Nicotto Town



花蝕〜外伝「Hidden」4

画像

【注意】この物語はフィクションです。
登場する人物・事柄は全てARCHMASTERです。
また、悪魔の階級、魔界の設定等、全てこの物語の中だけのものです。
ご了承ください。


   この話は、゚ღゆうなღ゚氏の魔界シリーズ「花蝕」のスピンオフとなります。
         「ゆうなさんの悪魔シリーズ 目次」 https://goo.gl/sGPglp

 

貴族の反乱が起こる度に名が上がってくるアグレアス公爵。
前魔王サタン41世陛下の御代では、魔界軍事局参謀部総管理官。
1万年ほど前の話だ。
当時クリスタルは、軍事局参謀部北部方面統括指揮官。
魔天戦争の最前線で戦っていた。


腕を組んでいたクリスタルの右手が、耳の穴をかっぽじる。
「そのアグレアス閣下が、どうなさいましたか?
 今度は天界にでも寝返ったか? あン?」
その苦々しい口ぶりに、アラストルはさらに苦笑する。
「当然、君は嫌いだよな。毎度尻尾が掴めない」
「いかにも黒幕然とした、あの澄ました顔が嫌いなんだよ」

同じ参謀部でも、相手は「一番偉い椅子」に座っていた。
直属だったわけではない。私的な付き合いがあったわけもない。       
古参の大貴族と、まだ若造扱いされる2万歳の平民士官だ。
特に知っているわけではないが、いい感情を持つ理由の一つも有りはしない。
ただ今だに、王宮での催しの度、姿を確認する「付き合い」があるだけだ。
サタン42世陛下の治世を守るために―――。

「その尻尾、ついに掴めるかもしれない」
苦笑を鎮めるためか、紅茶を口にした後、アラストルは静かに言う。
「今!?」
「今だから、かな」
紅茶を置き、アラストルはクリスタルと目を合わせる。
「北のかつての景勝地、貴族の別荘群のあたりで、
 大規模なリゾート再開発計画が持ち上がっているようだよ。
 あのあたりは元々、生活に困った貴族たちがアグレアス閣下に買い上げて
 もらっていたようだが、計画のために値が釣り上がって、
 今ではもう、ほとんどが閣下の土地なんだそうだ」



 4

夜の月も隠れる雨の中。
火使いの魔力の炎は、夜空の悪魔達を照らす。

機械馬は生身と違い、炎の前でおとなしく静止している。
ジシュカは馬車から身を乗り出したまま、上空を見つめた。

黒づくめのクリスタルは、目だけが異様に映える。
主の白髪は、雨に重く翼に張り付いていた。
そこまで見えても、交わされているらしい会話を聞き取ることはできない。


「これは、マスター・クリスタル殿か」
クリスタルの正面へ進んだアグレアスは、軽く頭を下げた。
クリスタルは応えず、アグレアスを見つめ続ける。
「何用かな? 急ぎと見受けられるが」
クリスタルの眉が上がったのを、アグレアスが見たかどうか。
炎で無理矢理馬車を止めて、のんびりとした会話を楽しみたい者がいるだろう
か?
広い世界にはいるかもしれないが、それはクリスタルではない。
アグレアスは笑った。
「いや、失礼」
しかしアグレアスは、その部類かもしれない。
クリスタルは顔をしかめる。
「―――あんたは、いつもそうだな」
かつての上司、大貴族、3倍を超える年長者に対し、出てきた言葉がこれだっ
た。
「王宮で目が合うと、いつも会釈してきたな。どういうつもりだ?」
睨まれ問われ、アグレアスはまた笑う。
「国家の英雄に払う敬意を持ち合わせているだけだよ」
ぶち・と、何かが切れた音がしたのは空耳だったか。
クリスタルは、大きく息を吸った。
「東の大領主様が、北のボロ屋敷を買い漁っているそうだな」
「ああ、その話か」
少し驚いたように目を開いたが、アグレアスの目はまた細く笑う。
「北は現在、国の直轄地だったな。
 陛下の統治のために不都合となるなら返上しても良いのだが、
 ―――そういう話ではないのかな?」
「そういう話にしておきたいのかな?」
「では、そういう話ではない話をしようか」
突然、アグレアスは手にしていた杖を放り投げた。
「北か、懐かしいな」


