Nicotto Town



無法バンドマン 音の商標登録に悩む。


特許庁が今月から運用し始めた、音や色などの商標登録。
正露丸の会社がラッパのメロディーをさっそく登録したらしい。
グリコの会社もグ・リ・コのフレーズを登録。さて、こりゃ困ったことになった。

ヘッポコギター弾きの私は完全独学、耳で覚えて練習してきた。
どんなにオリジナリティを追求しようが、あらゆる先人の偉業に影響を受けている。
ヘボな演奏を録音され分析されたら、そこら中が名手、名曲の模倣、剽窃。

楽曲(主に歌メロ、インスト)は著作権対象でしたが、フレーズはお目こぼしされてた。
チャックベリーの有名なフレーズを初めとして、シグネチャーリックは山とある。
これらをミュージシャンが競って商標登録したら……どんなことが起きるか考えた。

私のヘボライブ中、いきなり背広の客が立ち上がり演奏中断。
「実は私、特許庁のものです。あなたの演奏は大勢の商標登録を侵害しています」
ステージに上がってきて、スマホで隠し録りしていた我が演奏をプレイバック。

「まずイントロ部分の白玉ボリュームペダル、ビル・フリーゼルですね?」
いや、俺はヤン・アッカーマンのつもりだったんだけど。世代の差だな。

「それから付点八分ディレイのシーケンス、間違いなくU2ですな」
いやいや、それはマニュエル・ゲッチングのつもりだぞ。エッジは好きじゃない。

「さて旋律の導入部です。このクロマチック、ホールズワースのパクリですね」
ワーイ、分かってくれてアリガトー。ちょっとだけウレシイ。

「その後のスクイーズタイプの音色はアルバート・コリンズ、フレーズは阿部薫」
音色はロイブキャナン、フレーズはアイラーのつもりだったが、まあ近いな。

「そしてインプロヴィゼーション部分、音色が全面的にクラプトンに依存してますね」
そりゃそうだ、59タイプのハムを球アンプにつなげば似るのは仕方ないだろ。

「アウト感に関しては各部でスコフィールドの商標を侵害してますね」
え? そこはアレアのパオロ・トファーニの暴走シンセのつもりだ。断固異を唱える。

「後半のネックベンドとアンプへのギター押し付けは……モントレーのジミですね」
いや、俺はピートタウンゼントのつもりだったが……まあ似たようなもんだ。

「さて、以上5分の演奏の商標侵害の慰謝料合計予測は以下の通りです」
電卓に表示された金額はゼロがひとつ、ふたつ、みっつ……ウヒャー!

……架空の話なのか? いやいや、おそらくこういう世の中になるんだろうな。
ミュージシャンが争って自分のフレーズを商標登録する。侵害されたら金よこせ。
ああ素晴らしい21世紀。音楽学校の最初の授業も商標権の講義とテストから。

金と経済と権利が絡むと、常にこうした話になる。あーバカバカしい。
政治経済人権を一切顧みぬ無法者の私、今後もスタイルを変える気はない。
腹が立つから最後に6行だけ毒づいて終わろう。

専門家と素人を区別する唯一の定義は歴史認識の差である。
専門家は自己の携わる分野の歴史を熟知せねばならず、
自己の作業が如何なる歴史背景の上に成り立つか自覚して、発展させる。

専門家はあらゆる先人の作業から影響を受け、そこからの飛翔に生命を賭ける。
自らの仕事の価値は金銭ではなく、歴史として残るか否か、それだけである。
こうした道理の分からぬ馬鹿共は『創造』という営みに一切関わるな。




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