バラカン氏と無縁な1975年の音楽
- カテゴリ:音楽
- 2025/08/23 15:19:48
スコーピオンズ『イン・トランス』、エアロスミス『闇夜のヘヴィロック』、
パープル『カム・テイスト・ザ・バンド』アレア『クラック』マグマ『ハーイ』、
ツェッペリン『フィジカル・グラフィティ』すら入っていない。
ピーターバラカンとリスナー諸氏が選ぶ1975年の音楽シーン、
清く正しく美しく正統で歴史的意義も大きい高価値の音楽ばかり。
ほぼ私には用がない。いや、音楽のほうが私を不要と思っているはず。
そこで今年も私にとっての1975年を表す10枚を選びましょう。
今回は日本限定にしちゃいました。ロック色も稀薄。
さあ、何枚聴きました? 何枚お持ちですか?
1『なしくずしの死』阿部薫
2『侵蝕』高柳昌行
3『スピリチュアル・ネイチャー』富樫雅彦
4『UP TO DATE』山下洋輔トリオ
5『エロチカルピアノソロ&グロテスクピアノトリオ』明田川荘之
6『At the Room 427』松風鉱一
7『Raindog』ツトム・ヤマシタ
8『展覧会の絵』冨田勲
9『Super Record』マジカル・パワー・マコ
10『Catch Wave』小杉武久
既に死の先に向かい疾走する阿部、ハードボイルドな高柳、
アッチ路線の富樫、山下森山とわたり合う坂田、アケタの純和製リリシズム、
軽やかな暴力を振るう松風、この時期の日本ジャズは本当に凄い。
ツトムヤマシタは『Go』よりこちらのほうが現代的ではないか。
冨田を聴くと、キースエマーソンの傑物ぶりがしみじみ分かる。
今年2月に亡くなったマコさんはまあ、ハチャメチャな人だった。
『Catch Wave』は同時期のマニュエルゲッチング、ノイ!、カン、
クラフトワークと聞き比べても遜色のない大名盤です。
こういう音楽を志向する人は最初に聴いても佳いはず。
カルメンマキ&OZの1st、四人囃子『空飛ぶ円盤に弟が乗ったよ』、
ウエストロードブルースバンド『Blues Power』も1975年ですなぁ。
音楽の嗜好はこの時期に確定した。オレ、つくづく運がよかったなー。
(調べて分かったので番外編)
あら、ツェッペリンの『プレゼンス』、録音は75年ではないですか。
『フィジカル・グラフィティ』に換えてこちらを入れなきゃ。
故渋谷陽一も愛した、ツェッペリンの最高傑作ですし。
白眉はラスト曲『二人でお茶を』でしょう。
「ホワイトブルースというものに落とし前をつけた」というのが渋谷氏の言、
そう評したいのも納得の、超強力なブルースロックです。
『アキレス最後の戦い』も佳いが、他にも名曲がメジロおし。
『フォー・ユア・ライフ』『俺の罪』『何処へ』とヘヴィーなナンバーが並ぶ。
キーボードが入らないことで、ツェッペリンの本質がストレートに伝わる。
ジョンポールジョーンズのベースって、すごくアバンギャルドなんです。
ディアマンダギャラスとデュオやったアルバムでよく分かった。
キーボードを弾かなかったおかげで彼の攻撃性も全面に出ています。
ボンゾの爆発っぷりは『アキレス~』に留まらない。
『俺の罪』のブレイクの殺気と重量感は誰にも出せません。
2007年のライブでは息子が頑張ってコピーしてたなー。
『ロイヤル・オルレアン』『キャンディ・ストア・ロック』の2曲は、
彼らとしては穴埋め的楽曲だろうが、とんでもないグルーブと炸裂。
ファーストに勝るとも劣らぬ「ライブ」感が漲ってるアルバムです。
リリースは1976年。ピーターバラカンは来年も半世紀前企画をやるだろう。
ペンギンカフェやジョニミッチェル、トムペティやS・ワンダーは流れても、
ツェッペリンは流れるはずもない。いいのよいいのよ、ほっといて。