Nicotto Town



内部配線とアートワーク


配線や配管というのは立派なアートであり、またビッグビジネスでもあります。
革新的な理想と、経済最優先のやっつけ仕事の壮絶な格闘の現場でもあります。
自治体の送電にしろ屋内配線にしろ、新旧アートの混在が興味をそそります。

半日かけて1982年製のギターアンプを修理しました。
質実剛健な60年代製、技術革新の進む70年代製と比べると趣が深い。
時代の波を明らかに受けた内部配線に関し、頼まれもしないのに報告しましょう。

まず、この時代の製品はマーケティングが進み、他社の動向や流行への反応が早い。
ビジュアル的外観重視、小型化優先も顕著。ウォークマンがバカ売れした頃ですね。
またコストダウン意識もはっきり出ています。質より量の薄利多売のスタート。

いっぽう、信頼性の高い旧世代のユニットを流用している部分もある。
こうした新旧思想の混在が、外からは分からない混沌を生み出しております。
以下は電子工作マニア向けの表現ばかり、分からない方ゴメンナサイ。

まず、ベークライト基板の電源部とパワー部がそのまま流用されています。
プリアンプ部分は新設計のエポキシ基板。直付型ポッドを採用したタイプ。
この2つが微妙に整合性が取れておらず、よけいな引き回しが散見できます。

さらに。入力部分に外付抵抗を空中配線、なぜ基板に入れなかったのか不可解。
入力を基板の中央部まで引き回す配線というのはメーカー製で久しぶりに見た。
動作表示用LEDは、筐体に直付して基板実装後にハンダづけするというサーカス。

エポキシ基板上のコンデンサは全て縦型、ところが平滑コンデンサはチューブラー。
しかもトランスや整流ダイオードからの配線が基板裏に来ており、スペーサーかましてる。
シャーシーと電源部配線面の距離は5ミリ弱。これは怖い。

同じく旧バージョンのパワー部、ベークのジャノメ基板に組まれている。
コンプリペアのパワートランジスタはシャーシー直止め。
放熱板を省略することになったんだろう。いかにもやっつけ仕事に見えます。

入力切替スイッチはなぜかシーソー型採用、これは平ネジで固定するタイプ。
電源表示のネオン管とともに先に実装、その上から表示部の化粧版を接着。
おかげで非常に整備性が悪い。外見のみを重視したことが原因です。

70年代の製品は理路整然としており、分解も比較的楽なのですが、
この時代のものには現代に続く使い捨て文化の萌芽がみられます。
実装現場の苦労が思いやられる。ハンダ付けの技術もかなり落ちている。

……失礼しました、熱くなってしまいました。かいつまんで言いますと、
「昔の佳い技術が新世代の経済感覚でダメになっていく」好例なのです。
設計しなおして完璧な形で出したかっただろう。でも4万弱の製品ではねー。

プリント基板の設計をアートワークと申します。昔は技術者が手書きで書いた。
今は回路設計が終わると自動的に生成するソフトが全盛。技術者はほぼ失業。
その結果、実装時のさまざまな問題に関して無知な製品もあるそうです。

ちなみに修理は成功、ほぼ完調となりました。このメーカーらしい良い音です。
新設計のプリ基板回路もなかなか秀逸、小音量でもしっかり使える優れもの。
今は亡きメーカーを偲んで、ギター繋いで深夜まで弾きました。道楽の極み。




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