■近代文藝之研究|研究|囚はれたる文藝(4)
- カテゴリ: その他
- 2010/04/26 02:57:26
■近代文藝之研究|研究|囚はれたる文藝 第一(4)
人の命といふもの、譬へば月の光を葉頭の一滴露に溶かして、永劫不斷と引くが如く、此の時始て、妙へにして見るべからざる一縷の流れとなりて神の指頭よりアダムの指頭に通い來たり。かしこ羅馬の法王殿の天井は、ミケランゼロが絶代の筆と稱して、此の崇高なる詩歌...
島村抱月・著『近代文藝之研究』のテキスト・データ化ブログ。2014年02月に全文のデータ化終了。只今入力ミス等の校正進行中。
■近代文藝之研究|研究|囚はれたる文藝 第一(4)
人の命といふもの、譬へば月の光を葉頭の一滴露に溶かして、永劫不斷と引くが如く、此の時始て、妙へにして見るべからざる一縷の流れとなりて神の指頭よりアダムの指頭に通い來たり。かしこ羅馬の法王殿の天井は、ミケランゼロが絶代の筆と稱して、此の崇高なる詩歌...
■近代文藝之研究|研究|囚はれたる文藝 第一(3)
我等もまた命を造化に亨け、熱を御身と分かちて、此の熱、此の命を保たんが爲めに、仁義の縛め、博愛の繩、幾その羈絆に身をもだへしことか。あゝ、されども此の羈絆は遂に斷つべからず、一たび之を斷つときは、軌道よりすべりし星の如く、一切の人見る/\溶け去つ...
■近代文藝之研究|研究|囚はれたる文藝 第一(2)
ポムペイの町々に花と咲いたる藝術を、一夜の怒りに、永劫の夢と埋め了んぬる千八百餘年の昔語りは、今も尚ほ此の山の烟と共に長くして、其の同じ烟の、晝は黒く世を愁ひの息にも包まん氣色すれど、夜の眺めはまた更に凄じ。見られよ。渦卷き上る烟の根、今は次第に...
■近代文藝之研究|研究|囚はれたる文藝 第一(1)
囚はれたる文藝
第一
去年八月三日の夜は、我れ伊太利ナポリの港に舟がゝりして、感慨の事ども多かりし。中にも分けて老いたる文明のいぢらしさ。文藝の伊太利は死なざれど、さりながら、今の世に亡躯を曝らす哀れさよ。更にアドリアチコ...
■近代文藝之研究|研究|知識ある批評 (14)
人或は、理知の上で正しいものが、必ずしも鑑賞の上で正しいとは限らぬといふ。併しそれは眞に理知上の滿足といふものを輕驗したことのない人が言ふ僻説である。如何なる知識でも最後の一斷、之れで滿足といふ所は感情である。此の最後の滿足は何時でも知識から一歩を超...