Nicotto Town



荘村清志世代の一人として



叔母夫婦、世間がこれだけ騒いでるのに演奏会に行ったという。
「アンタは知らないかもしれないけどね、しょうむら……」
私は激怒し罵詈雑言を連ねた。感染症の中、高齢者が外出したこととは無関係。

喜寿前後のギター弾きは、だいたいカルカッシと古賀教本を学んだはず。
独学で2冊を終え、その後でスコアを買うのが一般的だったんでしょう。
でも還暦世代には強い味方があった。映像です。テレビです。

荘村清志氏がNHKで講座を担当したのは1974年だということです。
家にいたら必ずテレビにかじりつき、ギター持って真似しました。
ラウドネスの高崎晃氏も同様だったそうだが、この世代はみな見てたはず。

コードとメロ弾けるようになったあと、大概はポップスに走ります。
でも「正統なクラシック」への憧憬も必ず意識の隅にあるんですよ。
ガットギターでハードロックコピーしながら、クラシックもピロピロ真似る。

アントニオ古賀も鶴岡正義も超絶に上手いんですけど、テレビじゃ演歌ばかり。
植木等や仲本工事のジャズも凄まじい技量だけど、彼らも殆ど弾かない。
超一流の正統派の演奏を毎週見られるのは、貴重な機会だったんです。

一般的なギター教室のやり方を踏襲しており、数名の生徒に課題曲を渡し、
毎週少しずつ進めていく。全てが学ぶべきことばかりでした。
姿勢、手の位置、指のフォームや使い方、弦のはじき方、etc。

最後に荘村氏が小曲を一曲弾くのも楽しみでした。
だいたいスペイン系、そこに知らない技術が山ほど出てくる。
恥ずかしながらビブラート(ベンド)のやり方はこの番組で知ったのです。

トレモロ、右手を使った人工ハーモニクス、パーカッシブ奏法、
右手の指でフレット押さえる小技もあったんじゃないかしら。
毎回思いましたよ。クラシックすげえ。あっちにゃ一生辿り着けねえや。

後に山下和仁氏が神童と騒がれ、村治佳織氏が多方面で活躍し、
木村大氏が本格スパニッシュスタイルで他ジャンルとコラボしますが、
還暦世代のアイドルクラシックギタリストは、今でも荘村清志でしょう。

渡辺香津美との対談で「エレキって凄く怖いんですよ、私」と仰っていた。
村治氏はライブでエレキも弾いてますけど、荘村氏はガット一本槍。
そこに痺れるわけです。正統というものを示してくれてるんですよねぇ。

そんな巨匠を! 小さいホールで! 生で! 2時間超! 聴いてきたという。
激怒しましたよ。なぜ声をかけんのだ。バカ。オイボレ。道楽ババア。
そしたら「アンタが荘村さん好きだなんて、初めて聞いたわよ」だって。

確かに邪道音楽ばっかですよ、聴くのも演るのも。認めましょう。
だけどよぉ、ヒデェじゃねえか。ナマ荘村とか羨ましすぎんぞ。
DINKSの老後の理想みてぇな暮らししやがって恥ずかしくねえのか。タコ。

「次は誘ってやる」との言質をとるまで粘りました。
あと歌舞伎と文楽と小三治の高座と……オペレッタも頼む。
感染症が下火になったら、山道具を漁りに押しかけるから、それまで生きてろ。




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