幻想断片:石物語 <フーメ編>「シャトン」
- カテゴリ:小説/詩
- 2014/12/02 02:25:14
「フーメは、この部屋・好き?」
突然の言葉に、私は下を向く。
声の主は小さな猫。首を傾げながら、私を見上げる。
猫とは言ったが、「猫」ではない。
彼女はクリゾベリル・オ・クール・ド・シャトン。
「仔猫の心臓の金緑石」という名を持つ石であり、尚且つ金色の仔猫でもある。
差し伸べた私の手に、するりと顔を押し付ける。
その毛並みの艶やかさは、石のものでもあり、獣のものでもある。
我々が「人の姿を模した石」であるのとは、またひと味違ったものかもしれない。
抱き上げると、吸い込まれそうな緑の瞳が迫ってくる。
ほのかに金を帯びたこの色に魅入るのは、なかなかに楽しい。
「この部屋は、君たちには不向きのようだね」
私の居場所となっている書斎は、館の北側に位置していた。
書物の痛みを避け、思考する静寂を得るには良い場所といえるだろう。
まあ、足がついて手があって、
ドアを開けてソプラノを響かせる手合いを躱せるほどではないが。
「シャトンは、あたたかい、のがいいのよ」
言いながら、シャトンは暖を求めるように身を押し付けてきた。
言葉の通り、シャトンからは「お日様の匂い」がする。
「お日様の匂い」
思えば、不思議な形容だ。
だが、陽に暖められた猫の体の匂いを、他にどう例えればいい?
思わず口元がほころんでしまう、こんなやわらかい匂いのことを。
シャトンはまるで、冷えた私を確かめるように鼻を押し付ける。
しかし、湿った仔猫の鼻も、なかなかに冷たい。
「フーメは、もっとあったかい、部屋にいて」
「はいはい、Petite Fille(ちいさなお嬢さん」
やれやれ、次に「外」へ行ったら彼女たちのために、
ムートンのマットでも買ってきてあげようか。
「でもね、シャトン。
私はあまり長い間、太陽の下にはいられないのだよ。
私は煙水晶。太陽がとても苦手なんだよ」
「きらい? おひさま」
「嫌いじゃないよ。だけどね」
そう、これが私の弱点だ。
「長く陽の光を浴びると、白く変色してしまう。
煙が消えて無くなってしまうんだよ、シャトン」
ちょっと、真っ白になった自分というものを想像してみた。
透明か、あるいは白濁した結晶体。
いやもちろん、それはそれで美しいだろう。
だがそれはもう、私ではなく「白い水晶」なのだ。
- かつて、それを知った私の持ち主は、私を胸元から下へ納めた。
さらに昔、いまだ私が「私」ではなかった古い時代にも、
持ち主たちは私を日の元に晒すようなことはしなかった。
それでも私は知っていた。
この仔猫がもたらしたように、包まれるように柔らかな日差しのことを。
窓越しに眺める世界として、持ち主や回りのものたちから感じ取っていた。
だから、嫌いではない。
いや、好きだよ。
仔猫の緑の瞳は、私を見詰める。
私の言葉より、私の心を感じ取るように。
そして、言うのだ。
「フーメが好きなら、フーメは、おひさまに、会いにいくのがいいよ」
冷たい肉球を、私の顔に押し当てる。
「おひさまは、フーメをあたためる、のよ」
うん。うん、Petite Fille。
そうだね。そうかもしれない。
私たちは「宝石」と呼ばれる。
その根源は「色」に現われる。
私たちそれぞれを、各々「その名」につなぎ止める、それこそは「色」。
私が白くなれば、誰も私を「フーメ(煙」とは呼ばなくなるだろう。
しかし……。
私は、仔猫の匂いを嗅ぐ。
きっと、この子は気にすまい。
私が白かろうと、煙かろうと。
誰かは気にするかもしれない。「フーメ」とは呼ばれないかもしれない。
だが「そんなことはどうでもよい」。
仔猫は、抱き上げるだけでそう示してくれるのだ。
急にシャトンの耳が動く。
「フーメ、逃げるのよ」
「逃げる? なぜ?」
「シャトンは嫌い。追いかけてくるよ」
ふふふっ。
シャトンは猫だが、猫ではない。
言葉を解し、そして……。
- 《続きます・・・》
~ニコッとアバターでつくる絵本~
http://www.nicotto.jp/user/circle/articledetail?a_id=2301490&c_id=244198
宝石泥棒に盗まれて不思議な館につれてこられた宝石が自分の運命を決める、
シャトンかわいいなぁ(*´▽`*)
このキャラ ほんとネコっぽいね
この喋り方がすごく好きだー(*´I`)(´I`*)スリスリ
かわゆす肉球のぴとぺと感LOVEですね^^
ある意味煙のようにひっそりと繊細な世界を持っているのがにゃんこだったりww
それとも、魔女の宅急便のジジのように、ちょっと毒づきキュート系?
どっちもかわいいんだけど。
やっぱりお目メがシパシパしてちゃんと読めない(☍ω⁰ )
シャトン@nekoyama嬢は恥ずかしいらしいぞ☆
もうね 情景が目に浮かんで浮かんでね!
ちょっとたどたどしいシャトンの口調が 可愛いのなんのって!!!
ネコ好きにはたまらないですなぁ☆
ぬくぬくまで、伝わってきました。
あ、続くなのね...楽しみ♪
おおお、そうです!
北の静かな書斎は、きがねなく声がだせるので、お気に入りの場所でーす。
クッキー頼んでおいて下さいねー。
シャトンが逃げたいのは何故かしら。何方が追いかけてくるのか、楽しみです^^
ほのぼのする光景ですね。
我が家に猫さんはいませんが、猫っぽい娘(3歳)がおります。
彼女を天気の良い日に外に連れ出して帰宅後に抱っこすると
「おひさまのにおい」がします~。
「だっこ」とせがんできてもすぐにするりといなくなるんですけどね。。。
シャトンに「フーッ!!」ってされたらあの方は落ち込むでしょうね~。
スプーンをくわえてお兄ちゃん猫のとこまで
持って行ったそーです。
リアル・猫速報ww
だっこしたいけど、迷惑かな...って、追いかけられず遠くで見つめているフォルテです。
フーメさんに、ミミちゃんとシャトンさん用のクッキー預けますね^^
ス、ストーカーじゃないもんw
シャトンメッチャ可愛い!
萌え萌え~❤
シャトンはどこかで虎にもなっちゃうかもしれないw
そうです(`・ω・´)キリッ
例え逃げられてもその愛らしい姿を見るために
どこかの方は暴走するのですb
類似品の方でコメしちゃったww
もうひとつ別の理由があって、区切りました。
次は、猫を追い回す「あの方」が登場☆