Nicotto Town



ディレイニーのSF言語論

The red sun is high, the blue low.

こんなセンテンスが読者をどのように異界に誘うのかを一語ずつ分析しているのが、
サミュエル・R・ディレイニーの『約5750語』というエッセイ。
SFマガジン1996年8月号の伊藤典夫訳で読みましたが、
原著は60年代末の講演を基に、70年代初頭に書かれたそうです。

6万語の小説とは59999回の修正を通して完成した一枚の絵であるという捉え方。
音楽におけるインプロヴィゼーションの対極にある作曲家的発想であり、
ギャビン・ブライヤーズが即興をやめて作曲に向かった理由に通じるものも感じる。
コンセプチャルアートが鑑賞者に対して働き掛けるうえでの技術論とも読める。

いっぽう『仮構性』という単語でSFの独自性の一つを説明しています。
「ドアが広がった」という一文はリアリズムならナンセンスであるし、
ファンタジーならありえようが、SFでは字句通り本当に「広がる」のだという解釈。
ボルヘス等の中南米リアリズムに通じる気がしてコレも面白い。

未だに面白くて読み返します。興味のある方はご一読のほどを。
なお、このSFマガジンを当時新刊で買った動機は……
『新世紀エヴァンゲリオンの世界』という特集だったことを白状します。恥ずかしや。





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