったが
 雷は苦手だ。もし停電でもしたら……(文字が掠れている)

×月×日 嵐
 今日は一段と酷い。研究室の窓ガラスが割れてしまった。
 ρにひとまずダンボールで塞がせておいたがまたすぐにダメになってしまうだろう
 この隠れ家はまだ誰にも見つかっていなかったが、早めに移動すべきだろうか

×月×日 晴天
 ようやく嵐が去った。研究室の床は水浸しだ。
 外も酷い有様だ。研究者時代なら皆と掃除でもしていたところだが
 今は追われている。もっとも、誰に追われているわけでもないが

×月×日 ?(文字がかすれている)
 新しい研究所を見つけた。
 ここは凄い、まだ誰にも荒らされていないし電気も通っている。
 φも呼んで掃除をしよう、ρの目を作ってやりたい

×月×日 曇り
 わたしは愚かだ
 もう少し早く気づいていれば
 いや、最初から気づいていたのに
 この島は(ページが破り取られている)

×月×日 雨
 また雨だ。ρとφには仕事を頼んだ。
 一人で退屈していたので仕方なく部屋の掃除をしていると、
 研究室の奥に酒造を見つけた。誰かの趣味だったのだろうか。
 酒なんて何年ぶりだろう。
 酔った感じが懐かしかった。嫌なことを少し忘れられた

×月×日 雨
 そう言えば、何に追われているのだろうと思い起こす
 かつての同僚か
 それとも吉塚壱斗か
 他のキメラ達か
 思えば誰からも恨みを買われる覚えがある。恐ろしいことだ
 生きているだけでこんなにも恨まれるなんて

×月×日 ?(ここから全て天候が書き込まれていない)
 またひと瓶ワインを開けてしまった。空き瓶はこっそり処分しているが
 彼女らには見つかるだろうか
 この島には娯楽が少なすぎる

×月×日 ?
 (日付のみで、内容が書き込まれていない)

×月×日 ?
 しまった。卓上カレンダーくらい、以前居た研究所から持って来れば良かった
 日付も曜日も分からないし、唯一生きている液晶モニターには監視カメラの映像しか映らない
 ここはクローズドサークルだ
 もし彼女らに見捨てられたら、満足に歩けもしない私はすぐに死んでしまうだろう
 しかし、これ以上生きたところで、島から出られる見込みはない
 無駄なあがき
 生きているのが無意味だと思うようになった

×月×日 ?
 無気力だ。何もする気が起きない。
 彼女らには島の探索を任せている。酒に溺れている姿を見られるのは嫌だと思えるうちは、まだ私はまともだと信じていたい

×月×日 ?
 軍事転用なんて!
 私に何をやらせるつもりだった?アイツらは
 私は違う
 私はキメラじゃない 私は人間だ私はわたしは
 私は(ぐちゃぐちゃに黒く塗りつぶされており、解読不能)

×月×日 ?
 家族。
 島の外。
 ρは覚えているらしい。私はいつこの島に連れてこられたのだろう
 彼らに才能を買われ、彼女のようにキメラに改造されるのを免れた
 神の悪戯にしては手が込んでいる。最初は玩具で遊んでいるようなつもりだったのだから

(ページが2、3枚まとめて破り取られている)

×月×日 晴天
 頭痛が酷い。朝になっても疲れが抜けていないのがわかる。
 いくら寝ても寝足りない。
 けれど、何もせずに毎日を過ごしている
 彼女らのおかげで島の全体像がようやく把握出来た
 手書きの地図が完成した
 今私たちが居るのは島の北北東だ
 分厚い森が私たちの研究所を隠してくれている

×月×日 ?
 して良いことと悪いこと
 誰も教えてはくれなかった。それとも、人の子ならば知っていて当然だったのだろうか?
 私は逃げているだけだと24にもなってようやく気付いた
 言い訳がましく今も生命を貪っているが、そろそろ潮時かもな

×月×日 雨天
 そうだ!私がしたいことをようやく思い出した
 このまま、ソファで寝そべってばかりいられない
 私にはしなくてはならないことがあったじゃないか

×月×日 雷雨
 久しぶりの悪天候だ。窓が揺れている。
 酒を飲むのは控えるようにした。φからの苦情が酷い

×月×日 雷雨
 二日続けての悪天候だ。今の今まで、何をしたかったのか忘れていたと言ったら
 私はφに殺されてしまうだろう
 
 復讐だ
 これからようやく始まる

 私は極悪非道な研究者ではない
 彼女らの味方なのだから

(日記はここで終わっている)


*****


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