Nicotto Town



好きな5冊(おなかの減るお話)

1、心が二つある大きな川 (ヘミングウェイ)

第一次大戦の復員兵、ニック・アダムズを主人公としたシリーズの一作で、
ロスト・ジェネレーションの代表作の一つだと思います。

さて、これは(1)(2)二つの短編からできてまして、
(1)にはポークビーンズとスパゲティの缶詰をフライパンであたため、
トマトケチャップをかけ、冷めるのを待ってパン4枚と共に平らげるシーンがあります。
(2)ではそば粉のパンケーキを焼き、りんごジャムを塗って食べた後、
薄切り玉ねぎをパン(おそらくライ麦)に挟んだだけのサンドウィッチを作り釣りに行く。
うーん、男のキャンプ料理はこれでなければならぬ! 偉いヘミングウェイ。
キャンプに行ったらぜひスパゲティを真似たいと思っているものの、
缶詰を買うのをいつも忘れて未だに実現せず、私にとって幻の料理です。

2、イワン・デニーソヴィッチの一日 (ソルジェニーツイン)

暗黒時代のソ連、なぜ捕まった分からぬまま極寒のラーゲル(強制収容所)で
3653日の刑期を務めた善良な農夫の一日を描いた作品です。

ビスケット一枚、ソーセージ一切れを食べる描写も素晴らしいけど、
白眉は屑キャベツ等の野菜と小魚を煮ただけのバランダーという野菜汁。
終盤、主人公は幸運にも二皿のバランダーにありつきますが、
これを味わうシーンを読むと、無性に熱いスープが飲みたくなる。
読んだ後、刻んだベーコンと冷凍のミックスベジタブルを炒め、
固形コンソメと塩で味付けしたスープをよく作るようになりました。
これを家族は『収容所スープ』と呼んでおります。

3、ヘッド・ハンター (大薮春彦)

ハードアクションの代表作家だった大薮が新境地に突入したころの作品。
元傭兵の主人公がひたすら単独行ハンティングに明け暮れる。
アクションシーンもありますが、キャンプ好きなら必ず楽しめるエンターテイメント。

主人公の杉田淳はアウトドア料理の達人で、秀逸なレシピがそこら中に出てきます。
カリブーの腿肉に黒熊の脂と水、玉葱、ジャガイモも入れて煮込み、
パセリとセロリと調味料を加えたあと、飯盒に小分けして狩りに出かける。
途中で寒風と雹に襲われ、岩棚の下に避難して寒さに震えながら、
このシチューを沸騰させ、唐辛子エキスをぶち込んで木のスプーンで食う。
やってみたい。食べたことないけど黒熊の脂というのが素晴らしく食欲をそそる。

蛇足ですが、大薮晩年の『アスファルトの虎』シリーズの主人公は
納豆、茹で野菜、五穀米など健康志向になったのをご存知でしょうか?

4、謀殺のチェスゲーム (山田正紀)

『神狩り』『弥勒戦争』などで名を挙げた若きSF作家が、
またも世間を驚嘆させた傑作アクションです。
ゲーム理論を基本にした情報戦と、工作員の死闘のバランスが絶妙で、
『図書館戦争』の情報戦やアクション部分が好きなら楽しめるでしょう。

さて、一方の陣営の戦闘担当、佐伯という陽性の大男が傑作です。
シュワルツネッガーが大食いになったごとく、常に腹を減らしている。
食堂でカレーとカツ丼を頼んでJKに笑われる序盤からスタート、
札幌ではとうもろこし5本齧った直後にジンギスカン3人前、
軽く飲むために入った小さなバーでラーメンとホッケと焼肉と野菜サラダ。
サービスエリアではピザとココアを喰いながらミートサンド5人前をテイクアウト。
明らかに大薮への敬意をこめたパロディ、読むと外食したくなるのです。

5、アラカルトの春 (O・ヘンリ)

短編におけるどんでん返しの巨匠、『最後の一葉』が有名です。
原題は Springtime A La Carte 。
都会に出てきてようやくタイピストの仕事にありついた若い娘が、
献立表を前に泣いています。卵料理にタンポポが添えられているからです。
なぜ? と思った方、できればお読みください。納得できると思います。

ヒロインのサラのお仕事は、
21のテーブルをもつレストランのメニューを打ちかえること。
ディナーは毎日、朝食とランチは時期に応じて。
この作品、メニューの持つ季節感というものを凄く伝えてくれるのです。
上記4作と理由は異なるのですが、この短編を読むと、
街の小さな洋食屋に出かけて季節のメニューを鑑賞したくなります。

食いしん坊なので、食べ物エッセイの類も大好き、試したこと数知れず。
そのうち小出しにしたいと思います。

アバター
2014/05/10 10:45
>rihitoさん

こんにちは。いつも朝のコメントしてくださってるのに伺わずゴメンナサイ。

ヘミングウェイはかなりハマりました。仰る通り、自然と対峙してるときの描写がカッコイイんです。
現在は新訳が出ていますが、古い新潮文庫で読み込んだため、逐語的な訳文で覚えてしまいました。
「これがアメリカのハードボイルドな文体なんだな……」と勘違いしたまま今に至ります。
福田訳の『老人と海』で、loud aloud を「大声でいった」と訳していますが、
確かに漁師さんって声がデカイし独り言も多いから、私のサンチャゴ像と一致してしまったんです。

ダイキリが流行ったとき、パパ・ヘミングウェイ特集をやる雑誌が多かったですね。

開高健や椎名誠の
アバター
2014/05/10 10:21
ヘミングウェイの小説では、マス釣りの描写が実にきれいですね。確かバッタを餌にしていたかな。料理も詳しくかかれていると、お酒にしてもカクテルが多かったかな。とにかくカッコイイですよね。



月別アーカイブ

2024

2023

2022

2021

2020

2019

2018

2017

2016

2015

2014


Copyright © 2024 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.