Nicotto Town



ハッピーバースディ ブラックモア



PCに向かってて、なぜか右下の日付が記憶に引っかかる。04/14……あ。
本日はイギリスのギタリスト、リッチーブラックモアの誕生日ですね。
コイツの話を避けてた部分があるので、今日はお祝いとして書いてみよう。

この世には黒歴史というものがあるそうですね。爺世代のロック屋にとって、
リッチー最高!なんて言ってたティーンエイジの記憶はそれに近いかも。
私だってけっこうハマった。中学一年生ごろがピークだったかな。

リッチーと呼ばずブラックモアと書くのはそんな記憶のせいかもしれん。
まあよい。この歳になれば冷静にブラックモアの評価ができる。
一行で表すと、ブルースを切り捨てた技巧派ハード系ギタリストの元祖。

ご存じない方の為に略歴を。1945年生、十代半ばからプロ活動を開始。
英スタジオミュージシャンの巨匠ジムサリヴァンの弟子筋の一人になる。
スキッフルという音楽わかります? 当時のイギリスで流行ってたんですが。

彼と同世代のギタリストっていえばクラプトンにペイジにベック、
ヘンドリクス、アルヴィンリー、ピーターグリーン……ビッグネームだらけですが、
ブラックモアのブルースプレイというのは皆無です(断言しましょう)。

文句言われそうな気配を感じたので詳述します。
黒人音楽~ジャズ全般に不可欠なブルースフィーリングというのを、
他のビッグネームは必ず持っていて、それぞれのやり方で表現してます。

クラプトンは言わずもがな、ヘンドリクスの『Red House』、
ペイジの『Tea for Two』、アルヴィンリーの『夜明けのない朝』……
割と希薄なベックでも、第一期ジェフベックグループの二枚はブルースです。

若い頃の録音も殆ど聴きましたが、ブラックモアはブルース弾きじゃない。
いえいえ、楽曲としてはブルース進行をいくらでも演ってますけど、
彼のプレイはチャックベリーやスコッティームーア的ロックンロールです。

グルービーなブラックモアの名曲というと何を挙げますか?
ミストゥリーテッド、ジプシー、キャッチザレインボウ……
どれもブルースじゃない。ミストゥリーテッドはカヴァーデイルの手柄です。

少々脱線。第二期パープル後期の逸話を二つ紹介します。
この時期ブラックモアはイアンペイスと共にパープルを抜け、
フィル・ライノットとトリオ組もうとしたがフィルのベースが下手すぎて没に。

シンリジィファンは怒っちゃダメ、私はリジィも大好きなんです。
当時のブラックモア/ペイスの演奏水準が高すぎたってことを表してるんです。
もう一つ、第三期パープルのボーカルは当初、超ビッグネームの予定だった。

これも私が神と崇めるポールロジャース様です。数日一緒にやったそうですが、
ロジャース様はすぐ抜けました。この理由、おそらくブルースの欠如でしょう。
ツェッペリンやサバスにあるブルース臭がパープルには皆無ですからねぇ。

フィルもロジャースもブルージーなシンガーですが、彼らとはやれなかった。
ブルースシンガーからすると、ブラックモアのブルース臭の欠如ってのは、
かなり致命的な『欠点』に映るのではないかしら。

ブラックモアはブルースが嫌いなのではなく、表現で必要としていないだけ。
あと3コードや循環モノを「退屈」と感じる短気さも持ってます(褒め言葉)。
予定調和的な音楽を、特に若い時の彼は意図的に排除している気配が濃厚です。

他人のソロのバックで刻み続ける、ヴァースの隙間を定型オブリで埋める等、
ポップス的手法はパープルでは滅多にない。好き勝手に弾き、ペイスだけ見て、
バンドサウンドを自分の望む方向に持っていこうという独善性が横溢している。

ブルース性の欠如したギタリストはジャズ・フュージョン界には皆無ではないか。
ロック系でも挙げるのが難しい。実はスティーブ・モーズもブルース臭が希薄。
現在のパープルのギターがC&W系のモーズってのはある意味納得できません?

ブルースギターの定番であるロングトーン、泣き、ビブラートを排除し、
素早いトリルやプリングを多用、経過音(クロマチック)と類音群の反復……
クラシック的という世評には異を唱えましょう。全てロックンロールの手法です

ドリアンスケールに♭5thを多用しるフレーズが中心になっており、
モード的なアプローチは一切やっていません。ジャズでもないんです。
デュアンオールマンやハンブルパイ期のフランプトンとの大きな違いです。

レズリーウエストやデイブギルモアみたいな歌心満載フレーズも持ってない。
ほぼ全ての技術を『攻撃性』に特化させたロックンロールギター、
それがブラックモアの特異性です。その意味では最高峰の白人ロックギター。

ブラックモアの全盛期は1973年あたりまで、というのが私の偏見です。
もうやり尽くしちゃった、というか手の内全てさらけ出しちゃった。
レインボーもブラックモアズナイトも、金儲け仕事的要素がかなり強い。

もちろん未だに技術は凄いですよ、超一流プロフェッショナルだもの。
ブラックモアはどんな曲持ってってもそれなりに弾けちゃうでしょう。
スタジオミュージシャン的な素養も本来高いプレイヤーです。やらないだけ。

技巧派必修のスウィープピッキング(数弦を撫でるように弾く)やエコノミーも、
彼はキャリア初期から多用しています。ジャズギタリストも使いますが、
おそらく60年代初期のアメリカのレコードから学んだものでしょう。

機材に関して簡単に。ストラトとマーシャルを手に入れるより、
ES335を小さいタマアンプに繋いでバリバリ弾くほうが彼の音に近いはず。
彼の技術の殆どはES335等のギブソン系ギターで開発されたものです。

ロードサッチとのセッションや、第二期パープル初期の映像では、
狂気の眼差しで335を掻き毟る彼の姿と音を堪能できます。
ストラトしか使わなくなっても、彼はギブソン系プレイヤーの一人です。

ブラックモアなかりせば、と語るギタリストはそこら中にいます。
マルムスディーンにインペリテリ、サトリアーニ等は公言してますし、
日本でも高崎晃、松本孝弘を初めとして影響を受けた人は数知れず。

私は「一音でバンドサウンドを支えるリフと音色の強靭さ」が好きです。
古い録音はアナログのマルチ録音なので、別チャンネルの音が回り込んだり、
高域が劣化したり、オルガンと被ったりするんですが、それも加味して。

第二期パープルの『In Rock』B面がお勧めできるでしょう。
『Flight of the Rat』の爽快な突進感、『Into the Fire』のアラビックなソロ、
『Living Wreck』のリフ、『Hard Lovin Man』のライブ感満載のプレイ……

灰野敬二もタルファーロウも好きだけど、ブラックモアもやはり好きだ。
ゆえにリッチーとは書けない。若き日の高崎晃氏がスージーと名付けられ、
どれだけ辛かったのかを思うと、愛称を安易に呼ぶのは、ね?








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