ジシュカは驚いた。
主が手放したことがない杖が降ってくる。
それは馬車からさほど遠くはないところへ落下し、鈍い音を立てた。


「あの戦いから、私は君に敬意を払っているのだよ、マスター・クリスタル」
先ほどまでの薄笑いとは違い、アグレアスの目は「笑っていない」。
「酷い戦いだったな、あれも。
 狂天使に歓喜した天使がバラバラになって降り注ぐ。
 それだけで、我々には猛毒だとはな。
 悪魔というのは脆弱な生き物なのだと思い知ったよ」
「10万歳が抜かしやがるぜ」
「そうとも。まだ100万年も生きてはいない」

あの戦い―――それが何を指しているか、クリスタルには判る。
1万年ほど前、黒龍族が守護する北の地を天使軍に蹂躪された時のことだ。
音もなくキラキラと、眩ゆい光が降り注ぐ。
生きながらに命を砲弾に変えた天使の塵は、魔界の生き物に貼り付き天界の気
を放つ。
それが、毒なのだ。
変異を認めぬ天界の気は、魔界の気を変異させんと暴走する。
性質を歪め、意識を撹乱し、錯乱させ―――抗うほど死に至る。
同士討ちの凄惨な血。精神を引き裂かれ上げる雄叫び。
剣にて裂かれる方がどれほどましか。爆風に散る方がどれほど楽なのか。

最後に、クリスタルの持つ四大精霊火竜サラマンドラの加護の炎が、天使軍を
焼き尽くし天界へ押し返した。
そうして戦いは終わり、北は廃墟と化したのだ。
アグレアスは、この時の負傷を理由に退役した。
体の片側、特に脚を痛め、以後は杖を持つことになる。

「北を恨んでいるのか?」
「まさか。だが、忘れ得ぬ地だね」
「だからって、テメェがちょっかい出して何になる!!」
「さあね。君に焼かれて諸共消え失せるのもいいかな。
 あの痘痕面のような光景が無くなれば、地獄はさぞやさっぱりするだろうね」
アグレアスは仮面を取った。
北での負傷以来公では外したことのない、顔の片面を隠していた仮面を放り投
げる。
その顔を見て、クリスタルは息を飲んだ。
それと同時に―――

「ジシュカ、出ろ!!」
主の叫びを聞き、慌ててジシュカは馬車を飛び出した。
雨を切り裂く高音は口笛なのか。
同時に機械馬の甲高い嘶きが空気を震わせた。
音の反響の中、訳が分からずにいるジシュカは、舞い降りたアグレアスに抱え
られて宙に舞う。
目指す先には、ムゥに支えられるように浮かび上がった魔法陣。

「あンの、クソジジイーーーーーーーー!!!!」
クリスタルの叫びが、ふたりが消えた雨空に響いた。




to be continued…


キャスト(敬称略)
ジシュカ nekoyama
クリスタル クリスタル
アラストル ショパン
アグレアス Pal


 ◆ ◇ ◆


ニコッとタウン 過激団ARCHMASTER 5〜6月イベント
花蝕×ARCHMASTER「士官学校編協賛作品

イベントの詳細は、ARCHMASTERファンクラブサークル
「ジュー・ド・プペ」 https://goo.gl/ZTMpN3 にて(誰でも閲覧可能。


イベントは終わっちゃいましたが( ´ ▽ ` :)ノ
まだ続きます。
すごく長くなるのか、
それとも案外サクッと終わるのか、
書いてみないとわからなくなってきましたよ( ´ ▽ ` :)
無理ない程度に続けていきますので、
無理なくお付き合いくださいww


