Nicotto Town



古の音楽は聴取までの期間に熟成が進んだ。


音楽カテゴリの記事を覗こうかと眺めはじめるが、すぐやめてしまう。
視聴できる動画サイト等のアドレスを紹介しているものが多いのですね。
音楽って、存在を知ってから実際に聴くまでの期間で熟成が進むと思うの。

ニッチでマニアックな古の音声や映像記録も動画サイトに氾濫増殖。
嬉しさ三割、無念さ八割という感じである。秘蹟は秘匿されて輝きを増す。
戦後の洋楽・大衆音楽に関するエッセイは、このスノビズムがキモですな。

ワタクシの場合、雑誌や評論で存在を知り、長年聴きたいと熱望していても、
経済事情や入手至難といった壁にぶちあたり未聴の音が多かった。
脳内で勝手に妄想するわけだが、このスキル、同世代はみな持っている。

つのだひろがナベサダバンドでJAZZやってた話を聞いたとする。
『メリージェーン』だけの一発屋ではない。ドタバタドラムの名手である。
ロック的演奏は散々聴いてる。それが70年前後のナベサダとどう絡むか考える。

未だに聴けないのは、クリムゾンに在籍したジェイミーミューアが、
MIC解散後に組んだ反体制志向のロックバンド『BORIS』の音源。
アランホールズワースも一瞬在籍したとか。これも脳内で鳴っている。

山下洋輔のエッセイで第二期の演奏を自己パロディとして書いたものがある。
メルスの実況盤を聴く前だった。森山の飛ばしたシンバルで坂田の首が飛び、
山下の切ったピアノ弦が森山の全身にハリネズミの如く突き刺さる。笑った。

後に聴いた。坂田明がマスメディアに露出していた時期だったため、
陽性(と思っていた)の坂田の演奏に期待していなかったが、トンデモなかった。
『クレイ』は山下トリオの最高作であった。エッセイは現実であったのだ。

三上寛の名曲『大感情』に、灰野敬二と吉沢元治が付き合ってるのがあった。
三上のこの曲になら、吉沢は海のように、灰野は寒気の如く突っ込むだろう。
予想はほぼ当たったと思う。灰野さんの鷗の鳴き真似ギターで笑っちゃった。

富樫・高木デュオの『連続射殺魔』サントラは予想を裏切られた例である。
ワタクシは富樫をあまり好まない。『スピリチュアルネイチャー』は苦手だ。
だがこのアルバムでは富樫のほうが好き。こういうこともあるわけで。

情報だけ入手し、聴取までナガーイ時間をかけ、脳内妄想は熟成腐敗を重ねる。
まだ聴いていないアルバムや音源の音を想像するために、参加者の別音源を聴き、
不完全な情報をパズルみたいに組み立てる努力を重ねる。マニア道ここにあり。

音楽批評・評論には、脳内妄想を加速させる要素があってほしい。
「百文は一聴にしかず」と直リンを併記する気持ちも分からなくはないんです。
言葉で語りきれない凄さをまずは聴いてチョーダイ!という心理は私もあるし。

でも全てがそうなっちゃうのも……どうでしょ? ちと味気ない。
10に1つくらいは、ジラしてもいいんじゃないかしら。
秘蹟や秘宝を苦労して探しあてる悦楽というものも、あるわけでございまする。

だから、リンク先辿ってね、という記事をあまり読もうとしないのです。
文字で主観偏見を熱ーく語り、情報を不完全にしてもらうほうが好ましい。
油井正一より平岡正明、中村とうようより湯浅学……ハハハ、ビョーキですな。




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