Nicotto Town



C・パーカーに挫折した痕跡に出会う


古本屋に定期的に通っていると、特定のジャンルが大量に入荷してることがある。
これが大変面白い。私と嗜好の合いそうな人の場合、血眼で店内を渉猟するが、
そうでない場合も、処分した人の人柄や個性を邪推するという楽しみがある。

たとえば富士見ロマン文庫なんてのがまとまって入荷していたとしよう。
なぜか岩波の古典思想書やカメラ関係の技術書なんぞも数冊ずつ入っている。
けっこう分かる。エロスと哲学とテクノロジーは不可分でございますね。

『ラジオライフ』というその筋のマニア向けの雑誌が山と入っている。
写真集の棚に走る。おー、懐かしい、文庫本サイズのグラビア写真集ゴロゴロ。
サブカル棚を覗くと、官憲にたてつくタイプのアヤシイ本も数々。首尾一貫してるな。

さて先日、音楽関係の棚に、アルトサックスに関する書物が20冊程度入荷。
そのラインナップが凄い。ブラバン本皆無、ナベサダの『ジャズスタディ』もあったし、
マニアしか買わない濱瀬元彦『チャーリーパーカーの技法』まであった。

持ち主の来し方行く末(既にこの世を去ったかもしれんが)について黙考する。
アルトサックスを買い、パーカーになりたいと思っちゃったんだろうなー。
河原に出かけて、細分化されたパーカーのフレーズと格闘する。ストイックだ。

真摯な努力の残滓が伺え、ほのぼの心温まる。素敵だ。人類バンザイ。
近くのガラクタ屋に足を延ばす。アルトの入荷はなかった。ふーむ。
これらの書を全て読破し身に付け、現在演奏中なのかしら。想像が膨らむ。

近所のドブみたいな川のほとりをしばし散歩する。
バップイディオムの跳躍激しいフレーズが脳内で鳴る。売主の今に幸あれと三秒祈る。
さて戻って濱瀬の本を買おうか。定価8000円が4800円というのは高いのだが。


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2016/12/17 10:54
>ヘルミーナさん

お、いーぐるの後藤雅洋と全く同じ開眼術! 一人を延々聴き続けて開眼することはありますよね。
トニーウイリアムスが神童扱いされる理由が分からなかった頃、『マイルス・イン・ベルリン』聴き続けたら、
ウエイン・ショーターが何かワカルようになって、そこからウェザーに走った。トニーの良さは未だワカリマセヌ。
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2016/12/17 09:41
パーカーは最初一聴して、なんだか凄いのはよくわかるのですが、
どこがどう凄いのかよくわかりませんでした。
だけど惹かれるものがあって、一ヶ月弱ぐらいえんえんとサヴォイの音源を聴いていたんじゃないかしら。
と、突然に、辻斬りのような彼のアドリブの凄さに開眼したというジャズを聴き始めたころの思い出が。

もっとも今はパーカーよりもうらぶれたパーカー派、ソニー・クリスみたいなほうが好きですが。

特定の方からの大量入荷ってなにか妄想を駆り立てますよね。
わたしもかつて近所にあった古本屋さんで似たような経験があります。



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