Nicotto Town



巡るピンク・フロイド『ナイルの歌』を訳す。


転調を繰り返す曲のことを考えているうち、フロイドの『ナイルの歌』を聴きたくなった。
聴いた。世間がピンクフロイドと考えているものには、こういう基底面だってあるのだ。
合わせてギターを弾き、わめく。小一時間続ける。永遠に続けてもよい。

この曲の歌詞も好きです。象徴詩みたいでいくつか解釈の方法がありそう。
古代エジプト的な意匠を切り捨てて、混迷し病んだ現代人がナイル川を目にしたら、
忽然と啓示を受けたという解釈が好み。画家クレーがチュニジアで受けた衝撃と同質。

そこで訳してみたくなったのですが、『モア』は手元にない。検索すると数種出てくる。
2番の冒頭とか、4番の末尾が違っている。うーん、どれなんだろう。まあいいか。
逐語的に訳してみましたが、窓のあたりがうまく処理できないのが悔しい。

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私はナイル川のほとりに佇んでいた。
微笑むその女性を見た時、
暫しの間、彼女を連れ去りたいと思った。
暫しの間だったのだ。

啜り泣く赤子の如く涙が流れる。
彼女の黄金の髪は見事に風に翻っていた。
そして彼女は飛翔のために羽を広げた、
飛翔のためにだ。

そよ風に彼女は高く舞い上がり
常に意のままに飛び続ける
彼女は島を目指すのだ、
太陽の内に在る島を。

彼女の影を私は追い続ける、
窓から彼女が見えるのだから。
いつか彼女の瞳を捉えるまで、
捉えるまで。

彼女が深淵から呼んでいる。
常世の眠りから私の魂を召喚するためだ。
彼女は必ずや私を引きずりおろすのだ。
引きずりおろすのだ……。

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全然ジャンルは異なるが『最終兵器彼女』や『イリアの空 UFOの夏』の先祖かも。
『ライブ・アット・ボンベイ』は見たのですが『モア』は見ていない(恐怖映画嫌い)。
映画音楽としてでっち挙げた仕事の曲かもしれないけど、傍若無人さが凄い。

A→B→D♭→E♭→F→G→A……という転調を延々繰り返すのもよい。
ロジャーのガラガラ声、ギルモアのブルース屋気質が十全に出ているのもよい。
既にいないシド・バレット的な何かが木霊してる気もする。ナイル川ってこういう川だろう。




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