■近代文藝之研究|研究|自然主義の價値(34)
- カテゴリ: その他
- 2009/12/25 00:59:19
■近代文藝之研究|研究|自然主義の價値|六 (2)
されば若し斯やうな統一目的から離れて實際的意義のみ傑れた作品があつたら、それは文藝としては價値の無いものになる。道徳を説くものであつたら修身書になり、教義を説く者であつたら説教集になり了するであらう。之れに反して快樂のみある作であつたら、やがて講...
島村抱月・著『近代文藝之研究』のテキスト・データ化ブログ。2014年02月に全文のデータ化終了。只今入力ミス等の校正進行中。
■近代文藝之研究|研究|自然主義の價値|六 (2)
されば若し斯やうな統一目的から離れて實際的意義のみ傑れた作品があつたら、それは文藝としては價値の無いものになる。道徳を説くものであつたら修身書になり、教義を説く者であつたら説教集になり了するであらう。之れに反して快樂のみある作であつたら、やがて講...
■近代文藝之研究|研究|自然主義の價値|五 (3) - 六 (1)
蓋し此等の三意義を一貫するものは道徳的又は實際的目的である。自然主義の動機乃至目的は、道徳(廣義の)上にあつて、文藝の上に無いのでは無いか。即ち自然主義は文藝獨自の目的によらずして道徳問題、科學問題、世相問題を取り扱ふが爲に存在の...
■近代文藝之研究|研究|自然主義の價値|五 (2)
最後に現實を殊さら其の隱れた方面に穿ち入り、野獸性、暗黒面を曝露したゾラ。モウパッサン等には、單に學問界の科學熱に動かされて的確なものを描いたといふ以上、他の意義があつたらうと察する。それは彼等獨自の人生觀で、暗黒面は人生から掩蔽し去らるべきもの...
■近代文藝之研究|研究|自然主義の價値|五 (1)
五
外形上の自然主義が抒情的主觀を斥け情緒的主観を斥けるのは、此等のものが皆自然の眞を打破し若しくは蔽遮するからだといふ。さらば自然の眞とは何であるか。自然主義の内容論目的論は此所から始まる。
曰はく社會問題、曰はく科學、曰はく...
■近代文藝之研究|研究|自然主義の價値|四 (2)
されば殘るところは其の知的事象を歩々成るべく實驗に近似して自然と思はれる方式に展開せしめ、一々相當の情緒の反應し來たつて事象と相即するを期し、さて斯くの如き知情融會の第三段境を其のまゝ忠實に表出しやうとする。客觀的藝術の極處である。直接間接の實驗...