Nicotto Town



灰野敬二とJOJO広重の今


まず、私がこの2人に敬称を付けない理由から。
日本音楽界の最尖端に未だに君臨する彼らは歴史上の偉人に比肩できる。
こうした人たちを「~さん」付けして近しいように振る舞うのは傲慢だと思うから。

灰野敬二が、ケージの4分33秒に対する答えとして、
ピアノ88鍵を88人が同時に叩く『奇跡』という催しをやっていたのを知りました。
うーん、感心してしまう。ケージのあの曲について、私見と灰野の意見を併記しよう。

ケージが無音室で自らの心音を聴いたとき確信した、音は遍在するという思想。
4分33秒は3楽章の曲であり、それぞれ全休符が一つずつ。
聴取する主体の自覚により音楽が生まれるという観点を呈示したと私は思っている。

同時に、休符の表現という問題にも突き当たる。休符とは音であり思考停止ではない。
卑俗な例としてよく挙がるのがツェッペリン『ハートブレイカー』のブレイク。
休符の緊張感を分かりやすく伝えており、ロック的テンションの基本が分かる。

見事な休符を聴くことは各ジャンルで可能。私は能楽とヨーロッパ系フリーが好み。
自分の拙い演奏でも、音を出さないことは出すことと等価だと考えている。
属七和音のあとの四分休符と、十六分音符を連ねたあとの四分休符は異なる。

いっぽう灰野敬二は、4分33秒に出会ったころ、これを表現者への挑戦と捉えた。
音を出さなくても音楽として成立するという思想の前で、演奏者の意味とは何だ?
60年代末から真摯に音楽と向き合ってきた音楽家ならではの矜持だと思う。

意外なことに、灰野は最近まで『小鳥たちのために』を読んでいなかったそうです。
あれを読んでケージを見直したと言っている。J・ケージとハイノ・ケージ。
音を出さない音楽への解答として、全ての音を出すことを思いついた。凄い。

いっぽうのJOJO広重、キングオブノイズ、非常階段の中心人物。
ノイズ、というものについて語るとまた面倒なので詳細は省きます。
先日やったイベントは、ノイジシャン高齢化問題に真摯に取り組むというもの。

若手でも50代、これはイカンと考えたのか、公募で出演者を募集した。
中学二年生のノイジシャンまで出演したという。これは将来楽しみだ。
義務教育の音楽でジャパノイズ鑑賞の時間が必須化される日も近いぞ。

非常階段には様々な音楽家とのコラボがあり、ユーモアがある。
初音ミクと共演した初音階段も傑作であったが、現在やっているのは、
年寄り世代には懐かしい畑中葉子とコラボした『畑中階段』。凄すぎる。

灰野敬二64歳、JOJO広重は大友良英と同い年の57歳。
知らない人は多い。聴いていない人はもっと多い。何ともったいない。
動画なんか見ないで最低CDで、できれば生を見てほしい。音楽がそこに在る。

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2016/12/16 18:09
>ヘルミーナさん

神田のお散歩、お疲れさまでした。半年ほど行っておりませぬ。近々出かけたくなりました。
非常階段はリアルタイムではあまり聴いておらず、突然段ボールやグンジョーガクレヨン、町田町蔵、YBO、
アケタの店系国内ジャズメンを聴くことが多かったです。中原昌也はNHKラジオに出てますが、ブレない人ですねー。

カード式の思考法、それで思い出すことが二つありますです。
一つは深夜番組で松本人志のやっていた、任意の2語を組み合わせてその面白さを競う遊び。
あれは衝撃的でして、友人の間でかなり流行しました。シュールレアリズムの手本みたいな遊びです。

二つめは私のヘッポコ持論に基づくものです。知性は知識(データ)と知恵(関連づけ)の総体である。
知恵は既知情報の新たな(有意な)組み合わせを発見するための試行錯誤の過程/運動だという発想です。
秘境的と仰る理由も納得できます。「神の見えざる手」をふとした瞬間に認識しそうになる怖さ、といいますか。

同時に言語への工学的アプローチという妄想も持っています。語に位置エネルギーみたいなものを仮定します。
小さな位置エネルギーしか持たない(一義的な)2語の組み合わせが高エネルギーを持つこともある。
言語(思考)の本質だろ!という常識に逆らい、工学的(数学的ではなく)解決法の可能性を切望します。
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2016/12/16 09:25
灰野敬二は恥ずかしいことに全く聴いていません。
フリクションのReckとやったりしていたヘッドラッシュ、アルバムを出してたら聴いたかもですが、
一日限りのユニットっぽかったので。

一方非常階段はそれなりに聴いています。「蔵六の奇病」、20周年アニバーサリーアルバム、「戸川階段」、「初音階段」などなど。

JOJO広重はもうだいぶ前からトレカにはまってカードショップも経営しているらしいですね。
わたしもゲームはやりませんが、中古の好きなキャラクターもののトレカシングル売りなど買ってしまうので、トレカの魅力はちょっとわかります。

思考法でもカード式ってありますよね、あれってノートの中央集権方式に比べると、カオティックななかから知(智)が閃いてくるなんとも秘教的なものだと思っています。

あと、ノイズといえばコラージュ派、暴力温泉芸者なども好きです。

なんだか散漫なレスですみません。
そうそう、フリップ✖イーノの「ノー・プッシー・フッティング」わたしの愛聴盤です。



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