■近代文藝之研究|研究|囚はれたる文藝(60)
- カテゴリ: その他
- 2010/06/27 00:15:45
■近代文藝之研究|研究|囚はれたる文藝 第十三(3)
獨乙近代の畫家といふときは、人まづベクリンとメンチェルを擧ぐ。メンチェルが畫ける所は、宮廷的貴族的のもの多くして、最も有名なるは今伯林の王城にある先帝戴冠式の圖なり。寫實派の巨擘と稱す。之れに對してベクリンは過去數十年を代表すべき理想派畫家の棟...
島村抱月・著『近代文藝之研究』のテキスト・データ化ブログ。2014年02月に全文のデータ化終了。只今入力ミス等の校正進行中。
■近代文藝之研究|研究|囚はれたる文藝 第十三(3)
獨乙近代の畫家といふときは、人まづベクリンとメンチェルを擧ぐ。メンチェルが畫ける所は、宮廷的貴族的のもの多くして、最も有名なるは今伯林の王城にある先帝戴冠式の圖なり。寫實派の巨擘と稱す。之れに對してベクリンは過去數十年を代表すべき理想派畫家の棟...
■近代文藝之研究|研究|囚はれたる文藝 第十三(2)
知識は常に感情を手取りにして、解體し殺戮せんとす、是れ事實なり。文藝はすなはち感情を斯くの如き危險より拯はんが爲め、知識の足がゝりとなり爪がゝりとなるべき一切のものを包被し、若しくは除去せんとすることあり。之れを、我れは名づけて神秘的といふ。哲...
■近代文藝之研究|研究|囚はれたる文藝 第十二(5) - 第十三(1)
ピネロは地位に於いてアーサー、ジョーンスと共に英國劇作者界の泰斗たれども、イブセン風なる問題劇の末路甚だ振はず。動々もすれば過去に屬する者と見られんとす。其の回頭期を示したる『後のタンカレー夫人』以來、また一世を動かすべき作な...
■近代文藝之研究|研究|囚はれたる文藝 第十二(4)
やがて是れイブセンが提起せる道徳問題なり。我れは思ふ、是れ好個の哲學なり、含蓄ある知識なり、イブセンは、巧みに之れを感情の海にすくひ取りて、一流の文藝をなせり。されども、其の所含あまりに明瞭なるが爲め、新奇の色を失はざる限りは、人の視聽をも動か...
■近代文藝之研究|研究|囚はれたる文藝 第十二(3)
されども、イブセンが取り扱ひたる問題は、ゾラが、飲酒問題、金力問題、教權問題といふが如きものを取り扱ひたるの故を以て、社會問題に携はれりと稱せらるゝとは類を殊にす。イブセンの問題は更に深し、道徳問題なり、而かも第二義道徳にはあらずして、第一義道...