Nicotto Town



秋。けっきょくビルエヴァンス


大友良英がジャズバラード特集を組んだ。いいとこ押さえてくる。
デックス、ジャケ、ロリンズ、トレーン&モンク、ジョニーハートマン、
変化球として渋谷毅&森山威男やドルフィーのアルトソロも。

見逃し配信でショパンコンクールの歴史を特集した特番も見た。
ルビンシュタインの映像もド迫力であったが、
今世紀初め来日したポリーニの24の練習曲全曲演奏ってのにKOされた。

自分なりに秋のバラードを編集してみようかと思ったが、
LP引っ張り出すのは骨だし、ジャズやクラシックのCDは大して持ってない。
けっきょく初心者のごとく『ワルツ・フォー・デビー』になった。

1曲目『My Foolish Heart』の2音で持ってかれちゃうんです。
初めて聴いたときから同様でして、しばらく動けなくなっちゃう。
あと個人的にポールモチアンのドラムが好きになれず、次を引っ張り出す。

『Consecration』キーストンコーナーでの最後の演奏集。
私の持ってる2枚組は『あなたと夜と音楽と』で始まりますが、
とにかく凄い。蒼白い炎がメラメラ燃え滾るのが見える氷の熱さ。

好みはあるけど、ピアノ/ピアニズムってものを理解してないと自覚してます。
特にクラシック。ピエノ弾きはだいたいアシュケナージを褒めるけど、
何度聴いてもハイそうですかそうですよね、という音楽に聴こえる。

ホロヴィッツは録音のよい盤を幾つか聴かされたが今ひとつ。
リヒテルのバッハだったかな、これはそこそこ好きになった。
アルゲリッチは音聞くと逞しい二の腕を思い出してしまいダメ(大偏見)。

クララ・ハスキルという人のモーツァルトはなぜか持ってて好きだった。
超絶技巧や新世代系の人は出るたび聴いて、すぐゴチソウサマになった。
ブーニンとかキーシンとか、ヴァンクライバーンもちょっとその方面かな。

おそらくクラシック聴くときには「まっとうな古典を聴きたい」という、
日本の古典に向きあうのに似た心理が生まれ、鑑賞の邪魔をするのでしょう。
誠実、荘厳、高貴、重厚という要素を感じさせてくれる人を好きになりがち。

ポリーニがショパンの正しい解釈者だなんて思ってるわけではない。
単に肌に合う、耳が喜ぶというだけ。彼の現代曲は興味がほとんど持てません。
現代モノならデヴィッドチュードアのアルバムを聴いちゃう。

じゃジャズピアノは、エヴァンスは正しく聴取しているか?
クラシックよりマシな気がする。エヴァンスの気質が好きなせいもある。
あの気難しいポートレイトの真相はみなさんご存じですよね。

オクスリや不摂生で歯がボロボロ、欧米では非常識なレベル。
そこで口を一文字に引き結び、前歯なんぞ絶対に見せないようにしてた。
こういう『ゴマメの歯ぎしり』みたいな人生がエヴァンスの音にも響いてる。

前歯を輝かせニコヤカに笑う政治家や芸能人を眺めてるとですね、
コイツらの人生にエヴァンスは不要だと断じたくなるくらい。
悔しかったらクスリや酒に頼らざるを得ないくらい内省に没頭してみやがれ。

エヴァンスはトリオにトドメをさすという評価が多い。
同意しますけど「インタープレイ」という言葉はちょっと違うんじゃ……。
ソロやデュオにも有名なのがたくさんあるけど、あれもインタープレイ?

現場構築型の即興演奏という意味でエヴァンスは優れてるけど、
理解者ありきの演奏でもあると思うし、火花なんて滅多に散らさない。
むしろドルフィーに通ずる『音楽/演奏の一回性』を聴き取りたい。

晩年のエヴァンスは本当に良いメンツと出会えて幸運でした。
マークジョンソンとジョーラバーバラ、エヴァンスの卓越した理解者だし。
キースジャレットのスタンダーズより『歌/曲』志向だと思うし。

ハンコック、ジャレット、コリアというマイルス門下三羽烏も聴くけど、
けっきょくエヴァンスという陳腐でありきたりな解で満足してます。
黒っぽいピアノも好きで聴くけど、この秋はこれで良し。




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