アバター
2017/06/17 04:09
ああこれ、
シュティレ嬢の故郷のやつだよ。
アバター
2017/06/17 00:43
うみゅ~

こんな魔天戦争もあったのかぁ(´ω`*)。o○

魔界の歴史に疎かった(ノ∀`*)ペチ

大河ドラマなみに1年連載してくださーい(=^ω^=)ノアイッ!
アバター
2017/06/15 22:08
魔界でも、色々な確執があるみたいですね~。
何万歳も生きていても、
嫌いな奴は、やっぱり嫌い・・・水と油のごとし(汗)
アバター
2017/06/15 02:27
いや・・・デビルイヤーとデビルアイで、
夜の雨でもけっこー見えるし、
ふつーに会話ができるだけなんだけど・・・
アバター
2017/06/14 22:13
すわ対決だ!と思いきや、、、歴戦の知れ者どうしがテレパシーかなんかでお話し中なんですねw
アバター
2017/06/14 21:33
いろんな悪魔の人生を変えてしまった戦いだったのですね…。
悪魔の脆弱さを思い知った、が、それで打ちのめされて終わる閣下ではなかった。
ということなのかなぁ。

>不思議…敵は敵なりに正しく見えてきちゃう
正義の反対は別の正義、と言いますしねぇ。と横レス。
アバター
2017/06/14 21:27
マスター・クリスタルVSアグレアス公爵
平民と貴族、直情型と熟慮型、全く正反対でしょうねぇ。
なんか、結構長編になりそうな気配がする~
アバター
2017/06/14 20:26
なんだか怖い展開になって来ちゃった!
どうなっちゃうの〜?><
アバター
2017/06/14 20:26
へぇ 狂天使に歓喜した天使がバラバラになって降り注ぐ ってシーンいいね
悪魔の側だからあまり天使の世界には興味を持ったことがなかったが
そういう戦い方をする彼らの文化も面白そうだよ

さて、マスター・クリスタルを翻弄するアグレアス閣下の物語の続きやいかに
一年くらい連載が続きそうだね!
アバター
2017/06/14 20:20
なんだ。なんだ?
どういう展開になるのか、ぜんぜん、読めません
何をしたいんだろう??
続きは?^^
アバター
2017/06/14 20:17
不思議…敵は敵なりに正しく見えてきちゃう(●´艸`)
マスターの手に負えなさそう。実力行使じゃなくて知能戦だと…
アバター
2017/06/14 17:44
むむむ ( ̄~ ̄lll) 謎が増えてる…。いや… 最初から謎だらけな気がするけど。
そして、たまたま めっちゃ良いトコロでブッちぎられている。

Pal さーーーん (っω`-。) 次ーーーっ

マスターがちっちゃいコ に見える (*≧m≦*) ぷぷっ
実力行使! 真向勝負! というならマスターにも勝ち目がありそうだけど…
相手にもしてもらえなさそうwww
こういうアタマの良いタイプが相手では、マスター、さぞやストレスたまるだろうw

東の大公が、何を考えているのか… 何を思って動いているのか、
最後の最後には解るのでしょうか。。。

謎のまま姿を消したり… しないでくださいねーーーっ。 ← ものすごく心配w
東の大公爵アグレアス閣下ぁぁぁ! お願いしますよーっっっ
アバター
2017/06/14 16:32
老齢の大貴族と、若い平民のバトル物の感じが……w
立場だけでも相容れなさそうだし、性格も合ってないよねw

書いてみないと分からないっての、本当にそうだよw
うちの外伝も4話に収めたけど、最後は前後編になったし、①と②だけで
もっと膨らませられたのにな~とか今更な事を思っております( ´艸`)ムププ



月別アーカイブ

2020

2018

2017

2016

2015

2014

2013

2012

2011

2010


Copyright © 2024 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.